20221212“Ride on Waves”@太陽と虎
あたし、出会ったときから泳ぎ方なんて知らなくて、息継ぎなんてもちろんわからないし、目の前の波打ち際を必死に追いかけて、結局どこにも辿り着けなかった。ゴールなんてないもん。盲目、というよりかは窒息、溺死。ただでさえカナヅチなのに、見よう見まねの巻き足でギリ立ってて、それが突然終了のベルがなって、元々ギリ立ってたくらいだから、砂浜まで戻りたくても、なかなか帰れなかった。海は、あたしが思っているより深かった。溺れていることにも気が付かずに。
その海は、綺麗なものだった。真新しさより、懐かしさを感じた。あたしが胎児なら、羊水ってこんな感じだったかも、と思った。水中でも、苦しくはなかった。あのとき、初めて出会ったときも、この場所で、全然知らない曲ばかりなのに、心臓がバクバクして、ちょっと息が詰まりそうになって、ただしゃがれ声が鼓膜にこびりついた。それは、今まで生きてきて聴いた全ての音楽がかき消されるほどの、忘れられない声。あのときあたし、あなたが泣いてるのかと思ったの。その、産まれて初めて聴いた声、産まれて初めて聴いた曲だ、みたいな気持ちになったのが、7年前と同じで、まさにデジャヴだった。
音のことなんて何もわからない。作曲のことなんてもっとわからない。いつもずっと追いかけてきた姿が、また太陽と虎のちょっと高いステージの上で観れた。もしかして、もっともっと、肉眼で見えないほど高くて遠いステージで観れるかもしれない、と期待してしまった。ふりだしじゃなくて、続編。ああもう、またすっかりあなたたちの奴隷だ。共犯には一生なれない。なんかもっと困らせてほしいし、笑わせてほしいし、がっかりさせて、切なくさせて、一生溺れさせてほしい。月曜日にやるなんて、どこまでも皮肉だね。
波に乗ったと思い込まされて、どこまでも泳がされていたい。また始めてくれて、今日まで大切に温めてくれて、一生かっこいいままだと確信させてくれて、ありがとう。あたし泳げないから、浮き輪でチートで追いかけるね。