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FinOpsを促進するための、APMとARMの関係性。FinOpsの本質を見極める

2019年にFinOps Foundataionが設立され、FinOpsの活動が少しずつ高まりを見せていることをご存知でしょうか?

日本では、2024年11月15日に「FinOps Foundation Japan Chapter」※が設立されました。この設立によって、日本でのFinOpsの導入活動が活性化されることが期待されています。

2014年頃から米国では「FinOps運動」が活発になっていました。約10年の間を経て、日本でのFinOps導入活性化が期待されるということは、逆説的に日本でのFinOpsの認知度が低いといえるでしょう。

つまり、先駆者として走り出すべきは今であり、早ければ早いほど効果の恩恵を受けることができる時期なのです。また、正しいFinOpsの知識を持たなければ「コスト削減ができる」という認知で終わってしまいます。

このタイミングで「FinOps」についての理解を深めていきましょう。

※参考:prtimes「FinOps FoundationのJapan Chapter設立のお知らせ」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000323.000042042.html


今回の記事では、APM製品である、IBM Instana ObservabilityとARM製品である、IBM Turbonomicについて各々の役割と盲点を説明しつつ、FinOpsでできるコスト「最適化」について記述していきます。


ではさっそく記事に入りましょう!
この記事は、5分で読めます。


FinOpsの概要とその本質

“FinOpsはハイブリッドおよびマルチクラウド環境でのビジネス価値の最大化を目的とした、進化するクラウド財務管理の規律および文化的実践です。”

FinOpsとはより引用:https://www.ibm.com/jp-ja/topics/finops

規律および文化的実践というと、少し難しく感じるかもしれません。FinOpsとは、財務管理の手法であると同時に、企業の文化として根付いていくべき実践的行動であるということであると考えられます。FinOpsは複雑化する環境に対して、最適な選択をしていくための方法であるということです。

APMを利用しているのに、FinOpsに活用していないという盲点

FinOpsのためのツールはすでに市場に多く出回ってきています。IBMではIBM TurbonomicやApptio Cloudabilityなどのソリューションが主な製品となっています。

ここで、気をつけたいのが、上記のようなARM(Application Resource Management)製品に近視眼的になりがちであるということです。もちろんコスト最適化という観点に特化しているため、目的を果たすことはできます。

しかしながら、APM(Application Performance Management)製品を導入しているのに、FinOpsに活用していないことはないでしょうか?「隠れたコストの原因」を調査するために、APMは大きな活躍が期待できます。

・余りあるリソースの割り当て
・無駄なリクエスト
・負荷変動によるパフォーマンスの変化

FinOpsを実施しても、これらのAPMから得られる情報を無視してしまっては、サービス品質の低下を招くこともあります。活用できる全てを活用し、FinOpsに活かしていきましょう。

FinOpsにおける、ARMの役割

ARMは日本語では、アプリケーションのリソース管理です。その役割は、アプリケーションのパフォーマンスを維持しつつ、インフラのリソース最適化を目指すことにあります。

先述した「隠れたコストの原因」を見つけても、アクションすることができなければもったいないですよね。ARMでは「具体的なアクション」に落とし込んで、最適なアクションを提供することに繋げることができるのです。

・リソースの過不足に対して割り当ての調整
・コスト削減のためのリソース削除ではなく、パフォーマンスを維持する
・クラウド最適化の自動化

「隠れたコストの原因」に対してのアプローチと「具体的なアクション」によって、FinOpsは前に進んでいくと捉えることが大切です。

FinOpsはコスト削減だけが目的ではなく、最適化するためだと理解する

FinOpsで最も勘違いしやすいのは「コストを削減する」にのみ注目してしまうことです。

最もわかりやすくインパクトがある言葉のため、どうしてもコストを削減することがFinOpsの最重要な項目と思ってしまうでしょう。

しかしコスト削減が目的であるとすれば、製品長く導入する理由はなんでしょうか?削減する項目がなくなった段階で契約を終えるのでしょうか?

改めて、FinOpsの捉え方を理解していきましょう。

FinOpsをコスト削減からコスト最適化に置き換える

企業において、コスト削減をするのは大事です。多くの事例でコスト削減を大々的に喧伝しているため、意思決定者が期待するのが「コスト削減」であるのも無理はないでしょう。

また、資金を投入して導入したのですから「コストを減らしたい」、「無駄を省いて元を取りたい」と感じることに違和感はありません。

では、導入でも述べた通り、コスト削減が達成されたら、契約を解除するのでしょうか?

実はそうではありません。例えばコストが削減されたら、余剰の資金が生まれることになります。それは新たなクラウド環境の整備やアプリケーションの開発に回されることになります。となると、常に環境は変化することになります。

削減以外にも、社会に提供しているアプリケーションの利用者が増えた場合も想定してみましょう。利用者の増加によって、アプリケーションはパフォーマンス不足におちいります。しかし、FinOpsの考え方がコスト最適化の場合は、パフォーマンス不足を補う方向に動くのです。

そこで顧客満足度が向上し、利用者が増えれば、さらなる収益が見込まれます。つまり「コスト削減で元を取る」「適切なコストをかけてパフォーマンスを補強する」という両輪の関係があるといえます。

どちらに転んでも、コスト最適化という考え方がもたらすのは利益であると言えるでしょう。

FinOps + APM + ARMが最適なコストへ導く

ここまでに述べてきた、「コスト最適化」「隠れたコストの原因」「具体的なアクション」3つの関係性が合わさると、FinOpsの歯車は大きな効果を提供することとなります。

FinOpsに関連する製品の説明する際に、コスト削減ばかりを取り上げてしまうが故に、意思決定者は次のことを疑問に思ってしまうでしょう。

・コスト削減が終わったら逆に製品を維持することがコストでは?

実はこれは短期的な視点です。長期的な視点に立ち返っていただくと、コストを最適化することはアプリケーションの提供や拡張を続ける上では、恒久的に続くミッションであるといえるでしょう。

FinOpsという考え方の実践は、APMでの「隠れたコストの原因」の特定だけではなく、ARMでの「具体的なアクション」の実施、そして継続的に変動するアプリケーションのパフォーマンス改善やハイブリッドなクラウド環境への投資にあるといえるでしょう。

第9回の〆:ARMとAPMの組み合わせによって、本質的なFinOpsの世界へ!

FinOpsの本質を改めて理解していただくと、コストの削減だけがゴールではないことに気づくことができると考えています。

すでにAPM製品ーIBM Instana Observabilityを導入している場合は、パフォーマンスの状況を理解できていることになります。そこにARM製品ーIBM Turbonomicを合わせることで、適切な投資と削減を実施し、新たな環境整備やアプリケーションの提供、DXへの着手が可能となるでしょう。

本質的なFinOpsの世界は、常に継続的な進化にあります。そのため、「コスト最適化」こそがFinOpsのあり方であると理解していただき、継続的に製品をご活用いただくことが発展に続いていると捉えていただければ幸いです。

今後はARMの記事についても記載していきます。APMとのコラボレーションについて深い洞察を得ていただければと存じます。


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次回もよろしくお願いいたします!



執筆

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
カスタマーサクセスマネージャー

小石川 将晃


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