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Zedd「Automatic Yes [feat. John Mayer]」:音が声を引き立て、声が音を引き立て、共謀して聴き手に迫る

初めてZeddのアルバム『Telos』を聴いたとき、最初に強く惹かれた曲は「Automatic Yes」です。リズミカルで浮遊感に満ちたシンセサイザー、濃密な色気をまとったギター、パーカッシブで心躍るリズム。緻密に作り込まれた網目の細かい音が聴けるアレンジであり、どこをピックアップしても魅力が伝わってきます。

瞬間的なインパクトを重んじる曲とは対極に位置し、静かに身体を刺激するエレクトロニック・ミュージックです。音に侵食された僕らの身体は、中毒症状のように音の群れを求めます。

加えて、後日公開されたインストゥルメンタルで、ボーカル・トラックの陰に隠れて見過ごしていた音に出会えました。ノイジーに加工されたベースの音が印象に残ります。何度も聴いて、何度もその沼に沈む。絡みつく音が心を縛って放しません。

「Automatic Yes」の魅力は歌にもあります。ギターを弾く一方で、ボーカルを披露するのはJohn Mayerです。ソフトで包容力を見せる部分と、シャープで色気を滲ませる部分が入れ替わるようにして顔を出し、それぞれ違う表情で聴き手を魅了します。

音に乗って淀みなく流れるメロディと言葉。サウンドと一体化したボーカル・トラックと表現すべきでしょうか。音を引き立て、音に引き立てられる歌声。特に♪Yes, yes, yes, yes, I wanna♪のフレーズが絶品です。素敵な香水の香りに出会ったときのように、静かに心を奪われました。良質のヘッドフォンあるいはオーディオ機器でじっくり聴き、味わいたい。


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