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“ナイトメア・アリー(悪夢小路)”観た

雨の品川にて鑑賞。ギレルモ・デル・トロ監督作品。
急にぽっかり時間が出来たので映画を観よう!と思って『ANET』と『ベルファスト』と本作品で悩みつつ、誕生日割り(1200円)が使えた品川で『ナイトメア・アリー』に決定。
過去のギレルモ・デル・トロ作品は『パンズ・ラビリンス』しか観ていない。『パンズ・ラビリンス』が良すぎて暗くて重すぎて、『シェイプ・オブ・ウォーター』は観てなかった。観たあとに物悲しくなるのが嫌で(笑)
基本的にあまり映画を観て物悲しくなりたくない(メンタルにクル)。でもそんなこの監督の世界観(&美術感覚)が好きだ。

パンフから

冒頭から気になるキャストが。(うーん、この人観たことある、誰だっけ。そうだ、『ロスト・チルドレン』に出ていた…トム・ウェイツに似てるんだよなー(あくまでも私感))
ヒロイン役のルーニ・マーラが黒髪のボブスタイルの華奢な女性なのでまさに『ロスト・チルドレン(1996年/ジャン・ピエール・ジュネ監督)』の主人公の少女とのシーンを思い出させた、その人はロン・パールマン。

『ロスト・チルドレン』。衣装がゴルチエ、音楽はバダラメンティ。とにかく美術が素晴らしい。Blu-rayで見返したいなぁ

主人公が迷い込んで働くことになるカーニバルの団長はウィレム・デフォー。デフォー好き。どんな役でもリアルに演じきる。団長は物語上とても重要な人物。

物語が進んでいき、ある老婦人役の女優さんがいい演技だなぁ〜この人すごいな、と思ったらなんとメアリー・スティンバージェンだった。近年の作品を観ていなかった。私はこの人が大好きなのだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』とかが有名かもしれないけど、私が好きになったキッカケの映画は『ロマンチック・コメディ』という映画。

話が逸れますが私は小学校高学年頃ゴールディ・ホーン主演の『ファール・プレイ』という映画をテレビで観たのがきっかけで、ダドリー・ムーア(1935-2002)のファンになったのだ。ゴールディの声は小原乃梨子さんだった。のび太の声とは全く違う、チャーミングで元気なゴールディそのものの吹き替えだったなぁ。共演はチェビー・チェイス。ヒッチコック映画を下敷きにしたコメディ映画で、ダドリー・ムーアはチョイ役なんだけど、その演技が面白くて。ちなみにムーアの声は広川太一郎が吹き替えててホントに可笑しかった。吹き替え版でまた観たい映画ナンバーワン。

ちなみに私の好きなダドリー・ムーア主演のナンバーワン映画は『ミスター・アーサー』。共演はライザ・ミネリ。映画を知らなくても主題歌、クリストファー・クロスの「ニューヨークシティ・セレナーデ」は知ってる人多いはず。この映画の音楽はバート・バカラックで、輝けるキラキラのニューヨークを舞台にしたウェイトレスと富豪の恋を描いた正にロマンチック・コメディなんですけど、非常に良質な娯楽映画です。執事役のジョン・ギールグッドも最高です。って、違うよ、『ロマンチック・コメディ』の話がしたかったの。この映画は『ミスター・アーサー』の二年後に作られた映画で、スレ違い恋愛モノ。パッケージ写真がわかりやすいですね。

身長差がすごい。ダドリー・ムーアはコメディアン出身で作曲もしてピアノ演奏も得意という才人。4度の結婚をした。

元々はブロードウェイの舞台劇で、会話とシチュエーションが全てみたいな話。でもそれが良くできてて、そしてこの作品で知ったメアリー・スティンバージェンがチャーミングで、すっかり好きになった。可愛いです。話自体は今の世の中には合わない話なんでしょーけども。何年も何年もかけてすれ違うけど結局この二人は結ばれるんです、映画のラストシーンにおいては。その先は知らんけど。よい映画です。

監督名以外の予備知識なく観に行った『ナイトメア・アリー』。思いがけず好きな俳優さんと出会えて、嬉しかった。ちなみに去年観て心に残った『ノマドランド』にイイ役で出ていたデビッド・ストラザーンがここでもイイ役で登場。演技が上手くて『ノマドランド』の彼だとはすぐに分からなかった。主役のブラッドリー・クーパーももうひとりのヒロイン役のケイト・ブランシェットももちろん素晴らしかったのだけれど、ワタシ的には好きな俳優が脇をビッシと固めていてそれがうれしい映画でもありました。

冒頭『ロスト・チルドレン』の話をしたけれど、この『ナイトメア・アリー』の美術も素晴らしく、ゴージャスでマニアックでした。アカデミー賞の美術賞にノミネート。細部にまでこだわりを感じた小道具や衣装はもう一度映画をDVDで見返したい、と思わされた。

パンフには寄稿イラストが2点。
ひとつは漫画家の坂本眞一。
ひとつがイラストレーターで絵本作家のヒグチユウコ。
ヒグチユウコさんが印象に残るシーンをとても素敵に切り取って1枚の絵にしていて、これもうれしかったす。

これのポスターとか欲しい

映画館の外を出ると外は4月とは思えぬとても冷たい雨だった。
映画の中でも雨、そして雪のシーンは多く、観終わった後のこのギレルモ節とも言える「どうしようもない、人間の産み出す物悲しさ、重さ」の余韻にひたるにはいい天気だった。ファンタジーとかSFの監督、などとジャンルに括られずに撮れる、器と知識の広い、そして美意識のすごい才人なのだと再認識した。よい映画でした。

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