ライトノベルと「小説家になろう」

 コロナ禍の中、あまりにもやることが無いので「小説家になろう」の作品をひたすら読んでいたわけです。

 ん? もしかしてこれ自分でも書けるんじゃないか……? という小中学生がなろうに参入するのと全く同じ思考を抱き、そしてなろう用の作品をかき上げている最中です。

 普段は公募――ライトノベルの新人賞に投稿を繰り返しているのですが、結果は惨敗。目も当てられません。なら、「なろう」ならどうだ――? なんて考えに至ってしまったのです。

 これは本当に抜けきらない悪い癖なのですが、なろう発の小説は新人賞受賞作品より下、と言う風に見ている自分がいるのです。上とか下とか、感覚的な話で申し訳ないのですが、「格」のようなものがあるとすれば、新人賞受賞作品>なろう発作品、として見てしまうことが多々あります。

 ですが現状、売れている作品はなろう発の作品で、実際問題新人賞受賞作品がヒットを飛ばした、ということはほとんど見なくなってしまいました。そして、「なろう」を始めとしたカクヨムやノベルアップなどのサイトでも新人賞が行われるようになっています。

 去年からスニーカー文庫はカクヨムのサイトで新人賞の応募を始め(タグをつけるだけというなぜか運営と意思疎通ができていない稚拙なものではあったとはいえ)、今年は両立しており、来年には賞のリニューアルが図られるという話もあります。7/1に新人賞関連の情報が出るとかなんとか。楽しみですね。ファミ通文庫は、20回エンタメ大賞を区切りに、カクヨムのみでの募集となりました。HJの新人賞も、今年の応募総数が150前後だったことを見ると、最早新人賞を匿名ベース(投稿者――編集部の関係)で行うことに限界がきているのかもしれません。

 これは、一度無料で見たものに対してどれだけお金を払えるか、という問題が関わっているような気がしてなりません。大人であれば問題は無いでしょうが、メインターゲット層を中高生として考えた場合、やはり難しいものがあるんじゃないかな、なんて思ったりもします。

 なろう発の作品が売れているのかどうか、というデータは具体的には分かりません。そもそも、どのライトノベルが売れているか、というデータはランキングを見ることで推測できる程度です。アニメイトやとらのあなと言った専門店メインで売れているライトノベルは、TSUTAYAのランキングやアマゾンのランキングだけを頼りに正確な情報を導き出すことは恐らく難しいんじゃないかな、と考えられます。

 ですが、ペイラインとしては明らかになろう発――特に大判本が優位であることが事実であると考えられます。そして、それは中高年の読者をメインターゲットにしていないということの裏付けでもあり、今後ライトノベルを取り巻く動向がどうなるのか、目が離せません。

 先ほど言ったどれだけお金を払えるか、の問題に戻りますが、大判本での出版――ある程度お金に余裕がある、メインターゲット層を大人に絞った作品なら、そこそこ売れる余地はあります。ですが、ペイラインが比較的高く設定されがちな文庫本での出版は、今後厳しくなるのかもしれません。ですが、無料で公開されるということは宣伝になるのもまた事実。出版社は難しいところに立たされているのもまた事実なのかな、とは思います。

 少し前にパーティ追放モノが流行った「なろう」では、今はそれの亜種ともいえる「ざまぁ」系が流行っています。端的に説明すると、主人公が関係性の深かった人間から裏切られ、その関係性の深かった人間、いわば悪役ポジションにいる人間が求めていることを主人公が行う、ないしは悪役ポジションにいるキャラクターが苦しんでいるのを見て楽しむ――中世の残虐ショーという例えは正確ではないですが、そういった感じです。「スカッとJAPAN!TV」と全く同じです。

 スカッとJAPANは個人的に嫌いですが、それは「悪役に感情移入できてしまう」といった原因があるからで、なろうの作品では、それすらできないくらい徹底的なヘイト集めが行われます。あるいは、自分の中にいる憎い奴(ここではミヤモトと呼ぶことにします)に読者自身が置き換えることを想定して、1話の段階で彼らとは決別し、主人公は離別した新しい場所で自分を磨く、というような行動をとることになります。

 なろうにはテンプレートがあり、序盤はそれをなぞっていくと人気が出る、というのはだれしも気付いていることではあると思いますが、それは因果関係が逆で、「人気が出ている作品」は「テンプレートをなぞっている」のに過ぎないということに気付かされました。

 なろうで人気を集める方法については、色々な方がそれぞれの創作論として語っているはずなので、その方々の承認欲求を満たすためにここでは割愛します。そもそも自分は「なろう」のプロでもなければ、新人賞で一度でも受賞したことのない、ただのワナビです。

 投稿を始めてから、もう4年目が経とうとしていて、そろそろ限界を感じる年齢でもあります。今年と来年を最後にして、ワナビを卒業しようかという状況に立たされています。

 今年は頑張りたいですね(他人行儀)。

 会えたらスニーカー大賞あるいは電撃大賞でお会いしましょう。そこに僕はいないかもしれませんが、健闘をお祈りします。

 

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