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第7回「いばらき ひらこか」開催しました!

令和5年に新しくオープンする新施設と広場。新施設は各階に配置される子育てや文化芸術、市民活動支援などさまざまな機能が「縦の道」と呼ばれる各階をつなぐ空間によって混ざり合うような設計となっています。この新施設の7階に市民活動センター(以下、センター)が移転する予定です。そして、移転後のセンターに必要な役割や機能について考えるワークショップが、「いばらきひらこか」です。

全7回に渡るワークショップは、ビジョンを描きながらアクションプランを立てる「バックキャスティング」という考え方に基づいて進行しています。前半3回は学びが中心となる「アイデアのとびら」、後半4回は実践が伴う「チャレンジのとびら」という構成です。

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「チャレンジのとびら」のポイントは、第6回にワークショップ参加メンバー内で活動を実験し合うことです。メンバーはワークショップで得た新たな学びを活かして、自分の活動に実験的な要素を加えて披露します。また同時に、他のメンバーの活動を観察することで、茨木市の市民活動に必要な支援内容を考えます。

そして今回は、第1〜5回を通じて話し合ってきたことと、第6回の結果を踏まえて、市民活動のコンセプトとセンターのこれからについて話し合いました。

1.前回のふりかえり

前回(第6回)は参加者同士で活動を実験し合いました。団体が単独で実験する「ソロ」、複数団体が連携して実験する「コラボ」、様々なサポート方法を実験する「サポート」という3つのテーマにもとづき、合計8つのプログラムが披露されました。

また今回は、実験時に各プログラムを取材してレポートを作成したチームより報告がありました。プログラムの良かったところや、より良くなるポイントについてコメントされたレポートが、各チームに手渡されました。

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2.市民活動センターのこれから

これまでのワークショップの結果を踏まえて、今回はセンターのこれからについて話し合いました。はじめに茨木市役所・市民協働推進課の高崎課長より、センターの方向性について説明がありました。

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センターは指定管理者制度を採用しており、市が直接運営しているのではなく、民間団体に委託しています。そして令和5年にセンターが新施設に移転するにあたって、指定管理者も改めて募集する予定です。その際に必要なのが茨木市の市民活動のコンセプトです。コンセプトの実現をサポートすることがセンターの役割なので、募集にあたってもコンセプトを示す必要があります。今回はこのコンセプトを、ワークショップの結果を踏まえて整理してきました。皆さんと話し合い、より良いものにしたいと思います。

茨木市の市民活動のコンセプト

いばらきひらこかの事務局を担当しているstudio-Lの太田より、コンセプトを説明しました。今回提案するコンセプトは、茨木市の市民活動に関わる皆さんにとって、活動する時の指針になるものです。これまでのワークショップと視察、実験を通じて話し合われた内容はもちろん、参加者が得た学びや気づきを書き込んだ「ひらこか手帳」からもヒントを読み取り、コンセプトを検討しました。

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今回のワークショップを通じて、市民活動においてまず大切なのは「楽しむこと」だと考えました。まずは自分自身が活動を楽しむこと。そして自分だけが楽しむのではなくて、誰かの人生を楽しくする活動に発展していくこと。「楽しい活動が誰かの人生を楽しくする」ことをみんなが目指して活動していくことで、市民にとって茨木市がより良いまちになっていくのではないかと思います。

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上記はひらこか手帳の書き込みの抜粋です。「楽しむ」というキーワードはたくさん見られたので、まずは楽しむことを大きな柱としてコンセプトを考えました。その上で、「うごく」「ひらく」「まなびあう」という3つの柱を設定しました。

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まず「うごく」こと。活動の最初の一歩として、思っていることを行動に移してみることが大切ではないか、という言葉がたくさん見られました。また「活動の始まりは、誰かとの出会いかもしれない」という言葉がありました。誰かと出会うことで自分の「やりたい」が形になり、活動になっていくと思います。そして誰かと出会うにも、まずは動くことが大切です。

