HR豆知識①エンゲージメントの定義
「Employee Engagement(従業員エンゲージメント)」という言葉をどこかで聞いたことはありますでしょうか?
エンゲージメントはマネジメントの指標
歴史を遡ると、1990年、「Employee Engagement」という言葉はボストン大学心理学教授のウィリアム・カーンの論文(※1)をきっかけに使われた言葉(論文内では”パーソナルエンゲージメントと言われている”)です。要は「エンゲージメントの高い社員は業績が良い」という事を発表した論文です。※1 Kahn, W. (1990). Psychological conditions of personal engagement and disengagement at work. Academy of Management Journal, 33, 692-724.
それまでは、職場に対する満足度(XXに満足している、していない)がパフォーマンスに影響していると言われていましたが、職場満足度以上以上に、エンゲージメントという要素がビジネスパフォーマンスと強い相関関係を持っているという事を発表したという事になります。エンゲージメントの構成要素は、「帰属意識」、「やりがい」、「組織に対する誇り」など様々な形で訳されるものです。
さらに、ウィリアム・カーンの論文以降では、2000年前後、アメリカの心理学者フランク・L・シュミット博士、Gallup社などがこの「Employee Engagement」という言葉を使うようになったのです。その後は、各コンサルティング会社やWilmar B. SchaufeliやMaria Tims ⁎, Arnold B. Bakker, Despoina Xanthopoulouなどオランダの研究者たちが更に研究を進めています。
Gallup社はエンゲージメントを以下のようなロードマップで整理しています。
また、Engagementと同様に「Employee Experience」という物の考え方や、その参考図書については、以下のブログに纏めていますのでそちらをご覧頂ければと思います。
"Miserable job(やりがいのない仕事) VS Meaningful job(やりがいのある仕事)"
さて、話を「The Truth About Employee Engagement:」に戻します。著者は、夢であった職業で大活躍していたアスリートでも、アルコール中毒や麻薬中毒になってしまう例や、賃金の低いまたは他者から羨ましがられることのない職業でも充実感を感じて仕事をしている人の例を挙げ、一つの結論を出します。
「誰だって、どんな仕事だって、Miserable(哀れ・惨め・憂鬱)になる。
これは仕事そのものの問題ではなく、マネジメントの問題である。」
有名なイソップ寓話「3人のレンガ職人」でもあるようなお話を使って考えてみましょう。
あなたはそこで何をしているのですか?
1番目のレンガ職人:「レンガ積みに決まっているだろ」
(エンゲージメント低い)
2番目のレンガ職人:「この仕事のおかげで俺は家族を養っていける」
(エンゲージメント普通)
3番目のレンガ職人:「歴史に残る偉大な大聖堂を造っている」
(エンゲージメント高い)
3番目のレンガ職人がエンゲージメントが高く、最もパフォーマンスが高いという事は言うまでもありません。
エンゲージメントを高める3つの要素(Anonymity・Irrelevance・Immeasurement)
では、「なぜ様々な職業でMiserable jobが生まれるのか?」という問いに対して、著者は3つの要素を上げます。
1.Anonymity(認知と感謝の不足):人は、誰しもが、人から理解され、感謝されることを望んでいる。誰からも理解されず、感謝されない環境であれば、その仕事はMiserable(哀れ・惨め・憂鬱)になりうる。
2.Irrelevance(非関連性):人は、自分のやっている仕事が、社内の関係者や顧客、または仕事の現場を超えた誰かの満足や喜びに繋がっている事を実感したい。従って、どんな”喜び”にこの仕事がつながっているのかを理解できなければ、その仕事はMiserable(哀れ・惨め・憂鬱)になりうる。
3.Immeasurement(測定不能):人は、自分のやっている仕事が、進歩したり進展したりすることを望んでいる。または、スポーツのようにスコアがあることによって、人は達成感や充実感を感じることができる。何をしても、どんな変化が起きているのかがわからない場合、その仕事はMiserable(哀れ・惨め・憂鬱)になりうる。
如何でしょうか。上記の3要素はWell-being領域でのPERMAモデルとも関連する要素がありますよね。
エンゲージメント向上の効果(生産性を上げ、離職傾向・採用力を改善し、持続可能な文化の差別化につながる)
前述3要素が満たされている組織では、以下のような変化が起きるとリサーチの結果から述べています。
従って、個々人が行っている仕事の意義を理解共感できている組織が、「Employee Engagementが高い組織」という論理展開です。このようなサイクルが回せている会社は、他社との差別化要因となる”持続可能で優位性ある企業文化”が創れるという事につながります。
次回は、エンゲージメントを上げるための方法をご紹介していきたいと思います。
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