
『ベルリン・天使の詩』
土曜日、午前十時の映画祭にて『ベルリン・天使の詩』の上映があると知り、観に行った。
TOHOシネマズ新宿…劇場に選択肢があるならば正直選ばないだろう。…金曜日の夜を超えた歌舞伎町、いわゆるトー横である。ゴジラを目指して足早に向かう。
散乱するゴミ、啄む鴉、酔っ払い、道路に落ちた煙草からはまだ微かに煙が立ち昇っている。…念のため踏んで消火しておく。…嗚呼、人間の住む世界はこんなに汚いんだなぁ。とため息が出る。
『ベルリン・天使の詩』鑑賞

鑑賞後の外の世界は見違えるほどすっかり変わっていた。
水を撒かれたアスファルトは太陽の光を浴びてきらきら輝いて見えた。
以下感想文を書き散らす。
まさに人間讃歌。感動した。
色彩や体温を感じられる人間の世界が、なんて美しくて尊いものか。空は青くて、流れる血は赤い。コーヒーは温かい。
…ふと思い出したのだが、過去に私は世界がモノクロのコマ撮り映画のように見えていた時期があった。
大学生の頃だが、毎日が退屈でもの悲しかった。(おそらく鬱の症状だろう) だいたいの時間をベッドの上で過ごし、天井と壁を交互に見ては人生最終日のことを考えていた。黒いカーテンを閉めて光が入らないようにした。外に出ると自分が透明で誰にも見えていないような心地だった。
そんな中、コンビニの早朝バイトは楽しかった。真っ暗な時間に出勤して、雑誌コーナー越しの窓から見える朝焼けだけ、なぜか綺麗に色付いて見えた。
今思えば、あの時は人間として生まれていなくて天使だったのかもしれない。身体は透明で、すこし浮いているような感覚を未だに覚えている。そうだったらいいな。
「子供が子供だった頃、いつも不思議だった。なぜ僕は僕で君でない?なぜ僕はここにいて、そこにいない?」
「時の始まりはいつ?宇宙の果てはどこ?」
「見るもの聞くもの嗅ぐものは、この世の前の世の幻?」
「悪があるって本当?悪い人がいるってほんと?」
「いったいどんなだった?僕が僕になる前は」
「僕が僕でなくなった後、僕はいったい何になる?」
考えることもうれしいことも、子どもの頃と何も変わっちゃいない。ただ、色々なことを経験し、知っただけだと思う。
たまに忘れちゃうけど、私は私の歴史の中に存在していて、無邪気な子供時代と変わらないあの頃の感性にいつだって戻ることができる。
もういちど、人間初日をする気持ちで、まっさらにまた生きてみよう。
生きることって素晴らしい。人間って愛おしい。
今日もいい日だ
つづく