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SFで描かれた”あの技術”はもう現実に

映画「アイ, ロボット」をご存知ですか?
2004年に公開されたウィル・スミス主演の映画です。

その設定はまさに古典的なSFと言えるでしょう。

物語の舞台は2035年という遠い未来で、高度に知能を持った人型ロボットが普及した世界です。
(もちろん、当時は「遠い未来」と思われていた2035年も、今ではたった10年後に迫っています…。)

そして、当時はSFに思えたものが、今や多くの人が想像よりも現実に近づいていると感じています。

ロボット革命は確実に訪れます。

しかも、そのスピードには驚かされることでしょう。

何よりも強調したいのは、それが意味するのが「工場やファストフード店におけるロボットの増加」だけではないということです。

ロボット犬の普及でさえ、多くの人にとって最大の驚きではないでしょう。

真にもたらされるのは、私たちにそっくりなロボット...人型ロボットの増加です。

少し暗号資産からは離れますが、同様に注目したいテクノロジーである人型ロボットについて今日はご紹介します。

人型ロボットは今後10年をどう変えるのか?


人型ロボット市場は、専門家の当初の予測をはるかに上回るスピードで成長しています。

ゴールドマン・サックスの最新の調査によると、2035年までに人型ロボットの出荷台数は控えめに見積もっても140万台に達するとされています。


これは、同社の過去予測の4倍にあたります。

また、イーロン・マスクの予測ともおおよそ一致しており、2040年までに世界中に100億台の人型ロボットが存在する可能性があるとしています。

もし人口増加率に大きな変化がなければ、2040年の地球の人口は92億人と見積もられています。

つまり、今後20年以内に人型ロボットが人間の数を超える可能性があるのです。

この劇的な変化をもたらした要因


人工知能(AI)の進化は、専門家さえも驚かせています。

そして、新しい「ロボティック大規模言語モデル」と呼ばれる技術により、ロボットはあらゆる動作を事前にプログラムされることなく学習できるようになりました。

つまり、ロボットは工場の外でも働けるようになり、新しい環境への適応が格段に速くなっています。

さらに、ロボットの製造コストも急速に下がっています。

2023年には基本的な人型ロボットの価格が約5万ドル(約750万円)、最先端のモデルは25万ドル(約3,750万円)でした。

しかし、昨年にはその価格が3万ドル(約450万円)から15万ドル(約2,250万円)へと40%も下落しました。

この価格低下は、ロボット部品のコスト削減や、業者の増加によるものです。

そして、DeepSeekがAIのコストを急速に下げ、誰でも使えるものにしたように…
人型ロボットの設計も進化し、同じことが起こりつつあります。

コストが下がることで、工場への導入は想定よりも早く進む可能性が高いでしょう。

すでに多くの企業が、特に自動車産業で人型ロボットは活用されています。

ホンダはASIMOのような人型ロボットを開発しました…

Honda

トヨタもT-HR3といった人型ロボットを発表しています。

出所:トヨタ

さらに、BMW、フォルクスワーゲン、ヒュンダイは、それぞれ独自の人型ロボットを開発し、製造工場での組み立てや検査に活用しています。

ある予測では、2030年までに25万台以上の人型ロボットが出荷されると考えられており、そのほとんどが産業用になる見込みです。

しかし注目すべきは、こうした企業向けのものではありません。

消費者向けのロボットです。

ゴールドマン・サックスによると、個人向けロボットの登場は予想よりも2~4年早まる可能性があります。

そして10年強のうちに、年間販売台数は100万台を超え、一般家庭にロボットが普及し始めると予想されています。

もしかしたら

「そんな未来が本当に来るのか?」

と思われるかもしれません。

しかし、すでに世界中の家庭には4,000万台以上のルンバのようなロボット掃除機が存在しています。

そして、人型ロボットは掃除以上のことが可能なのです。

家庭用人型ロボットは、最初は主に掃除や家事の手伝い、あるいはペットのような「癒し」の役割を担うでしょう。

移動能力や物を運ぶ能力が向上すれば、高齢者や障害を持つ人々の支援にも大きく貢献するはずです。

さらに機能が進化すれば、料理、洗濯、芝刈りなど、より複雑な家事をこなすようになるのも時間の問題でしょう。

AIの発展とともに、家庭用ロボットは予定管理をしたり、スマート家電を制御したりと、生活をより快適にしてくれるかもしれません。

防犯システムの一部として活用されることも考えられます。

つまり、これからの10年で「アイ, ロボット」はSF映画ではなく、「過去の出来事を描いた作品」に近づくかもしれないのです。

私の見解


もちろん、AIを搭載したロボットの家庭内普及には、道徳的・倫理的な問題が伴います。

しかしそれは今回のお話ししたい内容から外れるため、触れません。

私が今回お伝えしたいのは、これがいかに成長する分野であるかということです。

ゴールドマン・サックスによると、2035年までに人型ロボット市場は380億ドル(約5.7兆円)規模に達する見込みです。

これは、以前の60億ドル(約9,000億円)という予測の6倍に相当します。

しかし、これはオーストラリア最大の投資銀行マッコーリーの予測と比べると控えめです。

同社は、2035年の人型ロボット市場の規模が1,390億ドル(約21兆円)に達すると見積もっており、年間成長率は50%にも及ぶとしています。

これは決して非現実的な数字ではないでしょう。

例えば、イーロン・マスクは人型ロボット事業に全力を注いでおり、テスラ(TSLA)は「オプティマス」ロボットでこの市場の主要プレイヤーになろうとしています。

1月の決算説明会で、マスク氏は2025年末までに「数千台のオプティマスロボット」の生産を開始すると発表しました。

そして長期的には、「オプティマスは10兆ドル(約1,500兆円)以上の売上を生み出す可能性がある」とまで言っています。

もちろん、競合相手もいます。

例えば、ボストン・ダイナミクスです。

同社は驚異的なスピードでロボットの進化を続けています。

昨年、同社は油圧式のアトラスを廃止し、驚くほど機敏な全電動型の新モデルに置き換えました。

このロボットは、なんとバク宙までできるのです。

ボストン・ダイナミクスは非上場企業ですが、ヒュンダイが大株主となっています。

また、私が注目しているのはFigure AIです。

この会社は「汎用型人型ロボットを実現する世界初のAIロボット企業」と自称しています。

現在、15億ドル(約2,250億円)の資金調達を進めており、企業評価額は約400億ドル(約6兆円)に跳ね上がる見込みです。

マイクロソフト、NVIDIA、ジェフ・ベゾス、ARK Investなどが出資しており…

2025年には、この会社の名前を頻繁に聞くことになるかもしれません。


イアン・キング