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今回のワークショップのタイトルにも「ひらこか」とありますが、自分の活動を誰かにひらいてみる、誰かと一緒にやってみる、誰かの活動に参加してみること。応援してみること。第6回の実験でもサポートチームが情報発信などで盛り上げてくれたように、活動にはいろんな参加方法があります。そんな参加が実現するには、まず活動がひらかれていることが大切です。

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いばらきひらこかでは、ゲスト講師から学ぶ時間や、事例を調べる機会、視察など、学ぶことを大切にしてきました。人生100年時代といわれていますが、私たちが生きる社会は昨日まで当たり前だったことが覆り、価値観も多様化しています。そのような社会では自分自身が学び続けることが重要です。これを一人でやるのではなく、誰かと学び合うこと。手帳にも「学び続けたい」という言葉がたくさん見られ、「一緒にやってみたいと思うこと自体が役に立てることに繋がる」という言葉もありました。活動や交流を通じて学び合う機会があると、市民活動に関わる人たちが増えていくのではないかと思います。

コンセプトを実現するために

例えば自分自身が楽しんで活動していくという時に、センターは、それが楽しい活動になるように一緒に企画を考えます。また「うごく」にあった出会いの機会をセンターも積極的につくっていくなど、コンセプトの実現に必要な支援をセンターが取り組んでいくことになります。そのための指針として、コンセプトを言語化して提示しました。

3.市民活動と楽しさ

コンセプトの大きな柱である「たのしむ」、それがなぜ市民活動にとって重要なのかについて、studio-Lの醍醐より解説しました。

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第6回の実験でも、そば打ち体験などに参加してすごく楽しかったのですが、なぜ楽しいのかということを考えることがあり、私は市民活動と楽しさと幸福の関係性について大学で研究しています。コンセプトの柱となっている「たのしむ」は、実は第1回でも、studio-L代表の山崎がこんな図を用いて解説していました。

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行動経済学の理論では、人間はまず「楽しい」「おいしい」「かわいい」「かっこいい」と直観的(システム1)に判断し、次に「なぜそうなのか」「なんのためなのか」と論理的(システム2)に考える、といわれています。市民活動においても、まずはシステム1を大切にし、後からシステム2がじわじわと理解されていく方が、共感が広がりやすく新しい仲間を増やすことができます。

楽しさの種類

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楽しさにもいくつかの種類があります。例えば受動的な楽しさとは、誰かに楽しませてもらうことを指します。個人ならテレビを見たりパチンコに行ったり、集団なら居酒屋に行ったりカラオケに行ったり、といった、お金を消費することで得られる楽しさです。これらは別に悪いわけではありませんが、得られる楽しさは小さくて長続きしません。

市民活動はまさに、図の中の「真の楽しさ」を追求していくことができます。仲間と一緒に集団になって楽しみ、かつ能動的に自分たちで楽しさを生み出していくことができます。これなら、得られる楽しさは大きく長続きします。

フロー理論

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楽しさに近い概念として、「フロー理論」があります。本に書かれている定義を読むと難しそうに見えますが、例えばスポーツなどで「ゾーンに入る」という表現を聞いたことはないでしょうか。野球選手なら「今はゾーンに入っているのでどんなボールでも打ち返せてしまう」、サッカー選手なら「今の彼は調子が良すぎて誰もドリブルを止められない」といった状態に到達することがあります。これを「フロー状態にある」と表現することがあります。

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行為の能力(技能、自分ができること)が上昇していくことと、行為への機会(挑戦、少しレベルアップした活動ができる機会)が増えること、この2つがバランスよくレベルアップしている状態が、フロー状態であるといわれています。このフロー状態は市民活動にも起きるのではないかということが、アンケートなどを用いた研究結果で明らかになりつつあります。

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テレビ鑑賞やパチンコなどの受動的なレジャーは、エネルギーをあまり使わずスキルも求められないので、フロー状態にはなりません。一方でスポーツでフロー状態になるには、アスリートのように多大な努力が必要であり私たちが達成することは難しいです。そこで市民活動は新たな可能性として注目しています。市民活動は前提として、公益性や地域課題の解決につながっていくという要素があります。今回案で提示した「楽しい活動が誰かの人生を楽しくする」というコンセプトを大切にしていくと、フロー状態に近づくのではないでしょうか。

