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Bruno Mars and Cardi B「Finesse」:身体の奥を疼かせるファンキーな音、心を刺激する流麗なメロディ

Bruno Marsの名前はよく目にするも意識的に彼の曲を聴く機会はなかったのですが、最近はプレイリストに「Finesse」を入れています。第60回グラミー賞のAlbum of the Yearを受賞した『24K Magic』に収録されている曲です。アルバムのリリースは2016年ですが、ラップの部分をCardi Bのパフォーマンスに差し替えたリミックスが2018年にシングルとしてリリースされ、ミュージック・ビデオも制作されました。

イントロから響くスネアのタイトな音。身体の奥を疼かせるファンキーなサウンドが、踊りたいというプリミティブな気持ちを刺激します。ファンクとヒップ・ホップのミクスチャーという感じでしょうか。リズムに身を任せながら、さまざまな音の交錯を楽しみたい曲です。

他の魅力としては歌メロの良さが挙げられます。特にメロディの「流れ」が好きですね。例えば、♪Blame it on my confidence♪ における “confidence” というひとつの単語の中で音が変化し、その移ろいがとても心地好い。また、曲名を含むフレーズ ♪(We) out here drippin’ in finesse♪ の繰り返しも耳に残ります。音が身体を刺激する一方で、メロディの響きが心を刺激して、踊りたくなる気持ちに拍車をかけます。

「Finesse -Remix-」のミュージック・ビデオには、1980年代を思わせる要素が随所に組み込まれています。初めてビデオを観たとき、Bruno Marsの顔を知らず、Cardi Bに至っては名前すら知らなかった僕は、本当に1980年代に流行した曲だと思い込みました。

ポップかつチープなデザインの衣装やセット、「4:3」という画面のアスペクト比。振り付けもどこか懐かしい。1秒あたりのフレーム数も当時に近づけているため、現在の映像に慣れているとパフォーマンスの動きが少し鈍く感じられます。いくつかのレトロなパーツが組み合わさって、30年ほど前の映像を観ている感覚を味わえます。

あるとき何気なくテレビのチャンネルを切り換えると、このビデオが流れていました。ときどき放送される「1980年代の洋楽特集」の番組で、この曲も当時のヒット曲なのかなと思いながら観ていましたが、後でBillboardの最新チャートだと知ることになります。

曲が終わる直前に表示されたクレジットを目にしたとき、思わず画面に釘づけになりました。グラミー賞を獲得したBruno Marsをこのような形で知るとは思いもよらず、さらにいえばCardi Bは2018年の年間チャートで何度も名前が出てくる有名なラッパーです。2018年も終わりが見えてきた頃に二人を知るなんて、僕のアンテナは一体何をしていたのか。

まあ、常に新しい音楽をサーチして検出するアンテナは持ち合わせていませんが、それでも何かを契機として音楽を知り、アーティストを知ることができれば、そこから新しい道が生まれます。それが新作でなかったとしても、知ったその時が自分にとっての旬なのだと思いながら、偶然に出会えた「新しい」音楽とそこから始まる道のりを楽しんでいます。知らなかったからこそ、その音楽を知って聴き込むときの喜びや興奮は大きいものです。


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