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女川駅と女川湾とウミネコ
仙台を出発して二時間ほど電車に乗り、最後のトンネルを抜けると、TVのニュースやWebの記事で見た風景が目の前に広がります。新しくつくられたプラットフォーム、駅舎、展望台。2015年3月21日に再出発した、新たな女川駅に降り立ちます。改札を抜け、駅前の広場に出ると、女川湾が目に飛び込んできます。
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四年が経ち、新たな街づくりのプランに基づいて作業が進んでいます。官民一体となって進む復興、と言われています。その経緯はメディアを通して知るとして、自分ができるのは「見る」ことなのだと思います。だから、こうして足を運んでみました。駅を撮り、広場を撮り、港を撮る。自分の目で、ファインダーを通して、見る。
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あちこちで工事が進んでいます。連休ということもあってか、のんびりとした雰囲気を感じました。駅や駅前広場は整備されていますが、道を隔てて港に近いほうは砂利が敷き詰められている段階です。いずれ、ここに商業施設や公園ができるそうな。
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ぐるりと迂回して海のそばまで足を伸ばします。港には船が停泊しています。強めの潮風に吹かれながら海に向かってシャッターを切っていると、ファインダーの中をウミネコが次から次へと横切る。カメラから目を外して空を見上げると、気持ち良さそうに舞うウミネコが見えます。
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新たな女川駅のモチーフは翼を広げたウミネコです。海とともに、そしてウミネコとともに生きることを表わすシンボルです。シンボルには人々をつなぐ役割があります。地元の人々どうしをつなぎ、その土地と外から来る人をつなぐ。人々を乗せた電車が停まる駅。それは、とてもポジティブなシンボルではないでしょうか。
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駅から少し離れたところにある高台から、そして駅の展望台から女川湾を一望します。女川に特別な縁があるわけでもなく、ただ見るという理由だけで足を運んだのは、浅生鴨さんがポリタスに寄せた「いつか3月に」という文章に触発されたからですね。
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「震災」や「復興」という言葉を見るたびに気持ちがざらざらして落ち着かなかったのですが、あまり肩に力を入れなくてもいいんだな、と思えば足取りも軽くなります。とりあえず行ってみればいい。これからもそんな気持ちで歩いてみようと思います。
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ウミネコは飛んでいく。
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