FENCE OF DEFENSE「Spiral Rondeau」:円を描き、螺旋を描き、渦巻く音の世界に落ちる
終わらない螺旋を描く高密度のロック・サウンド。FENCE OF DEFENSEの「Spiral Rondeau」は、2008年にリリースしたアルバム『円游律』の収録曲です。個人的には1970年代半ば、プログレの盛期から次の時代に移り始めた時期の雰囲気(例えばKing Crimsonの「Red」のようなギター・ロック)を感じました。初めて聴いたのはF.O.Dの三人がサポートしたウツ(宇都宮隆)のライブ。格好良さに震えました。
硬くて鋭い音が響き、濃密な音の空間が立ち上がります。あらゆる方向から音が聞こえ、音に包まれていると思うほどに高密度なアンサンブル。鳴り続ける音は頻繁に表情を変え、角度を変えて、聴く人を翻弄します。曲を牽引するのは、北島健二のギターが奏でるメロディです。僕らを魅了するフレーズを冒頭から惜しみなく披露します。心を熱くさせるフレーズを繰り返したかと思えば、突き放すようなクールさを感じる瞬間もある。息つく間もなく変わり続け、その度に新しい景色が目の前に広がります。
目眩く音の渦に呑み込まれ、F.O.Dの音楽世界に落ちていきます。世界の輪郭を描くのはドラムとベースによる重心の低いリズムです。山田亘が叩く音は、ひとつひとつに厚みがあってパワフルで身体の芯に響き、さらに音の間隔が狭くて細密さも感じます。特に、ハイハットとともにバラエティ豊かな表現を見せるスネアが好きです。そして、西村麻聡が弾くベースは太くてアグレッシブ、ときに踊るように滑らかで扇情的。チョッパーを織り交ぜ、前に出て存在感を示す場面も見られ、曲を支えながらも主役のひとりとして屹立します。リズムの魅力に堕ちていくのは止められません。