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LINKIN PARK FROM ZERO WORLD TOUR 2025
LINKIN PARKは2024年9月に新しいスタートを切り、新作の予告とともにワールド・ツアーを開始しました。精力的に世界各地を回るツアーは2025年もスケジュールが決まっています。この〈FROM ZERO WORLD TOUR 2025〉の一環で、十数年ぶりの来日公演が実現しました。二日に渡るステージのうち、僕が参加したのは初日です。20曲以上のセット・リストを組み、力強いパフォーマンスを披露してくれました。
狂熱のライブの幕を上げた曲は「Somewhere I Belong」です。再始動を宣言したライブストリーミングの構成や演出を継承・発展させたライブであり、さらにツアーが進むにつれてセット・リストやアレンジに手を加えています。以前の来日公演で演奏した曲も10年以上前なので、もはや初めて聴くようなものです。どの曲も生で聴けるだけで嬉しかったのですが、それでも「The Catalyst」や「Waiting For The End」、「What I’ve Done」や「New Divide」など、とりわけ心を揺さぶる曲がいくつもありました。一緒に口ずさみたくなるメロディ。濃密なバンド・サウンドのなかで輝く珠玉のメロディ。ライブで再認識した魅力です。
新生LINKIN PARKの嚆矢となった「The Emptiness Machine」を筆頭に、最新作『From Zero』の曲も随所で披露されました。Emily Armstrongもギターを弾きながら歌った「Over Each Other」、会場の熱気を一段階も二段階も引き上げた「Two Faced」や「Casualty」、他の曲とは雰囲気を異にした実験的なサウンドの「Overflow」、ふたりのボーカルを重ねる「Good Things Go」、力を振り絞って息の続く限りシャウトする「Heavy Is The Crown」。
二作目の『Meteora』のアウトテイクである「Lost」は、アルバム発売の20周年記念企画で公開された曲です。ライブストリームではバラード調で短く披露されましたが、今回は先があり、途中からバンドの演奏が加わる演出でした。Emilyの美声が映える曲のひとつです。また、Mike ShinodaとColin Brittainで披露した「When They Come For Me」とFort Minorの「Remember The Name」のマッシュアップでは、重厚なリズムで繰り出すラップが格好良かった。
個人的に意表を突かれた選曲は「A Place For My Head」です。前身バンドXeroのときからデモが存在し、デビュー・アルバム『Hybrid Theory』で録音した曲のひとつです。まさか生で聴けるとは思わず、咄嗟にメロディと曲名が結びつかなかったものです。同じデビュー当時の曲であっても、シンボリックな「One Step Closer」や「In The End」を聴くときとは別の感動が去来しました。
ボリューム満点のライブを「Bleed It Out」が締めくくります。鋭く高らかに鳴るギターに導かれ、勢いのあるラップとボーカルが駆け抜ける曲です。バンドも観客も残りのエネルギーを全部使い果たさんばかりに燃え上がります。興味深かったのは、途中でMikeが『From Zero』に入っている「Cut The Bridge」のフレーズを歌ったことです。ここでも別の曲を差し込むマッシュアップ的なアプローチが見られました。以前から「Numb」を筆頭に散見されますが、新しいジョイントに巡り合えたことは嬉しい。たくさんの曲を聴き、新たなアプローチを目撃し、そしてバンドの躍動する姿を目の当たりにする――大満足のライブでした。