ハンドルを握れば (8月)
教習所までの道のりは、無料送迎バスで片道30分くらいだった。
移動の30分というのは短いようであり長く、過ごし方ひとつで熱中することも退屈することもできる。
ただ、バスの場合はまた少し異なる。
なにか映画を見ようとしても、文章を書こうと思っても、迫ってくる身体の気持ち悪さにより思ったように事が進まず…
結局、できることといえば生活圏内から少しだけはみ出した地域の生活を眺めながらひたすら音楽かラジオを聞くだけだった。
しかし、
教習所に向かうまでと、教習所から帰るまでのバスの中のわたしはすこしだけ違っている。
学科教習を受けた帰りは、案内標識を見つけるたびにしっかり従う車たちに感心し、技能教習を受けた帰り道は、狭い交差点をダイナミックに左折するバスの動きにさえ感動を覚えた。
現在のわたしの家に車はなく、物心ついてから家族で車に乗った記憶はタクシーくらいのものなので車自体が自らの日常から遠いところにあった。
事故を模した映像にはこころから怯えたし、交通事故がそこまで起こっていない世の中なのはこうしてきちんと授業をするからかと妙に納得した。
誰かの運転に乗るのでは分からないことがいくつもあった。
日々安全運転を心がけてくれているドライバーたち、ありがとう。公共交通機関の運転手さんたち、ストライキせずに出勤してくれてありがとうございます…。
まだまだ知らないことはある。
もう少し運転に慣れたら、煽り運転をする外道どもの気持ちも少しは理解できるのだろうか。多分できない。
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