Ariana Grande「Focus」:焦点は移ろい続け、聴き手の心をそこに打ち付ける
Ariana Grandeの「Focus」を聴くと、緩く流れるテンポに包まれながら、ダンサブルな音が身体の中に広がります。パーカッション、シンセサイザー、ベース、キック、ホーン、ハンドクラップ、ボーカル、ラップ。音や歌声は入れ替わりに表情を変え、一曲のなかでさまざまなドラマを体験することができます。
「Focus」で聴ける音のなかで、特に好きなのがベースとホーンです。ベースに焦点を当てて聴いてみると、異なる表情をいくつも見せてくれます。シンセサイザーと絡んだり、キックと絡んだり、あるいはラップと絡んだり。そして、Arianaによる掛け声 “1, 2, 3, come on, girl.” をトリガーにして、バリトンを含むホーンの音が飛び出し、曲は一気に沸点を超えます。
ミュージック・ビデオではパステル調の色で描く世界が広がります。淡い色調のなかで、多彩な曲線が表現されています。セットが描く曲線、シルエットが描く曲線、ダンスが描く曲線。光や色の使い方がとても巧みで、衣装やセットの変化を際立たせながら、それらを違和感なくつなぎます。パステルからモノクロへ、円の中から四角の中へ、マクロから広角へ。焦点は移ろい続けて、観る人を軽やかに操り、心をそこに打ち付けます。