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「神絵師と同じブラシを使っても同じ絵が描けるわけではない」の解像度を上げる【後編】

 こちらの続きです。

■質感や色の重なりで考える

・紙質、質感

 どんな質感の筆を選ぶのか…………ブラシ選びにおいて、楽しくもあり悩ましくもあるポイントだと思います。
 デジタルでありながら、アナログイラストに近い風合いを出したりすることができます。

 「透明感のある水彩」「ざらざらした鉛筆」「ペタペタした油彩」などの大きな括りでは、何を選んだかによってイラストの雰囲気がガラッと変わります。

 しかし、例えば同じ「ざらざらした鉛筆」であれば「どんな風にざらざらしているのか」といった細かい微妙な質感の違いは、そこまで作品全体の印象には影響を与えない気がします。

 最初から微妙な質感の違いで悩むよりは、大体の方向性が決まって「この線、もっと〇〇な感じの方が良いかもな」と思うようになってから再検討する方が楽かもしれません。

・ブラシの合成モード

 色の重なり方も使い勝手が変わる要素です。

 混色があり隣の色と混ざるタイプと、混ざらないタイプのものがある事については、前回「混色について」の項でも触れました。

 そして、全く混ざらないタイプの中にも更にバリエーションがあります。

 レイヤーに「乗算」「オーバーレイ」といった合成モードの概念がある事は、デジタル絵描きをしていればご存知の方が多いと思いますが、ブラシにも合成モードがあります。

 同じブラシの合成モードの設定だけを変更して塗り重ねてみました。

 右上の「濃度(比較)」は不透明度が高いほど上に重なって表示される合成モードです。

 複数の色を重ねると変な感じになってしまっていますが、ベタ塗りのように1色で広い範囲を塗りたい時にはムラになりにくいです。
 また、この合成モードは不透明度の違う色を使って影塗りをする時等に便利なようです。

 「乗算」はカラーフィルムを重ねたように、重ねれば重ねるほど濃くなっていくモードです。透明水彩でしっかり乾かしてから次の色を重ねたような、透明感のある表現ができますね。

 しかし重なるほど際限なく暗くなっていくので、ムラなく塗りたい時には1度もタブレットからペンを離さずワンストロークで塗らなければならず、下地等にはあまり向きません。

 「透明度置換」はこの例だと通常との違いが分かりにくいかもしれません。
 後から置いた色の不透明度が前の色の不透明度を上書きするので、半透明のブラシで何度も重ね塗りした時などに一定以上に濃くなり過ぎないモードです。

 CLIP STUDIO PAINTにおいては、混色がoffになっている場合のみ、ブラシの合成モードを変更する事ができます。
 ibisPaint Xでは混色のあるブラシでも合成モードを変えられますが、挙動がおかしくなる事もあります。

 同じブラシでも合成モードによってかなり使い心地が変わるので、目的に合わせて変更すると便利です。

■結論

 この「目的に合わせる」意識が大事なんだろうなと思います。
 憧れの人と同じブラシを使っても、何故その人がそのブラシを好んで選んでいるのかを理解していなければ、そのブラシの強みを生かせません。

 Gペンなどのシンプルなペン1本で素晴らしい絵を仕上げている方は、作品に説得力や魅力を与えるためのポイントを熟知しているからこそ、単純なペン先でも効果的な描き方ができるのでしょうね(私もそうなってみたい……)
 勉強あるのみですな( ˇωˇ )

 でも「このブラシ、もしゃもしゃした質感で月の模様や雲を描くのが楽!」「肌はこれがなめらかで使いやすいなあ」ということはありますよね。
 そのうちCLIP STUDIO PAINTのお気に入りブラシ素材を目的・理由付きでまとめたいなぁと思います。

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