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TM NETWORK「TENDER IS THE NIGHT」:どこにも行けない場所で、どこにも行けない想いが漂う

TM NETWORKのアルバム『RHYTHM RED』には木根さんが書いた二曲のバラードが収録されています。そのうちの一曲が「TENDER IS THE NIGHT」です。さまざまなアーティストが演奏する同名の曲がいくつもありますが、僕は音楽ではなくF. Scott Fitzgeraldが書いた小説(邦題:夜はやさし)を思い浮かべました。

音で埋めていないからか、余白を多く感じるアレンジです。音や歌の輪郭が浮き彫りになり、それぞれの魅力に直接触れられます。美しいコントラストを描くのは、腹に響く重厚なリズムと味わい深いスライド・ギター。ロックの力強さに加え、壊れ物を手で包むような繊細さを表現します。

相反する要素が同居したロック・サウンドのなかで、ウツは叙情的なボーカルを披露します。終盤に登場する♪震える背中を 抱き寄せた思いは間違いじゃない♪という部分の歌い方が好きです。力強く「震える」と歌った後に空白が生まれ、直後の「背中を」からの歌声を引き立てます。

坂元裕二が書いた歌詞は曲の雰囲気にぴたりとはまり、情景を想像させてくれます。特に魅せられるのが♪灯かりの消えたホームで 思い出の置き場所さがしてるだけ♪という部分です。もう電車は入ってこないし、ここからどこにも行くことができない。できるのは過去を巻き戻すことだけであり、どこにも行けない気持ちが漂い続けます。


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