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SDGs Bar「今さら聞けないブロックチェーン 基礎の基礎を徹底解説!」(開催報告)


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i&i Impact Editorial Board
19 July, 2020

6月25日に、i&i Impact 主催のSDGs Barを開催しました。

今回は、i&i Impact Community Labなどのメンバー限定企画として、「今さら聞けないブロックチェーン 基礎の基礎を徹底解説!」というテーマで、ゲストトークと懇親会を行いました。

動画用

ゲストトークでは、ブロックチェーン技術が世間の話題になる前から専門ニュースメディアの立ち上げに参画されるなど、アメリカや中国を含む海外のブロックチェーン関連情報に詳しい伊藤さやかさんをお招きして話を伺いました。

ブロックチェーンは「どんな点が新しいのか」、「今後どんなことに使われる可能性があるのか」、「ブロックチェーンの種類の違い」、「(SDGs関連も含め)具体的な活用の事例」、「今後、ニュースをみたり、新規プロジェクトを検討したりする時にはどんな点に注目すればよいのか」といった点についてお話しいただきました。

参加者との交流セッションにおいては、参加された国際機関の専門家や日本国内外で事業展開されている起業家から、国際機関(UNHCRやWFP)の実例や、地域通貨の実証実験についての実体験についてのお話もあり、非常に充実した時間となりました。

ゲストトークの内容のまとめを下記に記載していますので、ブロックチェーンの基礎情報や具体的な活用例について関心がある方はぜひご覧ください。

※ ゲストトークで使用されたスライド(23枚)と、詳細な内容が記載された講演用の原稿(11枚)について、限定的に公開することの承諾をいただきましたので、noteの有料コンテンツとして公開します。用語の解説や事例について、より詳細な説明を確認したい方は、ぜひご利用ください。こちらのnote記事の最下部にファイルが保管されています。
i&i Impact Community Labメンバー及びi&i Impact主催のSDGs実務家グループに参加されている方におかれては、コミュニティグループにてゲストトークの動画も共有していますので、関心ある方はそちらもご確認下さい。)


ゲストトークまとめ

1 ブロックチェーンの革新性
●ブロックチェーンが注目される理由は、従来のデータ記録や更新のような管理者が必要な仕組みとは異なり、「分散」してデータを記録できるようになったこと。つまり、管理者が不要になる仕組みが構築された。分散管理することで、改ざんが極めて困難で、実質的にダウンタイム(例:銀行オンライン口座のメンテナンス期間)がなくなり、システムを安価に構築できるという利点が生まれる。

●ブロックチェーンと相性が良い領域は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット化)、スマートコントラクト(契約の自動化)、DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)と呼ばれる領域。

2 ブロックチェーンの具体例 ~ビットコインを例に~
●ブロックチェーンには様々な種類があるが、最初にブロックチェーンという技術を提唱し、実装したのはビットコイン。プロセスの自動化が進み、ひとつの組織が自律的、分散的に動くようになり、運営や管理、契約履行のために人手が不要になった。このようにプログラムで自動的に処理できるようになることを自律分散型組織(DAO)というが、DAOを最初に実現したプロジェクトがビットコインと言われる。むしろ、ブロックチェーン技術は、ビットコインのシステムを実現するための基盤技術として誕生したというほうが正確かもしれない。

●ビットコインのブロックチェーンは、データの連続性を暗号技術で補償することで、「インターネットの信用問題」を解決した。ブロックチェーン技術というものは、あらゆる情報(金融取引の場合、金銭の出し入れの取引情報)がそれぞれブロックとして存在し、そのブロックがずっと一列に(チェーン状に)連なって履歴として残っていくもの。ビットコインのブロックチェーンでは、それぞれのブロック(情報)を安全に次につなげるためにブロックの生成ごとに暗号をかけている。ブロックは、大体10分にひとつ作成されるようにプログラムされている。

●ビットコインのブロックチェーンの仕組みでは、ブロックとブロックをつなぐ承認作業は、不特定多数の「マイナー」と呼ばれる参加者が自由に参加し、ブロックを繋げるための競争を行っている。ブロックを繋げる競争に勝つことで、ビットコインがもらえることが参加者が競争に参加するインセンティブ。

