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【解説】広島叡智学園中学校の作文って、どんな問題?②国語編(2020年_適性検査B)

※2023/07/16:追記
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こんにちは!公立中高一貫対策のiBASEです。
今回は、全国的にも注目度の高い「広島叡智学園中学校」の適性検査B(文系分野・作文)の問題について解説・分析を行います。

前回の記事では2020年広島叡智学園中学校適性検査Bの概観をしましたが、今回は国語分野を扱う【大問1】について、より詳しく見ていきましょう。


検査B_大問1の出題

2020年も①「ある文章を読んで筆者の主張をまとめる」と共に、②「それに対する自分の考えを述べる」という出題形式で、以下のような出題がなされました。

「次の文章は、獣医師の田向健一さんが書いた「生き物と向き合う仕事」の一部です。これを読んであとの問いに答えなさい。(※文章は著作権の都合上、省略)
問い
あなたは、この文章を通して、筆者が伝えたいことは何だと考えますか。また、筆者の伝えたいことに対して、あなたはどのような考えをもちましたか。次の条件にしたがって書きなさい。
条件
・この文章を通して、筆者の伝えたいことを書くこと。
・筆者の伝えたいことに対する自分の考えについて、これまでの経験を振り返り、具体例をあげながら書くこと。
・300字以上400字以内にまとめて書くこと。

0.答案の構成

2019年と同様で2020年も原稿用紙1枚分の分量です。はじめの50字~100字程度を使って、筆者の主張をまとめましょう。次に、端的な一文で、筆者の主張に対する自分の意見を述べます。残った文字数を使って、自らの主張を補足し分かりやすくするための具体例(これまでの経験や学習内容など)を書きましょう。

1.読解と要約のポイント

課題文は「生き物と向き合う仕事」からの抜粋。文章量は、去年と同じくらいで他府県の中学校と比べて長くはなく、むしろ短いぐらいの分量です。内容についても、去年と比べると小学生にとってイメージしやすい内容になっているため読みやすくはありますが、きちんと読解のトレーニングを積んでおかなければ、要約をすることが難しい内容となっています。

==課題文の”ざっくり”解説==

①題材は、「カエルを飼育すること」について。カエルは湿った環境を好むという「常識」にとらわれず、乾燥した環境を用意したことで長期飼育に成功したという筆者の経験談が書かれています。【具体例】

②大人になると、子供の頃の発想や素朴な気持ちを忘てしまいつい「常識」にとらわれる傾向にあります。しかし、新しい発見をするためには素朴な気持ちを忘れず、常識に対して違和感を覚えた時に自分を変えていく、柔軟に対応していくことが大切だと、述べています。【主張・考え】

==============

出題では「筆者が主張したいことは何だと考えますか」と問われているため、上記解説の②「しかし」以降の内容を端的にまとめることが求められています。

ただ、去年と同様に文章を要約するという技術は大人が思っている以上に高度な技術です。特に小学生でよく見られる答案は

■「カエルの飼育」「子どもの書く習慣(文章中にある他の例)」という具体例を書いてしまう
■文章をそのまま抜き出してつぎはぎしただけで、文章として成立していない

という答案です。国語の読解の基本として、「抽象:筆者の主張や考え」と「具体:主張を分かりやすく伝えるための例」をきちんと分けて読み解くトレーニングが必要です。今回の出題では「カエルの飼育」「子どもの書く習慣」を例として取り上げ、この例を通して常識にとらわれないことの大切さを述べています。トレーニングを積むことで、「カエルや子どもの書く習慣=具体例」「具体例は要約として書いてはいけない」ということがわかってきますので、大きく差がつくポイントと言えます。

また、主張は見つけられたが文章中の言葉をそのまま書き写して要約とする生徒をよく見かけます。あくまでも「作文」であるため読み手が読みやすいように文章の因果関係を踏まえること・指示語の言い換えをするなど、必要なところで自分の言葉に直して文章として成立させる必要があります。

2.自分の考えを述べるポイント

そうした読解を経て、筆者の主張に対する自分の考えを述べなければいけません。改めて、課題文で述べられた筆者の主張を、まとめておきます。

新しい発見をするためには素朴な気持ちを忘れず、常識に対して違和感を覚えた時に自分を変えて柔軟に対応していくことが大切だ。

この内容に対する自分の意見に対して受験生が限られた時間の中で対応するために、次の2点を考えましょう。

①筆者の主張に【賛成⇔反対】かを述べ、意見を作ろう
まずは自分の立場を決めましょう。筆者が述べている意見に対して「賛成」なのか「反対」なのか、立場を明確にするだけでも、立派な主張の表明です。今回の題材の場合、「反対」の立場を取ることはなかなか難しいでしょう。多くの受験生が「筆者の意見に賛成です」という立場を取ったことが予想されます。

②「具体例のストック」をたくさん作ろう
上記の通り、自らの主張で他の受験生と差をつけるのが難しい問題です。よって、それを支える具体例の内容が、合否を分けるポイントとなります。公立中高一貫校入試では頻出の、具体例を書かせる作文。よく保護者より「うちの子の作文は内容が平凡なんです…」とご相談をいただきますが、何も突飛な体験談やユニークな経験が求められているのではありません。あくまで主張に対して論理的に成立しているか?が、採点の際のポイントです。

今回の題材で言えば、
■常識が通用しなかった経験が述べられているか
■その経験を乗り越えるために行ったことが述べられているか
■自分の中から生まれた素朴な気持ちや疑問から行ったことか
の3点が、採点の際には大きな要素となるでしょう。

去年に比べると、作文の具体例は思いつきやすいかもしれませんが、多くの受検生にとっては初めての受検で緊張していることと、時間が限られていることから、題材に即した具体例を「その場で思いつく」ことは、小学6年生にとっては至難の業です。そこでiBASEに在籍する生徒の皆さんには、全国の公立中高一貫校で頻出されるテーマについて作文のトレーニングを積み、ある程度の「具体例ストック」を1年かけて作っておいてもらいます。

出題のテーマは学校のビジョンや校訓、入学後の活動の内容にある程度関連することも多く、毎年直前期には、iBASE作文チームが作成する予想問題にも取り組んでもらっています。

たとえば、
・協力することはなぜ大切か
・目標をたてることはなぜ大切か
・失敗することはなぜ大切か
・すでにあるものを変える力はなぜ大切ですか
などのテーマを扱います。今回で言えば「すでにあるものを変える力」についての練習を積んでいた生徒は、対応が出来たことでしょう。

もちろん生徒それぞれの経験や体験によって得意不得意も出てくるため、一人一人に沿ったトレーニングを効果的に積んでいくことが大切だと考えています。

3.まとめ

★【抽象⇔具体】を明確に分け、主張だけを読み取るトレーニングが必要
★【主張】を繋ぎ合わせて要約にするトレーニングが必要

★想定される出題テーマについて、日ごろから具体例の収集に努めることが必要

以上、2020年広島叡智学園の適性検査B【大問1】についての解説でした。

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