GABALL『REPRESENT_01』:視覚と聴覚を支配するトランスと映像のオーバーラップ
1990年代後半のTKプロデュース時代、数々のチャートアクションとは別に、小室哲哉はテクノやハウスなどエレクトロニック・ミュージックのアプローチを続けてきました。やがて小室さんの関心はトランスに向かい、到達したのがtatsumakiというDJ DRAGONとのプロジェクトです。そこに映像作家の原田大三郎が加わり、トランスと映像をミックスさせたプロジェクト「GABALL(ガボール)」が誕生しました。GABALLとして2001年9月にリリースしたのが、アルバム『REPRESENT_01』です。
トランスといっても表現は多彩で、一枚のなかに多様な世界が広がります。強烈なスネアとキックの連打にピアノを効かせて疾走する「GOING OUT THING」から、サンプリング・ボイスのなかで高速リズムがフェード・インする「OUT OF PERSPECTIVE」につなぐ展開。ループを再生産する「ARIA」の中毒性。ガムランの要素を含む「KUTA MOON」や、穏やかな「WIND OF YOU」でのチルアウト。さながらシンセサイザー・サウンドの博覧会です。硬質なエレクトロニック・サウンドが聴き手を嵐のように襲い、揺籃のように包みます。
スクリーンに広がるのは、シュールでサイケデリック、それでいて規則性の網が張り巡らされた原田大三郎の映像世界。観る人を独自の世界に引きずり込みます。乱舞するタイポグラフィー、高速で切り換わる老若男女のポートレート、ピクトグラムの大群。音に匹敵するインパクトを誇る映像表現です。
野外レイヴと思われる映像に重なる曲は「CHANNEL B.P.M.」です。同じフレーズを繰り返しながら少しずつ見せる変化が高揚感を生みます。音が音を呼ぶスピード感、ダイナミックな起伏、魅力的なメロディの連鎖。最初の一音から最後の音が消えるまで、エレクトロニック・ミュージックの気持ち良さを体現しています。