●ビットコインの各ブロックの承認作業において、ひとつのブロックを繋げる時には、常に過去のブロックを要約した情報が含まれないといけない。仮に、ひとつの偽の情報を成立させようとすれば、その偽の情報を入れた過去の要約を常に継続しつつ、常に熾烈な承認競争に10分に1度、勝ち続けなければならず、実質的に偽の情報をいれることは不可能。偽情報を入れるコストを考えれば、正しい取引を承認してブロックをつなげていくことの方がずっと良いという環境が生まれ、不正を排除できる。これが、「インターネットの信用問題の解決」ということ。

●ビットコインのブロックチェーンは、誕生から11年、まだ1度も破綻せずにネットワークを維持しているという意味で画期的な仕組みとなっている。

3 ブロックチェーン技術を使うのに相性の良い領域と活用事例
●最初にブロックチェーン技術が注目されたのは金融領域で、その後、第二段階として、ポイント報酬、資金調達、資産管理、地域型通貨といった分野への活用が注目されるようになった。

●ブロックチェーンの活用事例は「オープン型」と「クローズ型」に大別。現状では、ビットコインなどのように自律分散を実現しているオープン型(自律分散型)と、企業や自治体等の管理者がブロックチェーンのネットワーク参加者を限定するクローズ型が存在。ブロックチェーンの革新性は、管理体がいなくてもセキュリティを担保できることで、コスト削減とセキュリティ向上につながると説明したが、これを最も体現できるのはオープン型。他方で、企業や自治体などがブロックチェーンを活用するという場合、既存の事例のほとんどはクローズ型であるというのが実態。

●ブロックチェーンの代表例は以下のとおり (※スライドと講演原稿にそれぞれの概要記載あり)

★ オープン型の例
-イーサリアム(Ethereum)というオープン型のプラットフォームの上に実装されている分散型アプリケーション(DApps)と呼ばれるプロジェクトが主要なもの。600以上存在し、その中の代表例は、ujo musicという音楽配信のプラットフォーム。

★ クローズ型の例
-ヘルスデータやカルテの相互運用性を担保するための仕組み。代表例は、中国のAlibaba系金融会社のAnt Financial。

-小売店やメーカーなどがブロックチェーンで商品の真贋証明を行う仕組み。代表例は、LVMH社のブランド品の真贋証明や、商品の制作から販売までを追跡するプラットフォーム。

-Facebookによる「Libra」というプロジェクト。銀行口座を持たない人でも、Messenger上でお金をやりとりできる仕組みを構築しようとするもの。直近はクローズ型での実装を目指しているようであるが、いずれはオープン型を目指すという報道もあり。

-国際機関による活用事例として、シリア難民の保護に関するUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とWFP(国連世界食糧計画)によるプロジェクト。難民の登録や生活必需品の購入等の情報をブロックチェーンで管理。

★ 日本の例
-オープン型の代表例は、2ちゃんねらーの中から生まれたモナコイン(Monacoin)。

-クローズ型の取り組みは非常に多数存在。たとえば、博報堂、朝日新聞、小学館などの7社がコンソーシアムを結成し、国内のデジタルコンテンツの著作権保護や流通拡大にブロックチェーン技術を活用するためのプロジェクトを準備。単体企業としては、富士通は、電自家発電や節電などで生まれる余剰電力と需要のある店舗などの間で効率よく電力を取引できる仕組みをブロックチェーン上で開発。

-ブロックチェーン技術を利用して地域の活性化を目指す地域通貨の取り組みについても、福島県会津若松市や富山県、兵庫県南あわじ市などでプロジェクトや実証実験が進んでいる。


●本日の説明では、オープン型のブロックチェーンとしてビットコインを主に説明したが、ビットコイン以外にもイーサリアム、EOS、TRONなど多数のブロックチェーンが存在。それぞれ、合意形成の仕組みやチェーンの特色などには違いがある。また、クローズ型のブロックチェーンにも、Corda、Hyperledger、いろはなど、複数のタイプが存在する。今後、実際にブロックチェーンのプロジェクトを目にしたり、導入を検討したりする時には、活用するブロックチェーンはどんなタイプのものなのか、プロジェクトの性質とブロックチェーンとの親和性は高いのか、といった点を考える足掛かりとして、考えてもらえればよいと思う。


以下から、今回のゲスト―クのスライド(23枚)と説明用原稿(11枚)がダウンロードできます。上記概要のより詳しい説明を確認したい方は、ぜひご利用ください。

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