Martin Garrix and Sem Vox「Gravity [feat. Jaimes]」:音は美しく重なり交わり、心は重力から解放される
身体に潜り込んだ音が血液のように巡るシンセサイザー・ミュージック。Martin GarrixとSem Voxの「Gravity」が2024年10月にリリースされました。重なり交わる美しい音の群れが目の前に広がる曲です。Martin Garrixのサウンドは綺麗なものが多いという印象を僕は持っていて、それはこの曲にも当てはまります。
ボーカル表現の巧みさとシンセサイザー・サウンドの気持ちよさを堪能できる構成です。Jaimesの歌は叙情的で、まとわりつくような湿っぽさや野性味を感じます。対して、ストリングス系を軸にしたエレクトロニック・サウンドは乾いていて、涼し気で心地よい。最初はボーカルが曲を牽引し、やがてシンセサイザーにバトンが渡るとリフの存在感が大きくなります。しかしそれでは終わりません。さらに出力を上げてシンセサイザーの音が放出され、聴き手に生まれる解放感は一際大きくなります。
ボーカル・トラック入りと同時にInstrumental Mixも配信されました。音に集中して「Gravity」の世界を体験し、重力から解放されるエレクトロニック・サウンドを味わいます。美術館の片隅で、白い部屋の映像が流れる暗い部屋で「Gravity」がエンドレスで音を奏でる――Instrumental Mixを聴いて思い浮かんだシーンです。インスタレーション作品を構成するコンポーネントとして成立しそうに思えました。部屋に足を踏み入れた鑑賞者を外から切り離し、異世界に連れ込むサウンド。
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