見出し画像

Hiromi The Trio Project「Delusion」:音楽世界の旅人を導くトリオのJAZZ AND ROCK

僕がプログレを聴くようになったのは2000年のことです。数年後にプログレ好きの友人から、あるジャズ・ピアニストの音楽を勧められました。プログレとジャズにどのような接点があるのか?疑問符を頭に浮かべながらアルバムを聴いてみたところ、音楽世界に難なく入ることができました。そのアーティストとは、Hiromi(上原ひろみ)です。

何枚ものアルバムを聴き、Hiromiが日本に戻ったときにはライブにも足を運びました。特に好きな曲が、Hiromi The Trio Project featuring Anthony Jackson and Simon Phillipsの名義で発表した「Delusion」です。このトリオで制作したアルバムは四枚。「Delusion」は2011年にリリースされたアルバム『VOICE』に収録されています。同じ年に東京国際フォーラムのホールAという個人的に大好きな会場で、生のプレイが聴けました。

「Delusion」は流線型を描く美しいピアノの旋律で始まります。映画が始まった瞬間に大きなスクリーンが観客を呑み込むように、ピアノの音の運びが聴く人を音楽世界に誘う。夢のような、幻のような、音が音を紡いで途切れない世界に僕らは迷い込みます。しかし途方に暮れることはありません。三人の演奏が道標となり、この世界を旅する僕らを導きます。

Hiromiのエネルギッシュなピアノ演奏にSimon Phillipsの強力なドラムが並走し、Anthony Jacksonのコントラバス・ギターが太い音で包み込む。Simon Phillipsの演奏は技巧的かつ芸術的で、それに呼応してHiromiのピアノにも力が入ります。それでいてメロディアス。三人によるダイナミックな展開、緩急に富む演奏はプログレの構成が好きな人の琴線に触れることでしょう。友人がプログレの文脈からHiromiを勧めてくれた理由がよく分かります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?