Gacharic Spin「Identity」:音に身を委ねて聴く、メロディに心を預けて聴く
泣きの歌メロと熱いロック・サウンドがぶつかり生み出す輝きは、美しい光を残す火花を思わせる。そうしたイメージを抱く曲がGacharic Spinにはいくつかあります。そのひとつがデビュー・アルバム『MUSIC BATTLER』に収録された「Identity」です。他には「TAMASHII」や「シナリオ」といった曲が僕の中では同じラインにあります。
胸を締めつけるメロディの美しさはサビで極まります。サビに入ると、♪誰だって正解不正解を知って歩いている訳じゃない♪で助走し、直後の♪抜け出したくて見つけたくて♪で一気に跳躍します。熱気に満ちているのに、哀愁や切なさが滲むメロディ。矛盾するようですが、そうした複雑な模様が曲の魅力を高めています。
はな(当時はドラムス兼ボーカル)の歌声にエッジの効いた、クールな美しさを感じます。クールに響く声質だからこそ、熱を帯びたときの推進力がより大きくなるのではないでしょうか。歌声を媒介にして、疾走感と重厚感を兼ね備えたロック・サウンドと美しいメロディが混ざり合います。
リズムにも魅力が詰まっています。乾いた音を刻むスネアが曲にスピード感を与えます。リズムは追い風のように歌に力を与え、歌はリズムに乗って疾駆する。歌とリズムは互いを支え、互いの魅力を引き出し、高め合います。音に身を委ねて聴く、メロディに心を預けて聴く。交差する魅力が聴き手を虜にします。