20210610 信楽
こんにちは。旅行7日目、京都3日目です。
まる1週間旅行をしているということで、この生活も馴染んできたなという思いがあります。一方で出費がすごく、毎食外食はさすがに厳しいなという気持ちになってきている。
さて、今日は京都を飛び出して滋賀へ向かいます。といってもすぐ近くで、京都駅から琵琶湖線でトンネルを一つ抜けると山科(まだ京都)、もう一つ抜けると大津でもう滋賀県です。時間にするとほんの9分。
朝9時半頃の電車に乗り、降り立ったのは石山駅。大津市南部の拠点駅で、大津市内の駅では一番の乗降客数を誇ります(余談ですが、大津駅は両隣の駅よりも乗降客数が少ない)。
といいつつそんなに大きい駅という感じはしない。近くに工場があるので通勤客が多いのでしょうか。
石山は京阪石山坂本線という半分路面電車みたいな路線との乗換駅です。昔は「いしやまさか・ほんせん」だと思っていましたが、「石山寺」と「坂本(比叡山)」を結ぶ「いしやま・さかもとせん」です。
バスまで少し時間があるので軽く駅周辺を散歩します。
石山坂本線と出会いました。なんか君…細くない…?車体がそもそも細いのもありますが、線路が普通のJRが採用する狭軌(幅1,067mm)ではなく新幹線と同じ標準軌(幅1,435mm)なのでその比較でもそう感じてしまうのでしょうか。
瀬田川。琵琶湖にほど近いため、かなりの川幅です。てっきり琵琶湖に注いでいるのかと思っていましたが、瀬田川は琵琶湖に発し、宇治川・淀川と名前を変えて大阪湾に注ぐ大河川となります。大津から南の山の方に向かって川が流れるというのが意外な感じ。
滋賀県ということで、平和堂もあります。滋賀県と言えば、1位は琵琶湖、2位は平和堂です。
バスの時間になったので駅に戻って、10時10分発、MIHO MUSEUM行きに乗り込みます。ICカードは使えないのですが、MIHO MUSEUMに行く人専用の券売機が置いてあり、そちらはICカードが使えました。地方都市の郊外の駅のバスのりばということでどんなもんかと思っていましたが、案外いろいろなところにバスが出ていて、割と賑わっている。こちらのバスにも7〜8人の乗車がありました。
社内がなかなかレトロでして、ブレーキやウィンカー、「つぎとまります」ボタンに連動する電球式の表示がありました。字体が素敵です。液晶のわかりやすい表示板もあるのですが、なぜか運賃が変わる境界のバス停のみを表示し、次のバス停を表示しない(運賃が変わらない場合はアナウンスでしか次のバス停がわからない)という謎仕様。
日本三名橋の一つである瀬田の唐橋を渡ります。こちらは東海道・東山道が通っていた橋ということで、天智天皇の世にはすでに橋がかけられていたとか。風流な場所として浮世絵に描かれたり、松尾芭蕉が句を詠んだり、急がば回れの由来(回ってくる方)になったりしています。ただ今の橋自体がどうこうというわけではなく、ちょっと欄干がおしゃれな橋というくらいに思えました。
街から郊外、田んぼ、そして山へと景色は変わっていきます。山道を駆け抜けること50分、MIHO MUSEUMに到着しました。
湖南アルプスの緑豊かな地にあるこちらは、神慈秀明会の開祖、小山美秀子のコレクションが展示されている美術館。山奥に巨大な建物があることでおなじみ、宗教美術館です。神慈秀明会は世界救世教から分立しており、世界救世教の教祖である岡田茂吉を神慈秀明会でも教祖としています。世界救世教は熱海のMOA美術館や箱根の岡田美術館を所有していることでも知られていますので、まあ同じ感じですね。「美術を通して、世の中を美しく、平和に、楽しいものに」という思いで作られたとのこと。
エントランスホールからは10分程度のアプローチを歩いていく必要があります。
春には桜がきれいらしい。
歩くのが大変な人向けにゴルフ場みたいな電気自動車も運行されています。
