ティラミスヒーローとティラミススター
「ティラミスヒーロー」なるワードに聞き覚えがあるだろうか。2019年春先の開店時におおいに話題となったティラミス専門店の商標である。
先日、飯田橋駅で乗り換えの際に「ティラミススター」を見かけ、思い出した。
なぜ「スター」を見て「ヒーロー」を思い出すか。まずはそこからお話しよう。
ヒーローとスター
「ティラミスヒーロー」はティラミス専門店であり、2012年にシンガポールで生まれたそうだ。これをAと呼ぼう。
The Tiramisu Hero 公式ホームページ
これが海を渡って2019年春に日本に……ではなく、冒頭の話題となったティラミス専門店は関係のない第三者がオープンしたものである。こちらをBとしよう。Bはなんと日本で「ティラミスヒーロー」の商標権をとってしまった。
当然Aは困る。困った末、ヒーローの名を捨て「ティラミススター」としてやっていくことにした。
時をまあまあ同じくして、Bは商標の使用権をAにあげると言った。「勝手に権利をとっておいて、使わせてあげるじゃないよ!」と消費者からは批判の声が上がったが、その後大きな話題はなく時が過ぎた。
ティラミス専門店「HERO’S」騒動めぐり謝罪、ロゴ使用権をシンガポール発のティラミス店に渡すと発表 - ねとらぼ (itmedia.co.jp)
つまりシンガポールのヒーローAが日本でスターとなり、日本には別のヒーローBがいる状態になっていた。以上がヒーローとスターの因縁である。
ヒーロー(B)は
ヒーローBがその後どうなったか、グーグル先生にお聞きしてみたところオープンから2月と3日でクローズしたらしい。決断力はあるようだ。損切りの機会を逸しおろおろしがちな身としては見習いたい。
商標「ティラミスヒーロー」は
やっと知財の話である。「ティラミスヒーロー」の商標を調べてみました。
Bの商標権、消滅していた!
そしてAが「ティラミスヒーロー」の商標権をとっていた!
Bの商標権の消滅は、取消決定と無効審決によるものであった。
異議申立と無効審判
標準文字「ティラミスヒーロー」の商標、ロゴの商標ともに、4条1項7号違反、所謂公序良俗を害する商標であることを理由に、取消決定又は無効審決が確定した。(標準文字が無効審判、ロゴが異議申立&無効審判)
4条1項15条、19条の無効理由は否定された。
ロゴ商標に対する異議申立で、BはA商標の周知性と、自身の不正目的を否定した(上記②、⑤)。不正目的ではない理由は「防衛目的だから」と。
この反論は認められず、取消決定された。
そしてAの出願の審査はこの異議申立と無効審判のため長らく中止され、今年になって晴れて登録となったようだ。おめでとうございます!
ちなみに少し遅れて商願2019-022003のような出願まであった。拒絶されていました。
スターの今後
Aは「ティラミスヒーロー」の商標権を獲得。つまりスターはヒーローに戻ることもできる。
The Tiramisu Hero Japan ヒーロージャパンのドメインも健在。
これはヒーローに戻りますなんて言い出してもおかしくない。
飯田橋てもおかしくない。
(期間限定で出店していただけだそうだが)
とはいえ、もうスターになって3年近い。
「ティラミススター」にも当然業務上の信用が蓄積されている(当然Aは「ティラミススター」の商標権も持っている)。それも大事であろう。
シンガポール発祥で「スター」(星)というのもよい!
大事といえば、とにもかくにも早め早めに「自分が使う」商標は出願しておくことが大事である。
来年はシンガポールでの誕生から10周年! とにもかくにもおめでとうございます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
筆者 @sylacwa
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