勘の感度と笏の尺度という話
何処よりも暑く、誰よりも熱く。
水を以って熱を、熱を以って水を。
つい先日の出来事だ。
日本人街の一角にあるホテルに入った。といっても、わざわざ宿泊するためではなく目的はそこの銭湯……いや、厳密にいえばサウナだ。
週末とはいえ、ちょうど12時頃ならば他に誰もいないだろうと思ったが、脱衣室のロッカーは2ヶ所使用されていた。中に入ると、男2人組がちょうど水風呂に浸かっていた。
サウナのドアには「感染予防のため一度に2人まで」と張り紙されており、ならば今この瞬間だチャンスだろうと飛び込んだ。
第4波前半戦(仮称)のせいで2ヶ月近くおあずけを喰らっていたせいだろうか、久々に入ったサウナはいつも以上に高まった。いや、”昂まった”の方がニュアンス的には近いかもしれない。壁に取り付けられた砂時計の15分など、あっという間に過ぎ去っっていった。
そんな最中、例の2人組の会話がドア越しに、それもとぎれとぎれに聞こえてきた。要約すると、ベトナム国内の建築市場に鉄板の屋根を供給していきたいとか何とか……そんな話をしていた。
同じ業界で、しかもサプライヤー。純粋に興味が湧いた私は、その見ず知らず(のはず)の2人組に声をかけてみた。
「サプライヤーですか?」と第一声。
急に声をかけられたことに対してか、あるいは質問の内容に対してか、「ええっ」という戸惑いのようなリアクションの後に「まぁ、商社ですね」と回答が。その後「どんな屋根ですか?」と聞くと「ステンレス製です」、「もしかして、JCCI(商工会)とか入ってます?」と聞くと「一応、入ってますね」と。しかし次の瞬間には連れと一緒にサウナに入ってしまった。聞かれた事に答えるばかりで尋ねられることもなく、サウナから出てきて以降も話が再開せず、というか『話しかけるなオーラ』が何となく漂っていて仕方なく諦めた。
ここまでのやりとりで判明したことは、私と同年代か少し上くらいで、日系の鉄商社の(雰囲気や髪型から察するに)営業ということくらいだ。
さて、ここから先は完全に私の持論になってしまうのだが……この男、営業として致命的な位もったいないと思うのだ。
ひとまず、冷静に考えてみて欲しい。
『見ず知らずの人が仕事の話を尋ねてくるケース』って、考えられる可能性はおおよそ以下の3つくらいしかないはずなのだ。いや、もし他にもあるなら教えてくれ。マジで。
1. 自分の仕事に関係がある
2. 自分の(顧客など)身近な人の仕事に関係がある
3. ただの興味本位
厳密にいえば、3に関してはニッチな業界や珍しい職種、あるいはベンチャーでもないと起こりえないはずで、おおよそ1または2だと思ってよい。
したがい確実性は無いにせよ、営業チャンスの可能性がそこにはあるはずなのだ。それをどう捉えてかは知らないが、みすみすスルーしてしまうなんて……言っちゃ失礼かもしれないが、アンテナの1本さえも立っていないなんてとんだボケ野郎*1だなぁと、そう思わずにはいられなかった。
JCCIは、まぁ高確率で、建設部会だろう。だとするならば、定例会か何かで会うこともあるかもしれない。果たしてそんな場面がこの先あるのか、あったとしてどんなやり取りになるのか……少しだけ、ほんの少しだけ、楽しみではある。
もっと速く、もっと昂く、もっと強く。
もっと、ずっと、先の先へ。
*1……元々は上司の口癖の一つ。対象は個人の場合もあれば、企業や集団に対して使うことも。
#雑記 #独り言 #海外生活 #ベトナム #ハノイ
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