にがくてあまい レシピ68 ドライカレーと豆苗とザーサイの胡麻サラダ

『にがくてあまい』の第68話「ドライカレーと豆苗とザーサイの胡麻サラダ」が公開されています。冬のあたりから続いていた一連の「ばばっち」の話、作者の小林ユミヲさんが言うところの「ばばぞの劇場」は、今回で幕を下ろすみたいですね。「ばばっち」のまとまった話は以前もあったので、こんかいは差し詰め第2部というところでしょうか。10月に刊行される11巻にまるごと収録されます。彼と彼の旧友(ハンドボール部のOBたち)は、それだけで話が書けるくらい魅力があるので、第3部を描いてもらいたいなと思います。

http://comic.mag-garden.co.jp/eden/58.html

「ばばっち」はずっと避けていたハンドボールに、物語の展開とともに少しずつ近づくことができ、そして今回はついにプレイします。インターハイで三連覇した最高の思い出と、心に傷を負った最悪の出来事が重なっている高校時代。その時代にともに汗を流したハンドボール部の仲間と再会し、浜辺でのビーチハンドに参加します。高校時代のトラウマからボールをまっすぐ投げられなくなっている彼は、久しぶりのゲームでもやはりコントロールできません。けれども、仲間とともに走り、跳び、投げる姿からは、仲間と一緒にプレイできる喜び、そして、やはり捨てきれないハンドボールへの愛があふれます。

小林ユミヲさんが描くストーリーは実に巧みで、しかもいやらしくない。今回も、ひとひねりした展開に舌を巻きました。「おっ、ここで来るのか? ここにクライマックスを持ってくるのか?」と思わせておいて、肩透かしを食らわせる。予測と期待が外れたまま読み進めると、不意にクライマックスが訪れます。一度上げて、下げておいて、一気に上げる。見開きに描かれたシーンは、ずっと彼の物語を追走してきた多くの読者の心に、ストレートに突き刺さったことでしょう。もちろん僕も例外ではありません。ぐっときましたよ…!

「ばばっち」の過去と現在にフォーカスした物語は、ひとまず終了です。次回からは新たな展開が始まるとのことですが、今回、随所にこの先の展開を予見させるようなコマがありました。『にがくてあまい』を読んでいていつも思うのは、誰かは別の誰かに影響を与えると同時に与えられている、ということです。与え合う、というシンプルなことを繰り返している物語ですね。彼はいろいろ与えられて次のフェイズに足を踏み入れることができました。今度は彼が与える番ですね。積極的に絡む場面が描かれるとは限りませんが、何かしらの形で「渚」や「マキ」に影響を与える姿が描かれるのではないか、と。

オリジナル:http://inthecube.exblog.jp/24776991/

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