TM NETWORK「8月の長い夜」:若くてイノセントな夏の夜を映すメロディとギターのリフ
TM NETWORKがキャリア初期に発表した「8月の長い夜」は、二枚目のアルバム『CHILDHOOD’S END』に収録されたポップスです。ダンス・ミュージックの路線にシフトしてからはライブで演奏される機会が減りました。それまでは、初めてのベスト盤『Gift for Fanks』にも選ばれたことからも、ライブで重要なポジションを占める曲だったと想像できます。
「8月の長い夜」で存在感を示す音がエレクトリック・ギターです。ロックにおけるギターとは違うものの、ザクザクと刻んで曲に重みを与えるリフであり、腹持ちのよい音を響かせます。そうした音のなかで歌詞が描くのは燃えるような熱い夜ではなく、どうすることもできない片思いの袋小路。ギターが醸すクールな格好良さと、歌詞に塗り込められた若い悩みがミスマッチを生み出します。
僕が初めて生で聴いたのは2022年のツアー〈TM NETWORK TOUR 2022 FANKS intelligence Days〉です。木根さんのアコースティック・ギターが軽快かつ優しい響きで、小室さんのMoog Oneが丸みを帯びた音で曲を包みます。最終公演では生のパーカッションも加わり、コンガやウィンドチャイムによって曲の印象がさらにソフトになりました。
特に二作目では音がシンプルなためか、歌や歌メロが際立ちます。この曲の歌メロも魅力的です。ライブで聴いたとき、ウツが歌うサビの♪Go on and on いつまでも♪がこの上なく気持ちよいことを実感しました。終盤の♪It’s alright, love / It’s alright, just now / It’s alright, my girl♪というフレーズも好きです。何度も聴きたいし、何度も口ずさみたい。