茨木市は元々、市民活動に先進的に取り組んできた自治体です。2005年に「市民公益活動推進懇話会」が開催され、そこで茨木市の市民活動が定義されていました。「市民の自治力を向上できる」「市民活動の機能性、効率性、専門性などを生かせる 」「市民に社会的自己実現の機会を拡大できる 」といったことが報告書に書かれています。これらは非常に重要なことで、茨木市の市民活動の前提としながら、「たのしむ」を柱とした「うごく」「ひらく」「まなびあう」というコンセプトが加わると、茨木市ならではの特色あるこれからの時代に求められる市民活動が実現するのではないでしょうか。

4.コンセプトについて意見交換

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ワークショップの後半は、コンセプトの4つのテーマ「たのしむ」「うごく」「ひらく」「まなびあう」に分かれて意見交換しました。コロナの状況を踏まえて、参加者同士の距離をとった上で、まずは自分の意見を付箋に書き、アクリル板を設置した場所から発表する、という形をとりました。そして1つのテーマに集まった人たち全員が発表したら、他のテーマに移動しました。

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参加者が書いた付箋は、壁に貼った模造紙に、ファシリテーターが整理しながら貼っていきました。4つのテーマで出された意見を紹介します。

たのしむ

模造紙たのしむ

心のままに動いていくことや、ポジティブに考えていくことなど、まずは自分の心の持ちようが大切であるという意見がありました。一方、「楽しい活動が誰かの人生を楽しくする」というコンセプトで表現されているように、自分のことばかりではなく相手を思いやること、子どもたちのための活動なら子どもたちのことを考えることや、子どもたちと一緒に考えていくことが大切ではないかという意見もありました。自分と誰かが楽しむことのバランスを意識できるとよさそうです。

そして、人や体験、学びとの出会いが楽しさには必要です。そのためには閉塞的ではなく開放感のある活動が必要という意見もありました。そのためには、楽しさを伝えていくことや、まずはやってみること、チャレンジしていくことが大切なのだろうという話をしていました。

うごく

模造紙うごく

まず自ら動いていくことが大切、ということはほぼ全員が言っていました。あまり難しく考えずに、とにかく動き出す、やってみることが大切です。そのうえで、「うごく」というと自分が主役となって動いていくようなイメージを持ちがちですが、いろんな「うごく」があるということで、例えば誰かの活動に参加することや応援することも「うごく」になるでしょうし、自分がチャレンジしたい活動に近いことをやっている団体や地域に視察に行くことも「うごく」だろうという意見がありました。

動き出したくなるような機会も大切という意見もあり、気楽に交流しながら人と出会い、きっかけを得るような場づくりも必要なのでしょう。またインスピレーションを得る何かに触れて衝動的に動き出したくなる、そんなきっかけもあるでしょう。そうして動き続けることも大切ですが、一方でしんどくなったり楽しくなくなったりしてきた時には止まることも大切ではないか、という意見もありました。

ひらく

模造紙ひらく

そもそも何を「ひらく」のか、という話から始まりました。自分たちがどんな活動しているのかを伝える、知ってもらうという「ひらく」なら、仲間を増やすことや新しい連携を生み出すこと、賛同者だけでなく協力者を増やすことにつながるかもしれません。また活動する場所を「ひらく」、例えば人に見てもらいやすい場所に活動の場を移すことも考えられ、新施設ができるまでの間、まずは広場から活用してみるのがいいのではないかという案がでてきました。

