いあらよみかえす
楳図かずお先生が10/28死去。発表が11/5。振り返りたくても忙しくて振り返れなかったので今ここに記す。
楳図かずおと言えば最初に知ったのは「まことちゃん」なのではありますが、同時にイトコから「恐怖」も読まされたためソッチのインパクトが強すぎた。
「恐怖」はストーリーは好きなんだけど、表紙が怖すぎて買えなかった。未だに買えないけど、さすがにもう大丈夫かな。あの表紙が本当に怖い。禍々しい感じがして家に置きたくなかった。それくらい、あの絵はスゴイのだと思う。思い出しても怖い(もういいって)。
その後「十四歳」とか「私は慎吾」「おろち」「笑い仮面」等を読むのですがなぜかあの有名な「漂流教室」はちゃんと読んでいないので、今後の宿題であります。
個人的に好きなのは「イアラ」であります。
奈良時代から始まり近未来?で終わるのですが、300ページ弱の中に色々とみっしりと楳図イズムが詰まっています。歴史ものであり、SFものであり、オカルトものであり、人間ドラマであり、一途な愛であり、人間が生み出すものは理不尽であり、最後は宇宙なのです。
愛した女が死ぬ前に残した「イアラー!」という謎の言葉の意味を求めて男がさ迷うというかなぜか不老不死になっちゃって何度も転生する運命の女の生まれ変わりと出会ったり出会わなかったり、出会ったと思ったら「エエッ」というシチュエーションだったり。というお話なのですがとにかく説明が難しいなこのマンガは(笑)
イアラ以外にも短編が収録されておりまして、イアラもいいけど、この短編を読むのが好きなのです。楳図先生の短編はとっても面白い。綺麗な女の人を描くのがとても上手なのですが、美貌であるがゆえに性格悪かったり、嫉妬深い夫に監禁されたり、老化を気にしたり、色々と散々な目に遭う美人を描くのが上手い。映画的なカット割りで、セリフの無いコマも多く、短いページ数なのに短編映画みたいな読後感がある。ものすごいシナリオライターでもあるなぁ、と思わされる。貸本時代に鍛えられたのでしょうかなぁ…
さてこの楳図先生ですが、私がよく出させて頂いている吉祥寺のライブハウスの前の道路が散歩コースになっていたようで、過去に3度ほど、ライブの前に遭遇したことがありました。ちょうど私の入りの時間が散歩の時間と合っていたみたい。
1番最初はかなり至近距離ですれ違ったので(うわーっどうしよう!握手?!イヤイヤイヤ)とかドキドキしている間にすれ違ってしまったのだけれど、なんとなく2度目は気付いてますよ〜な空気を出しつつすれ違い、3度目は反対側の歩道だったので少し遠かった。結局声はかけられなかった。でも生ける天才漫画家とすれ違った時は、毎回テンションが上がったというか胸が高鳴った。
ライブハウスの人に「さっきそこで楳図かずおに!」と私が告げると「赤楳図でしたか、青楳図でしたか。青楳図だったらかなりレアですよ」と返ってきた。
青楳図(赤白のボーダーがトレードマークであり、上着も赤のことが多いのだが、稀に青緑みたいなダウンを羽織っていた。それが青楳図。)は一度しか、観なかった。
ハモニカ横丁で飲んでいたら、自らの曲『新宿烏』のプロモーション撮影で楳図先生が流しのスタイルで現れ、他2人のパフォーマーと一緒に至近距離で歌と撮影が始まり、死ぬほど驚いたこともあった。あの時私が思ったことは(ああ、ここに「おろち」を持ってきていたらサインしてもらうのに!!)だった。
そんなわけで、接近遭遇の機会が人より多かったのかもしれない。縁があった、のかもしれない。
オリジナリティの追求を果敢にした、孤高の天才。のイメージ。あっち側から地球を観ていたのだろうかなぁ。
数々の恐怖と感動をありがとう御座いました。
「十四歳」で描かれた人工肉はついに現実のものに。
チキン・ジョージを私は待とう。
合掌。