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高橋諒『ACCA13区監察課 オリジナルサウンドトラック SMOKE and MIRRORS』:紫煙のように立ち昇る音、鏡が映す13の世界
2017年の1月から3月までTOKYO MXなどで放送されたアニメ「ACCA13区監察課」のオリジナルサウンドトラックがリリースされました。サブタイトルは「SMOKE and MIRRORS」。物語の進行において鍵を握り、大きな役割を果たした煙草ですが、そこから立ち昇る煙と、その間に見え隠れする鏡。鏡が映す物語は、いつの間にか大きな流れ、大きな渦となって、主人公であるジーン・オータスを巻き込んでいきます。それでも本人は飄々として、煙草の煙のように漂い続けます。
音楽を担当したのは高橋諒。ジャズやフュージョンを軸にしたアレンジで、物語を支えます。音楽は物語を引き立たせる助演であることは疑いようもありませんが、音楽を聴いているだけでも物語が浮かび上がります。印象的なメロディや音は、絵や台詞とともに記憶に刻み込まれます。時間が経てばディスクで確認するのでなければ具体的なシーンを思い描くのは難しくなりますが、サウンドトラックを聴くことで、断片的に物語が蘇ってきます。それらを継ぎ合わせ、オリジナルの世界が立ち上がります。それもまた、拡散したACCA13区の世界、もうひとつのACCA13区です。
ホーンを効かせた「SMOKE and MIRRORS - Theme of ACCA」や「Movin’ On」が特に好きですね。物語が始まったり、一気に動いたりと、躍動感に満ちています。「Manic Funk」はファンキーなベースとギター、軽快に鳴るホーンとエレクトリック・ピアノを効かせています。「Cool Talk」は、よく記憶に残っています。この曲からシーンが始まり、やがて台詞が重なるため、耳に残っているんですよね。「Rising Over」は緊張感を一気に高めて、同時にエキサイトさせてくれる曲です。
「My Own Order」では渋く響くベースに、遠くを見つめるようなピアノがそっと加わります。「Turn Your Eyes On」は、ノイジーな音から始まり、不穏な雰囲気を醸します。扇情的なピアノ、ループするピアノ。不安定な世界の中でも、その旋律が心地好く、音が上がるときの高揚感は素晴らしい。サイズを長くして、アップダウンが何度もあるバージョンも聴いてみたいですね。ひとつの曲として成立すると思います。「Breaking News」は、暗闇を切り裂く光のように鮮やかなジャズ・ピアノに、ふくらみのあるストリングスが重なります。
主題歌または挿入歌はシングルとしてリリースされていますが、本作には劇中で流れたサイズで収録されています。オープニング主題歌はONE III NOTESの「Shadow and Truth」であり、一方、エンディング主題歌は結城アイラの「ペールムーンがゆれてる」です。前者はオープニングらしく鋭くダイナミックに響き、後者は柔らかに包み込むような温かい肌触りを感じます。どちらもそれぞれのアニメーションとともに記憶されています。
結城アイラの「It’s my life」は挿入歌として一度だけ流れましたが、耳にした瞬間に、はっとした記憶があります。劇中で流れるとアコースティック・ギターのカッティングの存在感が大きくて、印象に強く残りました。そして、最終回のエンド・ロールでは、ONE III NOTESの「Our Place」が使われました。フルサイズとは終わり方が異なり、とても印象的でした。エンド・ロールともに、煙がふっと消えるように歌がカット・アウトします。その記憶が余韻を残す中、物語はアニメ独自のエンディングを迎えたのでした。