僕らのパターン・ランゲージ作成・研究(立ち上げフェーズ:2002〜2007年)
僕が始めてパターンを書いたのは、博士研究の一環で作成した、社会シミュレーションのモデル設計のパターンである「モデル・パターン」だ。
その後、2004年に井庭研が始まり、その翌年に、体験学習のファシリテーションのコツを、「モデル・パターン」のようにまとめたい、ということで井庭研に入ってきた。それで、僕らの初めての実践のパターン・ランゲージを作成することになった。それは、大掛かりなプロジェクトではなく、学生の卒論の指導として始まったのだ。
その後、それを見た後輩たちも、プロジェクトや研究の実践について、パターン形式でまとめたいと、グループ研究を始めた。
この頃は、僕が大学院時代に発表をしていた情報処理学会の「数理モデル化と問題解決」研究会でパターンの発表をしていた。パターン・ランゲージの国際カンファレンスの存在を知らなかったし、国内の学会では発表できるところがなかった。まったくもって「数理モデル」ではなかったのだが、「問題解決」に絡むということで大目に見てもらっていたという感じだ。最初に出したモデル・パターンは、数理モデル化だったので、その流れで、何本か発表させてもらった(いま、考えても、とてもありがたいことだと思う)。
そして、ついに、パターン・ランゲージの国際カンファレンスを見つけ、2007年に参加した。アメリカで開催されているPLoPだ。論文は投稿せずに、様子見で参加した。口頭発表せずに、ライターズ・ワークショップということを行うということで、度肝を抜かれたが、コミュニティとして魅力も感じた。こうして、翌年2008年には、僕らも論文を投稿し始めることになる。
2004年から、井庭研では、ニクラス・ルーマンの社会システム理論の研究をしていたので、そのコミュニケーションの連鎖の観点から、パターン・ランゲージの機能を考えていた。コミュニケーション・メディアとしてのパターン・ランゲージを捉えるという。
興味深いのは、この2007年から、慶應義塾大学SFC総合政策学部・環境情報学部で「パターンランゲージ」の授業を開始いていることだ。僕が本格的なパターン・ランゲージとして「ラーニング・パターン」をつくる前のことだ。初年度は、
創造的思考と創造活動に関するパターン・ランゲージを履修者60人くらいでつくった。
パターン・ランゲージに関する論文、発表、講演は、以下の通り。
2003
井庭崇. 2003. 「社会・経済シミュレーションの基盤構築:複雑系と進化の理論に向けて」, 博士論文, 平成15年度(2003), 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科.
岡部 明子, 井庭 崇. 2003. 「社会・経済シミュレーションのモデル・パターン: 複雑系における動的な変化を記述する」, 情報科学技術フォーラム(FIT), pp.323-324.
2005
井庭 崇, 津屋 隆之介, 青山 希. 2005. 「社会シミュレーションの構築のためのモデルパター」,情報処理学会研究報告 数理モデル化と問題解決(MPS)会, Vol. 2005, No.93(2005-MPS-056), pp.21-24.
2006
清水 崇博, 井庭 崇. 2006. 「体験学習におけるファシリテーションのパターン分析」, 情報処理学会研究報告 数理モデル化と問題解決(MPS), Vol. 2006, No. 29(2006-MPS-058), pp.89-92.
2007
井庭 崇. 2007. 「新しいシステム観にもとづく思考と実践」, Mobile Society Review 未来心理, 第9号, モバイル社会研究所, pp.23-31
古市 奏文, 若松 孝次, 湯村 洋平, 井庭 崇. 2007. 「プロジェクトを推進するためのパターンの提案」, 情報処理学会研究報告 数理モデル化と問題解決(MPS), Vol. 2007, No.43(2007-MPS-064), pp.37-40.
井庭 崇. 2007. 「コミュニケーションの連鎖による創造とパターン・ランゲージ」, 社会・経済システム, Vol.28, pp.59-67.
井庭崇研究室. 2007.「パターン・ランゲージによる暗黙知・ノウハウの言語化」, 展示, SFC Open Research Forum (ORF 2007).
井庭崇研究室. 2007. 「ナレッジ・マネジメントの新潮流:パターン・ランゲージによる暗黙知の言語化」, セッション, SFC Open Research Forum 2007 (ORF 2007).
Takashi Iba. 2007. “Creation toward Quality Without a Name: Sociological Analysis of Pattern Language”, in the 1st International Workshop on Software Patterns and Quality (SPAQu'07).