緑を目にたたえながら暫く歩くと巨大なトンネルに。MOA美術館の長大なエスカレーターを思い起こしますね。
トンネルを抜けると…
巨大な吊橋。
そして、美術館に到着です。
アプローチも含めたこの美術館全体は、ルーブル美術館のガラスのピラミッドで知られる建築家、イオ・ミン・ペイにより設計されており、コンセプトは「桃源郷」。完璧と言っていいほどに美しく設計されており、どこを切り取っても絵になります。
展示は、企画展「MIHO MUSEUMの現代美術」と常設展。
企画展については現代美術と言いつつも、いわゆる現代美術というわけではなく、戦後の日本美術を中心としています。なかなか渋い感じのコレクションでして、漆芸家の白山松哉に展示が始まり、須田剋太、杉本健吉という2人の奈良の画家、民藝運動に重要な役割を果たした芹沢銈介(けいすけ)、木工と漆芸を手掛けた黒田辰秋、そしてこちらの美術館に関係している人として彫刻家の若林奮、哲学科の梅原猛といった面々の展示となっています。芹沢銈介はまあ分かるけど、ほかは名前聞いたことあるかな、、というくらいでしたが、本当に良かった。
写真も撮れず、ただ私の感想を述べるだけになってしまうのですが、よかった。蒔絵の棗から展示が始まってすぐ一気に惹き込まれ、須田剋太の力強くも精確な観察眼を感じさせる絵、杉本健吉の仏教的かと思いきやコミカルな部分もある絵、黒田辰秋の落ち着ききった茶器、若林奮の空間を彩る鉛筆のドローイング。一番良かったのは芹沢銈介、染色家・図案家でありますけれども、色合いからデフォルメの技法までとにかく美しく、たいへん惹き込まれました。
芹沢銈介《春夏秋冬文二曲屏風》MIHO MUSEUMホームページより
絵画や織物は大きな作品が多く、漆芸や茶器は小さな作品が多く、というメリハリもよかった。あとはなんだろう、ガラスが良いのか、照明がいいのか、とにかくきれいに見えるんですよね。さすが宗教(?)、見せ方がうまい。もうほぼ満足しきっていますが、そんな調子で常設展へ。
常設展。度肝を抜かれました。
MIHO MUSEUMホームページより
エジプト、西アジア、ギリシア・ローマ、南アジア、中国の古代のものが展示されているのですが、どれも本当にすごい。紀元前のもののほうが多いんじゃないかというレベルの時代感で、2000年はおろか3000年、4000年といった歴史をも背負うその造形に目がくらむ。古代のものというとよくわからない石片を「これは何千年前の〜〜」と言われることも多いですが、こちらの作品はどれもきらびやかで美しい。歴史の勉強という感じで見るのではなく、人類が今まで成し遂げてきた「美」を感じ取ることができる作品ばかりです。保存状態もかなり良いと思う。若干ごてごてしてる感はなくはないのですが、どれも細密な装飾が施されており、本当に見ていて飽きない。
そして先ほども照明なのかガラスなのかという話をしましたが、作品が生き生きしているんですよね。これはイオ・ミン・ペイの空間プロデュースのおかげなのかもしれませんが、作品がただそこにあるというよりも、作品自らが来場者に魅せてくる、といった感じ。殷の時代のフクロウの形をした壺が一番印象に残っています。3000年前からはるばる現代に、こんな滋賀の山奥に…。
なんかもうわからないけど、とにかくすごい。惹き込まれる。といった感想をひたすらに覚え、舐め回すように各作品を凝視していました。
良くなかったことと言えば、立地が立地だからか、ドライブコースの定番なのか、来場客があんまり興味なさそうな人が多い。案外人が多かったというのは別に良いのですが、ハイキング気分のシニアの皆さま、永遠に手をつないでいるカップル、三脚を手に写真を撮りたがる人たち、永遠に子どもをあやしている親(ベビーカーに乗るような子どもはそりゃ興味ないだろ)。どう見ようが勝手なので来場客自身にかれこれ言うことは全くしないのですが、「展示室内ではお静かに」みたいな看板を立てるだけでも少し変わると思うんですがねえ。横須賀美術館が特にそこらへんしっかりしていた印象があります。
