F1チームにヒントを得るアジャイル・マネージメント
※ サムネイルは2019年 日本GP 観戦時に展示マシンを撮影したものです。このときのマシンにはIBMロゴが入ってます。
日本IBM システムズ・エンジニアリング(通称ISE、読み方はアイ・エス・イー)の山口です。 コミュニティのnote投稿は2回目です。
ISEは、日本IBMグループにおけるIT専門家集団として、お客様の新しい価値の創造に技術で貢献し続けることを1つの目標としています。
そんなISEには、IBMでのデリバリーにおけるアジャイル・チームの一員として、ITアーキテクトやITスペシャリストとして活躍しているメンバーがたくさんいます。私も、アーキテクトやディベロッパーとしてデリバリーに携わっている一人です。
この記事のきっかけ&何が書いてあるの?
もう1ヵ月程度過ぎましたが、2023年 F1 グランプリが始まりましたね!
私は昨年2022年10月、3年ぶりに開催されたF1 日本GPに行きました。その際にふと、「F1の世界は究極のアジャイル開発だよな~、レースが開催される2週間ごと、昨今では1週間ごとに振り返り、開発、改善をしてくるのだからすごすぎだよな~」と考えました。
(余談ですが、こういうことが自然に頭に浮かぶのは、このコミュニティに入っているからで、コミュニティ活動は、日々の考える視野が広がって良いなぁ~と感じました。)
そんな風に考えていた時期にドンピシャで、元Honda F1 マネージングディレクターとして活躍されていた山本 雅史さんの著書『勝利の流れをつかむ思考法 F1の世界でいかに崖っぷちから頂点を極めたか』が発売されました。
目次を拝見すると...
『第7章 組織をアジャイルに動かすために 現場主義を貫くF1チームのリーダーたち』
とありました。やっぱりアジャイル!!!と(単純脳で)アジャイルというワードに嬉しくなり、読んでみました。
この本は、世界一アジャイルなF1の世界で著者の思考や行動が、一般のビジネスにもヒントになるのではないか、と記されたビジネス書です。
私は、自分が所属するアジャイル・チーム(スクラム・マスターを担うこともあり)や、昨年からリーダーを担うようになった部門グループに適用できるところはないか、という観点で読み進めました。
このnoteでは、アジャイル・チーム開発や部門・グループリーダーを努める上での気づき、改めて意識させられたことを3つご紹介したいと思います。
(本当は、昨年10月の日本GPに合わせて投稿する予定だったのですよ...ちょっと時間がなくて今になっています。でも、その間にこの書籍をきっかけにチーム運営を変えたところとかあるので、それを踏まえて記事を書きます。)
学びの共有
① 唯一の目標に全員が集中すること
第三期のマクラーレン・ホンダの敗因の1つのとして、「唯一の目標(=レースに勝つこと)」に集中させるリーダー不在が上げられていました。
自分含めて周りで改めて考えてみると、目標設定をないがしろにしているとまでは言いませんが、曖昧なままプロジェクトが進んでしまうこと、あるいは現場メンバーまで「自分ごと」として認識されていない状態で進んでいるケースがあるなと思い浮かびます。
F1でアジャイル・マネージメントがうまく行きやすい要因の一つは「レースに勝つ」という明確な目標ただ1つであることだろうということを考えると、アジャイル・マネージメントにおいて目標設定の重要性を改めて感じました。
アジャイルのフレームワークであるスクラムで言えば、会社のビジネス目標に納得し、製品の目標を明確にしてチームに伝えるのはプロダクト・オーナーの重要な役割の一つですね。
なお、こちらの記事「How to make your organization as fast and agile as a Formula 1 team」でも、F1におけるアジャイルのプラクティスの1つとして述べられています。
この感想を書いたあとにさらに読み進めて行くと、「第5章 心が折れたときのモチベーション論」では、『当事者意識の植え付け』『自分ごとととらえてもらう』ことがモチベーションを維持、高めることにつながるという趣旨の内容が述べられていました。
「目標に納得して、その実現を担う一人は自分だ!」と目標を「自分ごと」として捉えてもらえるようにしないと、実施するモチベーションは上がらないですよね。
(もちろん、目標達成に貢献したらそれなりの報酬があることが前提になっている場合があるとは思いますが)
② 理想のチームのかたち
『第4章 理想のチームのかたちは"球体"だ』では、チームビルディングについて語られています。
著者は、チームとは「ゴルフボールのような美しい球体である」と例えています。ゴルフボールは、ディンブル(飛距離を伸ばす、スピン力を増す、などの目的を持つ様々なくぼみ)があり、結果的に美しい球体となって、カップインという目的に向かってコースを進んで行く、ということに例えています。
