自己資金の利回りが大事:IRRとは何ぞや(加筆済み)

今回は、投資の最も重要な判断基準と考えている自己資金の利回りについてまとめます。以前から書くつもりで先延ばしにしていたのですが、大家界隈の「IRRとは何ぞや、横文字使ってもメシは食えねーぞ」という論調に対して、私も金融マンの端くれとしてお答えする責任を感じて、ようやく筆を執った次第です。

細かな定義は他の文献に譲りますが、IRRというのは事業や投資に投じた自己資金の年率リターンであり、投資の効率性を表した指標です。自己資金の増殖スピードと言い換えることができるかと思います。

文字では伝わりづらいので事例です。(税金とか細かいこと全部無視ですよ)

画像2

この投資を評価してみましょう。500を投資して、家賃収入を5年で300、売却額が400で合計700の収入でした。500が700になったのだから40%のリターンです。なかなかすごいですね!

本当でしょうか?上記のリターンには期間が考慮されていません。事例は5年でしたが、500投じて700を受け取るのに50年かかっていたら微妙ですよね。したがって、投資の効率性を示す指標の出番になります。

画像2

細かいことは端折ってしまって、excelで算出してしまいましょう。この事例のIRRは8.6%です。自己資金の500は売却まで毎年8.6%増えた投資であったと評価するのがIRRです。(厳密には家賃収入は受け取り直後に再投資する前提になっていますが、細かいことは置いておいて差し支えないです。)

私の理解では、IRRが持ち出される局面は、タイプが異なる様々な投資案件を比較する際です。金融のProject FinanceやPrivate Equityの世界では馴染みでしょうし、事業会社の経営企画や商社の投資においても用いられていると思われます。自己資金を投じるタイミング、キャッシュフローがいつ発生するのか、条件がバラバラの投資案件を自己資金の利回りという効率性でシンプルに比較するのがIRRの使い方です。

IRRが高くなる要素を列挙すると、(1)自己資金は小さいほうが良い、(2)期間は短いほうが良い、(3)同じ期間ならCFを受け取るタイミングは早いほうが良い、などがあります。

注意が必要なのは、フルローンで自己資金が小さすぎるケース、即転売で投資期間が短すぎるケースではIRRは大きく出過ぎるため、有効ではないと考えます。物件を検討する際に、頭金(自己資金)を15%、5年後に売却をする仮定で想定IRRを算出して投資判断を行うように私はしています。その上で、自己資金はなるべく少なくなったほうがいいですし、5年後に売らずに保有しても、もっと早く売るなど状況に応じた手を打つつもりです。

2022年10月加筆)上記のIRR15%を投資判断の目線にしているというのは、主にファミリー区分への投資を前提にしていました。よりリスクの高い新築、築古のアパートに対してはIRR20%とより高い目標を念頭に置いています。

もう一つ、注意が必要なのは、想定IRRはある条件下における投資の効率性に過ぎないということです。絵にかいた餅なので、本当に実現し得るのか様々な角度から検討が必要ですし、ダウンサイドシナリオにおける想定IRRも算出しておくといいかと思います。特に売却益に依存する投資はブレが大きいので注意が必要です。

ここからは、IRRについて触れている過去のツイートを見てみます。

これは、茨城県阿見町の築12年くらいの木造アパートを検討した際のツイートです。信用保証協会融資の保証料が高くて、自己資金がかなり必要になったというケースです。たしか、LTV80%、表面利回りは13%台で、5年後に表面15%で売却する想定を置きました。Equity IRRという記載は、Project IRRという概念と分けるためです。

2022年10月加筆)今思えばこのアパートは買いでした。

一般的に不動産投資はキャッシュフローが重要視されています。デッドクロスはいけないというのは、キャッシュフロー重視の典型です。私はキャッシュフローはさほど重視していません。それよりも、売却まで見越したIRRであり、自己資金をいかに増殖させるかに関心があります。

2022年10月加筆)物件購入時にキャッシュアウトをいかに抑えるかの重要性に触れないと思います。自己資金をたくさん入れた結果、返済比率が下がりキャッシュフローが出ても、それは単にキャッシュアウトした自己資金を取り戻しているにすぎません。一定の財務力があれば、購入時にキャッシュアウトを抑えて、売却時に大きく回収できれば保有中にキャッシュフローが出なくてもいいともいえます。

キャッシュフローは重視していないと述べましたが、融資をする金融機関は違います。キャッシュフローを重視しますね。銀行はちゃんと返済してくれるかが大事であり、私は自己資金を少しでも早く増殖させることに関心があり、目的が異なるため仕方がないことです。そのため、融資期間を伸ばしたいのですが、法定耐用年数が立ちはだかって、いつも苦戦します。

2022年10月加筆)滋賀銀行のジャスサポが心強い存在になっていますね。私は地元金融機関で融資が出ているのでお世話になっていませんが、機会があればトライしようと思っています。

こちらの一連のツイートは、全てIRRについてでした。時間が経つにつれて、年率利回り=IRRが下がっていくのは、リターンの源泉が家賃収入ではなく、売却益に偏っているためです。投資の本質は安く買って高く売ると言われますが、不動産投資も同様であると私は考えます。

2022年10月加筆)売買によるキャピタルゲインと賃貸によるインカムゲインでは期待されるリターンが異なる(人によっても異なりうる)ので、保有期間が長くなることによるIRR低下はネガティブではないかもしれません。物件を売却した後に割安な物件を購入できる自信がなければ、キャピタルゲインが期待できても売却すべきではないケースがありそうです。

これは15カ月所有した区分マンションのリターンの実績です。現金買いでした。自己資金に対する収入の総額は+29.6%でした。たまたま、投資期間が15カ月だったためIRRは20%くらいだったと思いますが、退去が5年後だったらIRRは5%以下だったと思います。ツイートでも神風が吹いたと書きましたが、本当にラッキーでした。割安でもバックファイナンスの確信がなければ現金で買ってはいけません。すぐ売って転売益を確定できればアリですが、業者成りする必要があります。

そろそろまとめます。

不動産投資は、他事業に比して資産回転率の悪い事業ですが、担保価値と事業の予見性の高さからレバレッジを利かせられるため、少ない自己資金で大きなポジションを持ちやすいです。そのため、投資額や借金玉に注目が集まりがちですが、本当に自己資金が効率的に大きくなっているかを重視するべきだと考えます。そして、その効率性を示す指標がIRRなのです。

安く買えて、高く売れるのが明白であるのであれば、IRRなぞ気にする必要はありません。計算すれば相応に高いはずです。しかし、投資するべきか迷う物件であったり、候補が複数あって比較したい場合などでは十分に有用であると考えます。また、とりあえずキャッシュフローが出るから買った物件は本当に自己資金をスピーディーに増殖させてくれているか振り返るのにも有用であるでしょう。

勢いで書いてみました。時間をおいて、加筆修正をするかもしれません。また、ご指摘やご感想はTwitterにいただけると嬉しいです。以上。