アーティファクトを装備する話
それは他の誰のためでもなく、
世界で唯一私だけのための光。
子どもの頃から石が好きだ。
初めて手に取ったのは確か小学2年生の冬、出先でたまたま見つけたパワーストーン専門店に吸い寄せられるように入って、自分の誕生石であるターコイズを無心でひたすら眺めていた所から始まる。
普段おねだりわがままを一切言わない私が一粒1000円のターコイズの珠のために母親に無言の圧をかけ続けた。今になって思えば、その時点で既に『適性』があったんだろうな。
本格的に収集し始めたのは高校生の頃だ。理工系志望だったので選択科目は物理だったが、関心は地学に向いていた。指先サイズの原石を30種類近く収め、現物または写真を見て名前を答えられる石はゆうに60種類を超えていたと思う。定期試験への備えより生涯役に立たないかもしれない雑学を優先した。
……と、ここまで前振りが少々長かった気もするが、今回は題目とその背景にある通りアクセサリーについて。今夏、自らの行く末を左右しかねない存在と運命的な出会いを果たしたので、ありのままを書き綴っていきたい。
事の発端は度々面白い文章を書く方のこの記事で、上述の通り石が好きなので「私もいつか、運命に出会いに行こう」とか思っていた。当然Instagramもフォローしており、動向を定期的にチェックしていた。新しい投稿がある度に、その石が持つ輝きを想像していた。
そこから時は流れて今年の夏。関西に来てから1年近くが経過したある日、期間限定のポップアップで関西に来ることを知った。場所は京都伊勢丹で、大阪在住の身には余裕で行ける距離。そして何より、『来年(2024年)はポップアップやらないかも』というデザイナーのSNS発信が、私の背中を(結果的に)後押しした。運命に出会いたければ、今しかないのか?と。
期間初日、職場には予め午前休を伝え普段よりも早く自宅を出た。電車を乗り継いで辿り着いた京都駅直結の入口に着いたのが開店の1時間以上前で、正直ちょっと早すぎたかなと思う。
いざ開店と同時に店舗へ……エスカレーターで上がるまではよかったが、フロアのどの辺りにあるのかが分からず若干迷子になっての到着で、一切無駄な動きが無かったであろう数人の方に遅れを取った。待ち順の手続を済ませてから、少し離れた場所で頂いたフォトブック気持ちを榛名山並みに高め整えていた。
そして待ちに待った私の番。フォトブックに掲載されていた作品を中心に、青〜白系統のものを店員の女性に出してもらっては眺めたり嵌めてみたり……。下の写真は10数種類を手に取った中で候補に挙がったもの。なおこのブランドはダブレット専門店かと思ってしまうくらいには多い。ちなみにダブレットというのは複数の石を貼り合わせてひとつの宝石を作り出す技術、あるいは方法のこと。希少な宝石を模造することもできるが、一方で自然にはない独創的な宝石を生み出すこともできたりする。
最初に紹介されてから何度も、他のどの石を見ても何度も帰ってくる(?)石があって、それがこの写真の真ん中にあるカイヤナイト+クォーツのダブレット。一応デフォルトのサイズが12で作られており、私の場合は小指がジャスト。実際に身に着けるのは人差し指or中指なのでリサイズをお願いした。
なお、この後呼吸をするようにクレカで24回払を決める訳だが、金利がどうとかそんな世俗的なものは運命に導かれた私にとって何の制約にもならない。あるのはただこの唯一無二のアーティファクトと生涯を遂げるという誓約だけである。
それからちょうど一月が経過した頃、ようやく自宅に届いた。これまでの人生で、ここまで待ちわびた買い物はなかったと思う。
今回選んだカイヤナイトだが、調べてみると現在の、そしてこれからの私にとって大切な要素や意味合いばかりだった。具体的には『意思の強化』『自発・独立』『冒険・探求』『冷静・明晰』『固定概念の払拭』などだ。
奇しくもこの頃、会社の根幹や今後に大きく影響するであろう仕事を任されることになったし、大学に関してはちょうど設計課題の期限を前に図面と模型に集中していた。そういう意味では、手元に届いて早々に私のことを護ってくれていた気がする。
蛇足だが、ここのブランドのアクセサリーには総じて「魔法が使えるようになりそう」というレビューが付く。実際、友人知人からも口々に「魔法使えそう」「水・氷属性の魔法を無詠唱で連発しそう」なんて言われた。ほんとそれな。
限りない輝きをその手指に携えて、
限りない煌めきをその先に見据えるのだ。
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