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AIはライバル?

AI翻訳やAI通訳は私たちプロの翻訳家通訳家のライバルとなるのか。最近の2つの出来事を通じて、将来の自分の仕事について考えた。

「同時通訳AI、専門家級に」

2021年1月11日の日本経済新聞のこんな記事見出しが目を引いた。

一般的に同時通訳になるには、かなりの時間とお金をかけて専門的な訓練をする必要がある。同時通訳は誰でもがすぐになれるわけではない、高度なスキルを要するのだ。また日本語と英語の言語の変換は、他の言語と比べると難しいと言われてきた。

だから「同時通訳AI」と言われても、あまりピンとこなかった。

しかし新聞記事を読む限り、かなり精度の高い日本語から英語の同時通訳ががAIで即時処理できるという。

果たして5年後に私が同時通訳を仕事としているのか、ふと新聞から目を上げて想像してみた。

AI翻訳が5分で完了

そういえば翻訳の分野でも、最近のAIの進化に舌を巻いた。あるクライアントの「社内AI翻訳機」なるものを試しに使ってみたのだ。

AI翻訳は、「グーグル翻訳」や最近では「DeepL Translator」の評判をよく聞く。しかし無料にもかかわらず個人的には使ってみたことがなかった。そんなものに頼らなくても効率的に品質の高い専門的な翻訳ができるという自負があったからである。

そんな中で今回はクライアントが「こんなのが社内であるんだけど、使えるかどうか試してみてほしい」というご依頼があり、半分は懐疑的に(=どうせ主語述語がバラバラで読める英語ではないだろう)、半分は興味津々で(=AI翻訳のレベルを知りたい!)、クライアントに代わり使ってみることになった。

まず驚いたのは翻訳の処理スピード。私が30時間かかって翻訳する分量をAI翻訳機は10分で完了した。

次に驚いたのが、翻訳の品質。ちゃんと英語の文章になっているのだ!極端な話として、社内の文書で何となく概要を理解する程度あれば、AI翻訳機が吐き出したものをそのまま使ってもよいのではないかと思うくらいの完成度の高さなのである。

5年後の翻訳通訳

しかしAIが翻訳したものを公式の文書として使えるかというと、たたき台にも程遠くとてもまだそのレベルではない。一言で言うと、「薄っぺらい英語」なのである。

AI翻訳やAI通訳は、言葉をそのまま機械が右から左に吐き出しているのである。例えば日本語のあいまいな表現を解釈したり、書き手話し手の意図を汲み文に強弱をつけたり、言葉を補足して伝わりやすくしたりすることがAIにはできないのである(少なくとも今は)。

逆に言えば、右から左に言葉を変換するだけの単純な通訳や翻訳は、5年後には完全にAIに取って代わられると言えるだろう。

ではどうするか。AIができない分野でプロとしての誇りをもってサービスを提供するのだ。具体的にどんな通訳や翻訳の形になるのか、プラスαの付加価値が必要となるのか、まだわからない。でも常にそれを念頭に置きながらこれからもお客様と接してゆきたい。

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