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TM NETWORK「CUBE」:誰もいない部屋で音が響き、色のないモノローグは虚空を漂う

2000年の終わりにTM NETWORKが発表した『Major Turn-Round』は、30分超の表題曲を軸としたプログレのアルバムです。最後に収録され、閉幕の役割を担った曲は、タイトルを「CUBE」といいます。

アルバムにはMellotronやMoog Minimoogなどの多彩なキーボード・サウンドや、Simon PhillipsやCarmaine Rojasといった手練れの演奏が詰め込まれました。そうしたなかで、ピアノやHammond B-3など音の数を絞り、簡素な印象さえ受けるのが「CUBE」のアレンジです。

バラード調で始まった曲は静謐な雰囲気のまま続きますが、途中でボーカルは急に感情を込めます。低空飛行していた音もギターを加え、上昇気流に乗って力強くなる。この盛り上がりをキープしたまま曲が終わる――かと思いきや、音は穏やかな海面のように無表情になり、モノローグを思わせる歌で幕を閉じます。

アルバムをレコーディングしていたハワイで、木根さんは「CUBE」を書きました。小室さんのリクエストに沿って最初に書いた曲はイメージに合わず、破棄して書き直したそうです。改めて木根さんがスタジオのピアノでデモを作っていると、その様子を見た小室さんは曲を気に入り、すぐにオルガンを録音しました。いつもの曲作りとは異なり、セッション感覚の共作に近い制作だったと自身のエッセイで振り返っています。

ライブで「CUBE」が演奏されたのはアルバムをリリースしたときのツアーと、2014年のツアー〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉です。2014年の演奏はアコースティック・ギターを中心にしたフォーキーなアレンジ。構成やテンポが変わり、歌詞にも若干の変化が加わって、原曲とは異なる印象が生まれました。


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