万引き家族はすごい映画だった
昨日、是枝監督の最新作、万引き家族を観てきた。
公開前に、日本作品として21年ぶりにカンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞したニュースが流れ、前評判は高かったし、是枝作品としても注目されていたが、いざ蓋を開けてみると、その期待を大きく上回ってきた。
ネタバレはしないが、簡単に内容を説明すると、作品タイトルは万引き家族だが、万引きだけではなく、普段、陽が当たらない、誰もが目を背けるような影の部分が濃密に詰まっていて、日本の社会問題が集約された作品だった。
それを、是枝作品では常連のリリーフランキーをはじめとする実力派俳優陣が見事に演じていて、セットからカメラワークから修飾されていないあまりにも生々しいリアルな映像に、途中で何度も目のやり場に困ったほど。
そこは本当に是枝監督が見事だし、特に是枝作品に何度も出てくる食事のシーンは海街diaryや、そして父になる、などでも、家族の関係性の変化をセリフに頼らずに、食べ方やそれぞれが食べている位置、目線、表情で表現していて、毎度ほんとうに圧巻だ。
まぁ是枝監督も凄いし、子役も含めた俳優陣や、撮影チームが本当に凄いのだが、今回の万引き家族では、公開前から賛否両論があったように、誰もが目を背けてきた裕福な日本の負の側面を鋭く突いている。
資本主義経済から溢れ、犯罪へと走り、お金という絆で繋がり、格差社会の地を這うようなボロボロの一軒家でそれでも幸せそうに暮らしている血の繋がっていない家族は、劇中に何度も、家族とは何か?幸せとは何か?を考えさせてくるし、観る人の価値観そのものを深く揺さぶってくる。
そして、スクリーン越しに汗のにおいや息遣いを感じるほどに懸命に生きる家族は、精神的に未熟な僕にとって、良い意味で見るに耐えないものだったし、それだけ映像がリアルで、まるでドキュメンタリーを見ているようでもあった。
少しだけ僕の意見を書くと、世界中の先進国で広がる、もうこれ以上無視できない格差は思ってる以上に残酷で酷いものになっているという事だ。奇しくも公開初日と同じ日に、佐賀県でリアル万引き家族が逮捕されるという報道があったが、まさに現在進行形で実際に起こっている事であり、貧困は負のスパイラルを生み、誰も幸せにしない事を再認識した。
つまりこの作品は、それぞれ色んなレイヤーで感想があるだろうし、例えば児童虐待だったり、家族のあり方だったり、人それぞれ意見があると思う。
僕は公開初日に観たのだが、鑑賞後、多くの人達がエンドロールが終わっても席を立たずに腕を組んだり、天井を見上げて、じっと、"考えさせられていた"のが印象的だった。
最後に、ここまで人々に考えさせられる力を持つ映画って、単純に凄いな、と思った。
アートと同じように、ロジックではない分、良い意味でマスに届くし、価値観を根底から変える力を持つ、素晴らしく強力なメディアである事を痛感した。。
故郷の母と父に、何か買って送ってあげたいと思います。