見出し画像

新保守主義とは何か④21世紀、ブッシュ・ドクトリン

こんにちは。いつもお越しくださる方も、初めての方もご訪問ありがとうございます。

今回は新保守主義の英語版Wikipediaの翻訳をします。翻訳のプロではありませんので、誤訳などがあるかもしれませんが、大目に見てください。翻訳はDeepLやGoogle翻訳などを活用しています。

学問・思想・宗教などについて触れていても、私自身がそれらを正しいと考えているわけではありません。

新保守主義とは何か

歴史③

2000年代

ジョージ・W・ブッシュ政権

ブッシュ陣営と初期のブッシュ政権は、新保守主義を強く支持するようなものではなかった。ブッシュは、大統領候補として、国造り(訳注:国家の力を利用して国民的アイデンティティを構築すること)に反対し、抑制的な外交政策を主張していた。また、新保守主義者の中には、ブッシュ政権がイスラエルに対して十分な支援をしていないと批判し、ブッシュの外交政策はクリントン大統領と大差ないとの意見もあった。

2001年9月11日の同時多発テロの直後から、ブッシュの政策は大きく変わった。

2002年1月のブッシュの一般教書演説では、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸を構成する」「重大かつ増大する危険をもたらす」国家として名指しした。ブッシュは、先制攻撃の可能性を示唆した。「私は、危険なことが起こるのを待つつもりはない。危険がどんどん近づいてくるのに、傍観するつもりはない。世界で最も危険な政権が、世界で最も破壊的な兵器で我々を脅かすことを、アメリカ合衆国は許さないだろう」。

国防や国家安全保障に携わる主要な人物の中には、アメリカにイラク戦争に踏み切らせたのは新保守主義の影響だと考えている人がおり、かなり批判的であった。

ブッシュ政権が新保守主義的な思想を取り入れたことに批判的な、ネブラスカ州選出の元米国上院議員で国防長官のチャック・ヘーゲル氏は、著書『アメリカ:私たちの次章』の中で次のように書いている。

では、なぜ我々はイラクに侵攻したのか。私は、いわゆる新保守主義的なイデオロギーの勝利と、ブッシュ政権の傲慢さと無能さが、アメリカをこの選択した戦争に引きずり込んだのだと考えている。国家安全保障や外交政策の経験が乏しく、アメリカ国内での史上最悪のテロ攻撃を受け、国を率いることの重責を痛感していた大統領に対して、彼らは明らかに説得力のある説明をしたのである。

チャック・ヘーゲル『アメリカ:私たちの次章』
2010年11月、ブッシュ元米大統領(こちらは2002年のキャンプ・デービッドでホスニ・ムバラク元エジプト大統領と)は、ムバラクがイラク戦争前にイラクが大量破壊兵器を保有しているという政権の立場を支持したが、「アラブの街角を扇動する」のを恐れて非公開にしていたと回想録『決断のとき』に記している。

ブッシュ・ドクトリン

ブッシュ・ドクトリンの先制攻撃は、2002年9月20日に発表された国家安全保障会議(NSC)のテキスト「アメリカの国家安全保障戦略」の中で明示された。「敵の攻撃の時期や場所について不確実性が残っていても、脅威が解き放たれる前に抑止し、防御しなければならない。必要であれば、アメリカは先制的に行動する」。

2002年の国家安全保障戦略で「予防的」という言葉を使わず、「先制的」という言葉を使ったのは、国際法上、憲章法、慣習法ともに予防攻撃の違法性が広く認識されていることを見越したものであったといえるだろう。この文脈では、国内政策と外交政策における不可侵原則をめぐる論争が、特に先制攻撃のドクトリンを考えると、新保守主義におけるリバタリアン的教訓の影響に関する研究を妨げたり促進したりすることになる。

政策アナリストは、2002年の国家安全保障会議の文書で述べられたブッシュ・ドクトリンが、第一次ブッシュ政権時代の1992年にポール・ウォルフォウィッツが書いて物議を醸した国防計画ガイダンスの草稿で示された提言と強い類似性を持っていることを指摘した。

アメリカ合衆国25代国防副長官ポール・ウォルフォウィッツ(ユダヤ人)

このブッシュ・ドクトリンは、多くの新保守主義者から賞賛をもって迎えられた。ブッシュ・ドクトリンに賛成かどうかという質問に対して、マックス・ブートは賛成だと答え、「マンハッタンで次のテロ攻撃を黙って待つことはできないと言うブッシュは、まさに正しいことを言っていると思う。私たちは、海外のテロリストを止めに行かなければならない。世界の警察官としての役割を果たさなければならない。しかし、私はさらに踏み込むべきだとも主張する。」と述べている。ブッシュ・ドクトリンの意義について、新保守主義者の作家ビル・クリストルはこう主張している。「世界は混乱している。そして、その対処に本腰を入れたことは、ブッシュの功績だと思う。危険なのは、私たちがやりすぎることではない。危険なのは、私たちがあまりにも何もしないことだ」。

外交問題評議会のメンバー、マックス・ブート(ユダヤ人)
現在『ブルワーク』の編集者であるネオコンのビル・クリストル(ユダヤ人)
ペンタゴンでドナルド・ラムズフェルド国防長官らと会談するブッシュ大統領
(2006年8月14日)

