見出し画像

Dua Lipa「Levitating」:光と影を往来する21世紀のディスコ・ソング

Dua Lipaのアルバム『Future Nostalgia』に「Levitating」という曲が収録されています。1970~80年代あたりの音楽を今の感性で再解釈したと思えるサウンドであり、いうなれば21世紀に迷い込んだディスコ・ソング。「聴いたことがあるかもしれない」と錯覚する人もいれば、新鮮に感じる人もいる、絶妙なところを突くアレンジではないでしょうか。

特徴的なのが曲の端々に漂う哀愁です。基本的にはノリのいいダンス・ミュージックでありながら、音もメロディも歌声もどこか冷めていて、物悲しく感じるところもある。その寂寥感の源を探ってみると、裏で響くベースの音に思い至ります。どの音からも哀愁を感じますが、そのなかでも強いのがベースです。上モノの音が盛り上がればそれだけベースの存在感が大きくなり、印象に残ります。

「Levitating」にはオリジナルの他に、別のバージョンが発表されています。DaBabyがラップを重ねたバージョンと、MadonnaMissy Elliottが加わり、The Blessed Madonna(アメリカ出身のDJ/producer)がリミックスしたバージョンです。DaBabyのワイルドなラップが飛び出すとヒップホップの色が強くなり、また、The Blessed Madonna Remixはハウス・ミュージックに改造されてメランコリックな空気が濃くなっています。

どのバージョンも、根本的な部分の印象は大きく変わりません。「リズムに身を任せて踊りたい」と「ノスタルジックな空気のなかで聴きたい」という、異なる気持ちが同居します。「Levitating」が自分の中に入ってくると、ふたつの世界が分裂して広がり、僕は両者を往来する。なんとも不思議で、おもしろい曲です。


いいなと思ったら応援しよう!