SDGsフォーラムに参加してきた:須藤先生の講演
ビーコンプラザで行われたSDGsフォーラムというものに参加してきた。
主催は公益社団法人日本青年会議所九州地区大分ブロック協議会。
ドクター論文がコーポレート・サステナビリティーをテーマにしたもので持続可能な開発にはもともと興味があったこと、そしてAPUの須藤先生が公演されるということで楽しみにしていた。
SDGsとは、持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals)のことであり、持続可能な開発の実現のために設定された2030年までの17の目標である。国連が主導となり政府、企業、非営利組織など、様々なアクターが現在取り組みを強化している。
一方、パネルディスカッションで九州経済産業局の総務企画部の烏山さんが言っていたように、SDGsに対する理解が一般企業、非営利組織等でまだまだ不十分であり、今回のフォーラムは基本的な理解を促す、という目的があったように思える。
今回は以下で須藤先生の講演内容をまとめておくは概ね以下の通り
1. SDGsが採択された背景
SDGsの持続可能な開発は1987年にブルントラント委員会のOur common future において定義され概念である。簡単に言えば、現代世代だけでなく、将来世代のことも考えて経済発展しましょう、ということが言われている。
これを受けて1992年には「持続可能な開発に関する世界首脳会議(地球サミット)」が開催され、気候変動枠組み条約や生物多様性条約といった重要な環境と開発に関する条約が採択された。
その後、「ミレニアム開発目標」が国連ミレニアムサミットでまとめられた目標であり、2015年までに達成すべき8つの目標が提示された。この目標はとりわけ開発途上国向けの目標として一定の成果を出した一方、先進国の取り組むべき課題や目標等までは十分網羅できていなかった。
これを受けて採択されたのがSDGsであり、いわばミレニアム開発目標の後継としての意味を持つ。
2. SDGsの概要
SDGsは17の目標と169のターゲットによって構成されている。
また、特徴としては発展途上国のみならず、先進国も取り組むべき課題が網羅されており、ミレニアム開発目標よりも普遍的な側面を持つ。また、地球上の誰一人として取り残さない (leave no one behind) ということも誓っており、すべての人を包摂する世界を目指すことを述べている。
須藤先生曰く、重要なのはSDGsが「目指すべき2030年の世界の姿を示すもの」である、という点である。だからこそ、SDGsに取り組む企業や組織が2030年にどうありたいか、世界がどうあってほしいかを描くことが必要と述べていた。
3. 日本政府の取り組みとビジネスへの応用
日本政府はSDGsのうち8つの優先課題を設定している。
① あらゆる人々の活躍の推進
② 健康・長寿の達成
③ 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
④ 持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
⑤ 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
⑥ 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
⑦ 平和と安全・安心社会の実現
⑧ SDGs実施推進の体制と手段
今回のパネルディスカッションに来ていた九州経済産業局の烏山さんも、こうした政府の活動の一環として、SDGsの普及のために尽力されているのだと感じた。
また、SDGsがビジネスチャンスになる、ということを須藤先生はおっしゃっていた。その理由としては、SDGsに掲げられている目標はいわば消費者や人々のニーズを示しているからだという。
また、企業は自分たちのビジネスとSDGsのどのゴールが対応しているのかを確認する必要があるという。通常のビジネスとSDGsとを切り離して考えるのではなく、どのように統合するのか、というのが重要と言える。
4. 個人的な感想
今回の須藤先生の講演内容は概ね自分が講義で伝えている内容を網羅していたし、自分の理解と異なる点はあまりなかった。ミレニアム目標とSDGsのつながりが明確になったのは収穫だった。
また、SDGsに取り組む企業が増えるのは良いことだが、その一方でこの手の活動が国連のグローバルコンパクトに対するBluewashingという批判と同様の事態になりかねないという懸念もある。
国連のグローバル・コンパクトはコフィ―・アナン氏が提唱したイニシアチブで企業等の団体に対して10の原則を順守するように求めたものである。現在多くの企業や組織がこのグローバル・コンパクトに加盟しているものの、加盟しているだけで単なる企業のイメージアップの道具として用いられる傾向にある。国連のロゴが青いことから、こうしたことをBluewashing と呼んで批判されている。
ちなみに、Bluewashing よりもGreenwashing の方が一般的な用語であるので、興味のある人は検索してみるとよい。
おそらく、SDGsにおいては新しい取り組みを促す、というよりは現在のビジネスのやり方の中にSDGsの内容を埋め込んでいく、ということが重要になってくるはずで、その場合、なんとなく今までやっていた活動をそのままSDGsの取り組みとしてしまう企業は増えてくると思う。
要するに、たぶん新しいことに取り組むのではなく、既存の取り組みをSDGsの目標に割り振ることに終始する企業が増えるのではないか、と懸念している。そして、2030年にはそれほど現在と変わり映えのしない世界が待っているのではないのだろうか、というのが個人的な感想である。