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The Police「Synchronicity I」:ダイナミックに疾駆するロックが聴き手を貫く

2022年の頭に、1970~80年代のロックを集めたプレイリストを作りました。もともと好きだったプログレやLed Zeppelinを選んでいると、ふと1980年代のYesに興味が湧き、その流れで聴いてみたくなったバンドがThe Policeです。代表作『Synchronicity』を聴き、ふたつある表題曲のうち、「Synchronicity I」がとても良くて、躊躇せずプレイリストに組み入れました。リアルタイムで聴けた世代ではないこともありThe Policeを聴く機会はなかったのですが、ついに自分にとっての旬、自分のなかで聴くべきタイミングが訪れます。

「Synchronicity I」の魅力は、ドラム、ベース、ギター、キーボード、そしてボーカルといった、すべてのパートがひとつになって生み出す疾走感です。あえて緩急をつけずに速度を維持する演奏が心地よく、身体を刺激します。アトランタでのライブ音源を聴くと、ライブの熱気も相まって、スタジオ録音よりもテンポアップしていると思えます。最後にStingが観客にジャンプするよう煽るところはライブらしくて最高です。

バンドの名前が記憶に残る出来事があったのは2012年です。小室さんが『Keyboard Magazine』(2012 SUMMER No. 377)で、TM NETWORKのシングル「I am」のアレンジで意識したのは『Synchronicity』のスピード感だと述べました。アルバム全体の印象なのか、個別の曲なのかは分かりませんが、アルバムで最もスピード感のある曲といえば「Synchronicity I」でしょう。淀みなく駆け抜ける感じは「I am」に通じるものがあります。

それから10年。僕のなかで「Synchronicity I」と「I am」がリンクしており、片方を聴くともう片方も思い浮かべるというシンク状態によくなります。変な聴き方かもしれませんが、そのミッシング・リンクが曲に奥行きを与えていると思っています。その後、Swedish House MafiaとStingのコラボレーションにも出会いました。曲やアーティストがコネクトしていくのは、ストリーミング・サービスが充実した時代の音楽のおもしろさです。音楽はネットワークを形成し、新旧が交錯し、「自分にとって旬」なときに新しい音楽体験を与えてくれます。


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