まず、構成人員について、「性格や意見の相違によって判断しない、異見は歓迎する、なぜを徹底時に問う」ことでチームが動き出すと述べています。
私は構成メンバーを面接する立場ではないので、構成された後の、「いかに綺麗な球体にしていくか」に注目しました。
ここで私の経験を振り返らせて下さい。
アジャイル・チームは、クロスファンクショナルなチームが理想と言われています。
私が過去にリードしたプロジェクトで、アプリ開発が得意な人、インフラが得意な人でスクラム開発チーム(5人程度)を構成した例があります。会社内での部門も別です。開始初期は、アプリ開発、インフラ構築とアサインが完全に分かれていましたし、分けることができました。
ただ、クラウド・アプリケーションの場合、アプリ開発者もコンテナ基盤についてある程度の知識、対応が必要になり、DevOpsの実現にあたりインフラ構築・運用保守メンバーも、アプリの実装面を学ばなければいけないところが増えていると感じます。スキルを上げるために得意分野以外のタスクを割り当てる(もちろんサポート付きで)チャレンジをすると、個々人のスキルが上がり、長期的に見るとチーム全体のベロシティ向上につながったなと感じています。
チーム全体でのスキルを上げて行く大切さを改めて感じて、社内で技術コミュニティ立ち上げに関するnote『アジャイル・ディベロッパーを目指して』も投稿しています。
よろしければご参照ください。
そして、さらに読み進めて行くと、とても共感できたことがありました。
③ 権限を委譲する
私が目次に惹かれて読むきっかけになった「第7章 組織をアジャイルに動かすために」からの一つです。
VUCA(Volatility: 変動制、Uncertainly: 不確実性、Complexity: 複雑性、Ambiguity: 曖昧性)な時代な中で、その象徴であるかのような超スピードのF1界において求められるリーダーシップとはどのようなものかが語られています。
私は、note『アジャイル・ディベロッパーを目指して』に関連する社内コミュニティリーダーとして任命されました。
任命されてから2年弱を振り返ると、自己評価としては『ゼロ点、むしろマイナス』です。
F1チームに比べたら蟻・蚤くらいの規模ですが、20人規模のメンバー工数をとっていて(ISEでは、会社としてスキル投資の時間を確保しています)、それをコミュニティリーダーとして全部まわさなきゃという意識があり、自分のプロジェクトが忙しくなったなどをきっかけに、活動がうまく行かないという事態になってしまいました。
リーダーを他の人にお願いした方が良いのではないか、と悩みましたが、今年から新たな考えでスタートしました。会社の目標に応じて複数の分科会を計画・発表し、それぞれ活動アジェンダの例だけ提示してメンバーに参加表明してもらい、あとは最初のファシリテーターを決めてコミュニティの活動は参加表明してくれたメンバーの持ち周り制に持ち込むことを始めました。
コミュニティ活動なので「権限を与える」ということとは違いますが、意識したのは「自分ごととして」取り組んでもらうことでした。
まだ走り出したばかりでうまく行くかはわかりませんが、コミュニティのリーダーとして見守ろうと思います。
ただ、アジャイルなリーダーとは、放任主義なだけではなく、松下幸之助も言う「任せて任さず」なリーダーであるとも言及されていました。
現場任せで自由に~、気づいてみれば違うことやってるし~、みたいなことにはならないように、これはお任せした自分の責任であると強く思いました。
(参考)F1とアジャイルに関して参考になった記事
こちらの2つの記事は、F1でなぜアジャイル・マネージメントが成功しているのか、ポイントをわかりやすくご紹介してくれています。
書籍の内容と重複するものもあり、やっぱりアジャイル・マネージメントで重要な勘所は同じなのだなと思いました。
How to make your organization as fast and agile as a Formula 1 team
「マシンはレースごとに変化する」--レーシングチームはアジャイルマネジメントの最前線
最後に、私は「第6章 頂点に立てねば見えない景色がある」の、2021年 メルセデスのルイス・ハミルトン選手とレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手が同点で迎えた最終戦でのチャンピオン獲得の話に興奮しました。
ここまで書いてきて、私はメルセデスのファンです...
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