オノ・ナツメ『リストランテ・パラディーゾ』:ゆっくりと噛み締め、じっくりと味わいたい物語
オノ・ナツメの漫画『リストランテ・パラディーゾ』は、リストランテに集う人々を描く物語です。本編の『リストランテ・パラディーゾ』の他、その前後のエピソードを描いた『ジェンテ ~リストランテの人々~』が刊行されています。
舞台となるリストランテは「casetta dell’orso(カゼッタ・デッロルソ)」といい、ローマの一角に店を構えます。店名の意味は「クマの小さな家」といった感じでしょうか。
本作でキーとなるのは「cameriere(カメリエーレ)」と呼ばれる男性の給仕人です。ホールを担当するスタッフであり、料理を届け、説明し、接客するプロフェッショナルです。このリストランテには個性的なカメリエーレが顔をそろえ、客を迎えます。
題名にある「paradiso(パラディーゾ)」とは、スペルから想像できるように英語でいうところのparadiseですが、これは本作に登場するカメリエーレのひとり「クラウディオ」のファミリー・ネームです。クラウディオと、彼に惹かれた「ニコレッタ」(オーナー夫人の娘)との交流が『リストランテ・パラディーゾ』で描かれます。
カメリエーレもシェフもソムリエも老眼鏡をかけているという一風変わったリストランテを舞台に、クラウディオが抱えているものやそれとの決別、ニコレッタと母親の関係の変化などが描かれます。ゆっくりと噛み締めて味わうことで、温かく幸せな気分にさせてくれる物語です。