2008年大統領選挙とその余波

2008年アメリカ大統領選挙の共和党候補者であったジョン・マケインは、「新保守主義者と最も明確に結びついている問題」である第二次イラク戦争の継続を支持した。ニューヨーク・タイムズはさらに、彼の外交観は、新保守主義の要素と、現実主義としても知られる保守派の主要な対抗意見であるプラグマティズムの要素を併せ持つものだと報じた。

2008年3月5日、マケイン氏が共和党の大統領候補となった後の、ホワイトハウスでのブッシュ大統領とジョン・マケイン上院議員。

マケインのアドバイザーには、ロバート・ケーガンマックス・ブートなど、著名な新保守主義者が何人もいる。「ジョン・マケインの魂をめぐる戦いが起きているというのは、あまりに強い表現かもしれない」と、プラグマティスト陣営に属するローレンス・イーグルバーガーは言う。しかし彼は、「極右の友人の多くが、彼を倒すことはできないから、これらの重要問題でできる限り彼を説得してすり寄ろう、と今決断したことに疑いの余地はない」と述べている。

2008年のジョン・マケインの外交政策顧問、2011年、ヒラリー・クリントン国務次官の下の外交政策委員会、現在のバイデン政権、国務次官ヴィクトリア・ヌーランドの夫、ロバート・ケーガン(ユダヤ人)
ジョージ・H・W・ブッシュ政権の国務長官ローレンス・イーグルバーガー

バラク・オバマは、2008年の民主党指名選挙で、対立候補、特にヒラリー・クリントンがもともとブッシュのイラク戦争政策を支持していたことを攻撃することによって、選挙戦を展開した。オバマは、ロバート・ゲイツ(ブッシュの国防長官)、デヴィッド・ペトレイアス(ブッシュのイラク駐留総司令官)などブッシュ政権時代の著名な軍関係者の選出を維持した。

第44代大統領バラク・オバマ
ブッシュおよびオバマ政権の国防長官ロバート・ゲイツ
国際治安遅延部隊司令官・アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官
デヴィッド・ペトレイアス

2010年代と2020年代

2010年までに米軍はイラクでの戦闘から訓練の役割に切り替わり、2011年に撤退した。新保守主義者はオバマ大統領のホワイトハウスではほとんど影響力を持たず、共和党でもティーパーティー運動の台頭以降、新保守主義者は大きな影響力を失っている。

2016年にドナルド・トランプの共和党大統領候補に反対して行われたストップ・トランプ運動では、介入主義的な外交政策への批判と、彼を「権威主義的」な人物と見なすことから、複数の新保守主義者が大きな役割を担った。トランプ氏が就任してからは、エリオット・エイブラムスなど、新保守主義者が政権に参加するようになった。新保守主義者は、トランプ政権のイランやベネズエラに対するタカ派的なアプローチを支持する一方で、政権のシリアからの撤兵や北朝鮮への外交支援には反対している。新保守主義者はトランプ政権で活躍したが、新興のポピュリスト国民保守主義者の運動に徐々に追い越され、地政学的な雰囲気の変化への適応に苦心していると観察されている。2020年のアメリカ大統領選挙でトランプを、2020年のアメリカ上院選挙で共和党上院議員候補を倒すことを目的に、共和党の現役・元職員からなる政治活動委員会「リンカーン・プロジェクト」は、共和党をブッシュ時代の思想に戻そうとする新保守主義の活動家が中心となって作られていると言われている。トランプは再選されず、共和党は上院で過半数を維持できなかったが、2020年アメリカ下院選挙での意外な成功や内部対立により、新保守主義の強さがあらためて問われるようになった。

トランプ政権でイランのアメリカ特別代表となったエリオット・エイブラムス
トランプ再選を阻止すべく共和党員によって設立された政治行動委員会リンカーン・プロジェクト

感想

ネオコンというべきなのか、イスラエル・ロビーというべきなのか、イスラエルとの関係性、ユダヤコミュニティとの関係性を非常に重視し、ブッシュ政権時のイラク戦争で要職を担当した彼ら新保守主義者は、民主党のオバマ政権との関係性を保っていました。

繰り返しになりますが、新保守主義は旧来の保守主義とは大きくその考え方が異なり、そもそもがユダヤ人ロビー運動家からの支援を受けた雑誌『コメンタリー』を出発点としています。彼らが最も重視するのはアメリカのユダヤ人コミュニティ、イスラエルをどのように持続・維持・成長させていくかというものであり、アメリカの建国以来の保守思想とは本来的に関係がありません。

かつてトロツキストだった新保守主義者は常に形を変容させながら、巧みにユダヤ人コミュニティ、イスラエルの生存戦略のために活動していくことでしょう。

国際社会のためのものであるという名目の元で、日本の生存戦略とは無関係に彼らの戦略が構築されているという点を今一度よく考える必要があるのではないかと思います。

関連記事

最後に

最後までお付き合いいただきありがとうございました。もし記事を読んで面白かったなと思った方はスキをクリックしていただけますと励みになります。

今度も引き続き読んでみたいなと感じましたらフォローも是非お願いします。何かご感想・ご要望などありましたら気軽にコメントお願いいたします。

Twitterの方も興味がありましたら覗いてみてください。

今回はここまでになります。それではまたのご訪問をお待ちしております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?