いつか思い出になるような、そんな今の 《おもいで時間》 をじっくり味わい、写真に残しておく(大変な状況のなかでの暮らしのヒント)
お花見をしたり小旅行に行ったり、学校では新しいクラスで友達とおしゃべりし、週末に買い物に行ったり遊園地に行ったり、というような、「いつも」の春の日々を、つい数ヶ月前までは誰もがイメージしていました。
今、実際には、ずいぶん違う毎日を過ごしています。
多くのことができなくなり、不自由さや閉塞感を感じます。
すべてが奪われてしまったような、そんな気持ちになります。
でも、よく考えてみると、最も大切なことは奪われていません。
私たちが生きて、日々を過ごしているということ、そのことです。
自分がここにいる、家族がともにいる、そのことはう損なわれていません。
しかも、多くのことを失ったかもしれませんが、代わりに、今、大切なものも手にしています。
自分とじっくり向き合う時間、家族と長い時間をともにする機会です。
いつもは、目の前のことに追われていると、そういうことを味わうことが疎かになりがちだったのではないでしょうか。
そうして、自分が擦り減って疲れているのにも気づかず走り続け、子どもの成長や変化を見過ごしてしまったり、大切な瞬間を共有できなかったりしてきたのです。
▼ ▼ ▼
そこで、こんな状況のなかだからこそ、自分に向き合ったり、家族と過ごすかけがえのない時間を大切にし、じっくり味わいます。
将来、あるとき、ふと、とてもかけがえのないものだったと思い出すような日々が、今ここにあります。
一緒にご飯をつくるとか、
遠隔ミーティングの画面に子どもがひょっこり入ってきたとか、
家の周りを何気なく散歩するとか、
野菜を植えるとか、
いままでとっちらかっていた部屋を片付けて綺麗にしてみるとか、
遠隔飲み会をしてみたり、
離れた両親とビデオ通話してみたり、
読みたかった本を読んでみたり、
みんなでごろごろしてみたり、
……… 。
そういうすべてのことがこの日々の世界の一コマです。
その一コマ一コマが、将来、「2020年は、あんなふうに過ごしたなぁ」と振り返るような、かけがえのない思い出になるでしょう。
この大変な状況の日々も、自分の人生を構成するひとつのシーンなのです。
だからこそ、今、この日々の写真をたくさん撮っておきましょう。
旅行や遊園地イベントのような綺麗な写真は撮れないかもしれません。
でも、いいんです。
自分も子どもも、この歳の日々は、人生のなかで今しかありません。
「このときは、みんなで家で過ごしてたねぇ」と思い出すことができる写真が残せればいいのです。
家のなかだって、不自由ななかだって、思い出深いシーンや笑顔はたくさんあります。
そういういつもとは違う日常の一コマ一コマを、どんどん撮っていくのです。
自分たちのこの瞬間を残せるのは、自分たちだけです。
いつか思い出になるような、そんな日々。
そんな日々をじっくり味わいながら、写真にも残していく。
そして、この大変な状況を乗り越え、生き抜き、いつか「こんなときもあったねぇ」となつかしく笑い合いましょう。
そんな日が来ることを心から願いながら、今日もがんばっていきましょう!
---------------
《おもいで時間》は、『日々の世界のつくりかた:自分らしく子育てしながら働くためのヒント』に収録されているものです。
これは、慶應義塾大学 井庭研究室と 花王株式会社生活者研究センターの共同研究でつくられた、働くことと子育ての両立のためのパターン・ランゲージです。
これを歌にした、とても素敵な歌『日々の世界』では、サビ「♪ 世界をつくろう わたしたちなりの 日々の世界をつくって らしくやっていこうよ」に入る前のところで、「いつか思い出になるような〜♪」と、とても印象的に歌われています。
先行き不透明ではありますが、いつかきっと、今の日々を振り返って「あんなときもあったね」となつかしく思える日が来ます。
だからこそ、失われたことではなく、今あるものに目を向けて、大切にしていきたいものです。