ちなみに美術館からはミノル・ヤマサキが設計した教祖殿(右側)と同じくイオ・ミン・ペイが設計したカリヨン塔、ベルタワー(左側)が望めます。こちらもきっと美しい建築にたくさんの美術品があるのでしょうが、信者じゃないと見ることは叶わないでしょう。
本当にいつまでも見ていたいような美術品がたくさんあり、いつまでもいられるような建物でしたが、バスの時間が近いのでアプローチの道をそそくさと戻っていきます。
名残惜しい。また来ることもきっとあるかと思います。
「健診に行こう!」と書かれたコミュニティバス、信楽高原バスに乗って信楽(しがらき)に出ます。急に現実に引き戻された感がある。MIHO MUSEUMには石山駅からは1時間に1本バスが出ていますが、信楽からは1日2本、信楽へは1日4本となっています。かなり田舎なので、これでも案外多いなという印象です。石山とは反対方向に行く形になります。
乗客は私1人。石山から来たときは完全に山でしたが、こちらは逆に人里だからこそ田舎感がすごい。
山道をものすごい飛ばしていきます。こわい、けど、田舎のバスのこういう時間って結構好き。
街に降りてきて、陶芸の森バス停で下車。信楽といえばたぬきを始めとした焼き物が有名ですね。先日行った常滑と同様、日本六古窯に指定されています。
陶芸美術館は展示替えで休館中。
屋外彫刻の広場。人がぜんぜんいなくてとっても静か。暑いけど。眺めも良いです。
こんなこと言ってはあれですが、MIHO MUSEUMの名品を眺めたあとだとあんまりおもしろくない。屋外彫刻があんまり好きではないということもあるのですが。もっとたぬきがいっぱいあるものかと…。
販売もしてる展示コーナーを見てみましたが、割とお手頃にいい感じのお皿が変えますね。さすがに皿は持って帰るのが大変なので買いませんが、車で来てたりしたら買ったかも。
芸術の森から信楽の中心部までは歩いて20分くらい。芸術の森がいまいち何もなかったのでそのままバスで信楽駅行っちゃっても良かったかもしれない。
滋賀県と言えば、1位に琵琶湖、2位に平和堂、3位に飛び出し坊やですね。滋賀県の八日市が発祥で、信楽の街には至るところにありました。以前長浜・彦根に行ったときはなぜか全然出会えなかった。
軒先に玉ねぎ…?と思いましたが、調べてみると玉ねぎ農家さんはこうやって保存するらしい。
これは大変いい感じの「紫香楽湯」。「湯屋営業」って文字がなかなか時代を感じさせます。紫香楽というのは信楽の別名で、読みは一緒。奈良時代に聖武天皇が信楽に紫香楽宮という都を造営したことに由来していますが、ほんの1年しか使われなかった短命な都。なんで信楽なんて山奥に都、と日本史を勉強している時に思っていましたが、実際に短命に終わったのも山奥すぎたかららしい。
もう15時半を回っていますが、まだご飯を食べていなかったので、cafe awa-isaさんでグリーンカレーとしそジュースのソーダ割りをいただきます。冷房がなくて入った瞬間はあら、と思いましたが、しばらく座っていると風が抜けていい感じ。グリーンカレーは具がたくさんで、辛味はほぼなく優しいお味。玄米とも相性がよかったです。しそジュースのソーダ割りもめちゃ美味しかった。地元の方も座って喋っているような古民家カフェで、いい時間を過ごしました。
信楽で何かをするという目的もなく、鉄道で帰ろうと思いましたが、ちょうど行ってしまったところ。次は1時間後ということで、しばらく信楽を散策します。
