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抽象絵画と矛盾

この今の時代に抽象絵画を描いているものを見るたびに思うものがある。

ロザリンド・クラウスがかつてアド・ラインハート等についての批評において、抽象が持つパラダイムの再帰性について書いていた。

抽象芸術の諸パラダイムに組み込まれた両義性―純粋な観念と完全な物質性という宙吊り―はその内的矛盾によって特徴付けられるという。

形態を再発明しようとする欲求に原動力を与えるのがその矛盾ならば、それが事実として反復であることを否定しようと油を注ぐのもその矛盾なのだと。

レヴィ=ストロースの指摘、神話それ自体は繰り返し舞い戻ってくるばかりの根深い文化的矛盾への反応だという言説を引き合いに、これらの回帰の形式/反復強迫が生み出すものは次のようなことだ。

1. 抽象のパラダイムが所与の芸術家の実践の中でシリーズ化の手段となる。つまり、わずかな差を生じつつ複製を延々と連鎖させ同一フォーマットを繰り返す。

2. その抽象が完全に単純な形態であるにもかかわらず内的矛盾の感覚を生み出すという事実を強調する。

オリジナリティという虚構の維持のための自己―欺瞞性がここにあり、観るものを把捉を絶えずかわすのだ。

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