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Takashi Utsunomiya「道 ~walk with you~」:大人の色気を醸すメロディ・ライン、身体に染みて心に沁みるハーモニー

2003年に宇都宮隆がシングル「道 ~walk with you~」を発表しました。同年にリリースしたアルバム『wantok』のリード・シングルです。僕はアルバムのwantok versionだけを聴いていたのですが、ストリーミングで聴けるようになったのでシングル・ミックスも聴いてみました。

シングルとアルバムで印象が変わる曲です。吉田建がアレンジしたシングルでは、重厚なリズムを土台に、存在感のある音が層を成してドラマチックに響きます。誘うような艶を感じるベース、哀愁を振り撒くギターが特に好きです。対して、wantok versionのアレンジャーは松本良喜。音と歌が馴染むように調整されて、日常をスケッチするような穏やかな空気を感じます。曲を貫くパーカッションの音が心地よい。

従来のウツにはないR&Bの色を感じたのは、ソングライティングを担った米倉利紀の影響でしょうか。アレンジの効果も小さくはありませんがそれ以上に、メロディ・ラインがまとう成熟した色気がR&Bらしさを醸します。たとえるならモノトーンと厳選した差し色のコーディネート。分かりやすい色の重ね塗りを排し、引き算の極みで生まれる美しさがあります。

美麗なメロディに引き寄せられたのか、ウツのボーカルは美しい流線型を描きます。シンガー宇都宮隆として新しい扉を開いた――そう表現しても過言ではないのかもしれません。しかしながら、歌声は丸みを帯びる一方でシャープな印象を与えることも忘れない。気持ちを込めすぎて感情に溺れる歌になりそうなのに、一線を引き、クールに振る舞います。このバランス感覚こそウツらしいボーカル表現です。


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