また内々で行う勉強会やサークル活動といった生涯学習の活動をしているグループも茨木市内にはたくさんありますが、それらが「ひらかれて」いくと、茨木市の市民活動がさらに広がるかもしれません。とはいえ、なかなかひらくということは勇気がいるため、難しい場合もあるという課題もあります。安心安全な雰囲気づくりがあれば「ひらく」ことができるかもしれない、デメリットも加味した上で、少し勇気をもって「ひらいて」みると自分が変わったり、そのことで人間関係も変わっていったりするかもしれない、という意見もありました。また「ひらく」ためのヒントも出てきて、今までとは違ったターゲット層に向けて活動してみることや、色んな可能性を考えることができる柔軟性をもつこと、人手が足りない!といった助けを勇気を出して求めること、といったことが挙げられました。

まなびあう

模造紙まなびあう

まず、茨木市に住んでいる人たちが何に困っているのかを知ることも学びだろう、という意見がありました。その時に、センターだけではなくて、新施設には図書館などの機能もあり、市内には他にもいろんな施設があります。センターだけで完結するのではなく、各施設と連携していけるといいのではないかという話になりました。

他の活動に参加することも「まなびあう」であり、学ぶという姿勢を持ちながら参加すると、自分にできることや、より良くなるポイントに気づくことができるだろう、という話もありました。世代を越えて参加してみることも大切で、年齢層の高い活動に若い人が参加するとお互いに学びがあるかもしれません。また歴史の勉強会などは参加しやすく、一方的に話を聞くだけではなくて、哲学カフェのように双方向で学び合えると、さらに参加しやすくなるのではないか、という意見もありました。そして学び続けると共に立ち止まって振り返ることも大切で、自分たちの活動報告会などを開くことも有効でしょう。

まなび"あう"という点がポイントで、他者の存在を意識すること、考え方の違う人たちが関わり合っていることを理解することが大切であるという意見もありました。そのためにはまず話を聴き、対話し、お互いを知ることが大切で、そうするとお互いにやさしくなれるかもしれない、そんな要素も活動にあるといいのではないかという話になりました。

studio-L醍醐より講評

自分の意見をみんなに共有し、その意見を取り入れてまた新しい意見が出てくる、コロナの影響で特殊な形ではありましたが、そんな意見交換ができていたと思います。また今回はフロー理論なども紹介しましたが、意見交換の結果から、茨木市ならではの楽しさの意味を見つけていけるのではないかと思いました。楽しさの意味を常にみんなで探しながらアップデートし、みんなで共有していくことが大切になるでしょう。

「楽しい活動が誰かの人生を楽しくする」ですが、楽しい活動がすぐに誰かの人生を楽しくするわけではなく、その間に何があるのかを探していくことになると思います。プログラムを提供する人たちも、そこに参加する人たちも、お互いに意識や行動をポジティブに変容していくこと、そんな過程を経て人生が楽しくなっていくのでしょう。そんな大きな目標ではありますが、意見交換を聞いていて、茨木市の皆さんなら十分に目指すことができるだろうと、こちらも勇気づけられました。

5.今後にむけて

最後に高崎課長より、今後に向けた話がありました。

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令和2年に国勢調査があり、8割くらいの自治体の人口が減っている中で、茨木市の人口は増えていました。その要因は転入超過による社会増です。これは住むまちとして茨木市が選ばれていることでもありますが、茨木生まれ・育ちの人たちだけでなく転入してきた人たちが増えていくことでもあり、人間関係の希薄化が不安視されます。そんな状況の中では、人と人とのつながりを生み出す市民活動は今まで以上に重要であり、コンセプトを実現できるセンターをつくっていくことが市の使命であると考えています。

今回のワークショップを踏まえて、センターのあり方も時代の変容に合わせて柔軟に考えたいと思っています。センターに関する条例も、これからの市民活動に対応していけるように、新施設への移転という機会を活用して見直しているところです。

新施設へのセンターの移転は令和5年であり、あと1年あるので、いばらきひらこか からさらにステップアップする機会も用意していきたいと考えています。引き続き、よろしくお願いします。

新施設へのセンターの移転は令和5年であり、あと1年あるので、いばらきひらこか からさらにステップアップする機会も用意していきたいと考えています。引き続き、よろしくお願いします。

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