YAKUME BAKERYさん。なんかめちゃめちゃ評価が高くて、気になって寄ってみました。京都・大阪・神戸の有名パン屋と比べても遜色がないというレビューも。あんバターコッペ、グラタンパン、クイニーアマンを買いました。今クイニーアマンを食べていますが、美味しい。クイニーアマンってもはや砂糖を食べるためのものみたいなところがある(とか言いつつ見かけると毎回買う)けど、こちらのクイニーアマンは小麦の味もバターの香りもしっかりとしています。もちろんカラメリゼもうまい。3つ買っても500円台で安いなと思いましたが、もっと買えばよかったかも。
街のなかを歩いていたら結構たくさんたぬきがいました。
大仏たぬきと飛び出し坊や。
酒飲みたぬき。
飛び出しおそ松。おそ松さん…ではなくおそ松くんの時代でしょうか。
信楽を軽く歩いてみた感想として、小規模ながら今でも操業している窯元が多かったですね。常滑は昔から活動している人というよりは歴史に惹かれた若手の陶芸家や彫刻家が集まっているという感じがありましたが、ここは昔からの方々が多いように見えました。煙突も常滑と比べると細いものが多く、インパクトには欠けてしまう。実際に陶芸を体験したり、お土産ものを買ったりするなら信楽に分があるかもしれませんが、写真を撮って歩くだけだと常滑のほうが楽しかったかな。
歩くルートの名前も常滑は「やきもの散歩道」でしたが、こちらは「窯元散策路」。いかつい。
ロックンロール、略してろくろ。
ロックンロールなフォントに見える「学童多し」。ちょうど中学生が帰る時間だったようで、自転車に乗った活発な男の子に元気にこんにちはと挨拶されました。こんちは〜。京都からそんなに離れていませんが、こんな光景は京都じゃ見られないな。
神社に来ました。新宮神社。紫香楽一宮というよくわからない文句がついていますが、村の鎮守みたいなものでしょうか。ただこんな小さめな神社でも1300年の歴史があるというのだからさすがかつて都の置かれた場所といったところ。
😷
信楽は信楽焼で有名ですが、2019年後半の朝ドラ「スカーレット」の舞台にもなりましたね。番組のセットが展示されていました。
朝ドラは見ていないのでわかりません、というか暑さでバテてきました。
ということでコンビニでアイスを買い、信楽駅へ向かいましょう。
信楽駅。街の中心部からは川を渡って5分ほど歩いた場所にあります。
信楽駅前には大きなたぬきがマスクをして立っていました。でかい。
駅もたぬきだらけ。
信楽駅は信楽高原鐵道という第三セクター鉄道の駅で、JR草津線と接続する貴生川駅まで25分ほどで結んでいます。
ローカルな単線で、採算取れるのかって感じですが、高校生の帰宅時間ということもあり、2両編成でわりと人が乗っていました。といっても座席が3分の1埋まる程度でしょうか。信楽高原鐵道には1991年に正面衝突事故を起こし多くの死傷者を出したという悲しい記憶があるのですが、今年は事故から30年。風化させることなく、これからも安全運転を続けていってほしいです。
貴生川駅でJR草津線に乗り換え。貴生川駅はJR草津線、信楽高原鐵道、近江鉄道という3社が乗り入れるという割と大きな駅ですが、市街地があるというわけではない。信楽を含む甲賀市(甲賀忍者が有名、読み方は「こうか」と濁らない)の中心地は近江鉄道で1〜2駅ほど行った水口というエリアになります。
草津線も1時間に1〜3本程度のローカル線ですが、たまたま京都行きに乗れたということもあり、電車ではうとうと。草津や南草津、大津などで降りてみようかなとも思いましたが、わりとまた疲れてしまったのかそのまま京都駅へ。外食するという元気もなく、スーパーで焼き鯖寿司を購入してホテルに戻ります。焼き鯖寿司めちゃめちゃ好きなんですよね、関東だとあんまりみないけど。
今日も暑かったこともあり、首の後ろがひりひりしています(日焼け止めは塗ってるけど、、)。良くも悪くもMIHO MUSEUMで力を使い果たしてしまった、そんな一日でした。それでは。
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