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睦月周平・滝澤俊輔・eba『君のことが大大大大大好きな100人の彼女 オリジナルサウンドトラック』:ギャグとラブとシリアスを支え彩り加速させる音楽

アニメ『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』 は2023年10~12月に放送され、2025年1月から第二期が始まります。新キャラクターの情報やプロモーション用の新しい映像が次々と投下されるなか、第一期の再放送が終わった2024年12月にサウンドトラック(vol. 1)の配信がスタートしました。第一期の劇伴に加え、オープニングテーマ、エンディングテーマ、そして11話限定のエンディングテーマが収録されています。劇伴を担当した三人(睦月周平滝澤俊輔eba)は、いずれもアニメの劇伴を多く手掛けるソングライターであり、声優のアルバムやライブにも携わるミュージシャンです。引き続き第二期の音楽を制作しているため、vol. 2のリリースも大いに期待されます。

サウンドトラックの魅力はメロディを耳にした瞬間にアニメの場面が思い浮かび、物語における音楽の力を再認識できる点ではないでしょうか。シーンを彩り、支え、楽しくまたは美しく盛り上げた音楽がトリガーとなって、いくつもの記憶が蘇ります。ストーリー、アニメーション、ボイスがあってこその劇伴ですが、それらは音楽があるから輝くこともまた事実。ときに音楽がシーンを引っ張り、一方で縁の下の力持ちとして他の要素を目一杯引き立てます。しかし、音楽においても油断を許してくれないのが100カノ。シリアスな場面を彩る音楽に胸を打たれたかと思えば、急転直下のギャグ展開に見舞われる――これも音楽を利用したギャップの演出といえます。美しい旋律に包まれたクライマックスと直後のギャグの落差が激しい第3話の終盤は個人的に好きなポイントです。

一方で、インストゥルメンタルのアルバムとして聴く楽しみもあります。特に好きなのがファンクやフュージョン系のアレンジが施された曲です。例えば、ツンデレキャラ唐音のテーマ曲や終盤のナレーションで流れる曲は、ギター、ホーン、パーカッションが効いていることもあり、ノリが良くて好きです。そして、第9話で使われた「運命のブーケトス」という曲は当初、ギャグとラブコメとなぜかバトルの要素を詰め込んだ展開のなかでアップテンポの曲が聞こえるという認識でした。改めて聴くと、ファンキーなピアノやギターのリフ、スピード感あふれるスネアの格好良さに魅せられます。このジェットコースター・サウンドを3分も楽しめることが嬉しい。

第一期の終了後も続くWebラジオ「100カノRADIO」の第18回に、滝澤俊輔が登場して劇伴の話を聞かせてくれました。ほとんどの曲は個々に書きましたが、メインとなる曲は三人で作ることで統一感を出すという意図のもと、主人公のテーマ曲「愛城恋太郎という男」が誕生します。バラードのようにテンポが落ちても美しく聞こえる旋律が欲しいと考え、滝澤俊輔が最初のアイディアを提示して曲づくりが始まりました。また、自身の作曲で特に思い入れがある曲として挙げたのが「恋と希望」です。決意を示すときなど、前向きな場面で流れると気持ちが上がる曲を作りたいという気持ちから生まれました。コミカルな要素が多い物語において、感動的なシーンや何かを成し遂げようとするところを盛り上げる音楽は、もっと感動が大きくなり、コミカルな部分もおもしろくなると語っています。作品の魅力を膨らませる音楽の力を感じる曲です。


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