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LINKIN PARK『One More Light Live』:2017年という特別な一年が凝縮されたライブ・アルバム

LINKIN PARKのライブ・アルバム『One More Light Live』は、2017年のワールド・ツアーの口火を切ったヨーロッパ公演を収録しています。アムステルダムでの録音を中心として、ベルリン、ロンドン、クラクフなどの様子も収められています。

セット・リストはスタジオ・アルバム『One More Light』の曲を中心に組み立てられました。『One More Light Live』のブックレットに書かれた解説を読むと、アルバムを録音する際に、Chester BenningtonとMike Shinodaは専門家によるボーカルの指導を初めて受けたとのことです。それだけ歌に乗せて届けたいものがあったということでしょうか。

『One More Light』の最後に収録された「Sharp Edges」も、このツアーで演奏されました。ライブではBrad Delsonが弾くアコースティック・ギターの音に支えられ、Chesterもギターを弾きながら歌います。演奏の後に「ギターを弾きながら歌うのは大変だね」と笑いながら語るMCも収録されています。

新作以外の曲も盛り込まれています。「In The End」「New Divide」、Jay-Zの「Encore」を含んだ「Numb」などを聴いていると、ライブで味わえる心地よさやスリリングさを追体験できる瞬間が数多く訪れます。特に「What I’ve Done」「Leave Out All The Rest」では味わい深いバンド・アンサンブルを聴けて、とても好きです。

また、初期の代表曲のひとつ「Crawling」は象徴的だった激しいサウンドやシャウトではなく、美しいバラードとして披露されました。Mikeが弾くピアノの音を背景に、Chesterが歌い上げます。本作を通して聴くと目の前に広がるのは、彼の歌声がもたらす静謐な響きと、ハードな曲が生み出す会場の熱気が描くコントラスト。

本作のジャケットに写るのは、観客に向けて手を伸ばすChester。その姿を目にしたとき、『One More Light』を象徴するアートワークのひとつ「それぞれの手首をつかんで円を描く六本の腕」を思い浮かべました。『One More Light』の裏に印刷されており、また本作のCDをケースから外すと目に飛び込んできます。

六人を結ぶ関係の強さはいうまでもなく、バンドとファンの関係も推して知るべしです。ジャケットに写るChesterの姿は「ライブという時間と場所でバンドが観客とつながることの意味」を僕らに改めて考えさせました。音楽におけるシンプルな関係性をストレートに表わした写真です。

多くのファンがそれぞれの思いを抱えて聴いたことと思います。感傷的になるのはやむを得ないのかもしれませんが、それを焼き尽くすような熱い演奏に気持ちが昂ぶるのもまた事実です。『One More Light Live』には、六人の音楽が刻み込まれているのと同時に、2017年という特別な一年が凝縮されています。


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