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サッカーコラム:ビラス・ボアス監督とマルセイユにみる、監督とクラブのあるべき関係性

突然の辞任表明と原因

現地時間の今月2日、マルセイユ(フランス)のアンドレ・ビラス・ボアス監督がランス戦の前日会見で突如辞任を表明。その後、この表明に激怒したクラブ側から解任が発表された。

そもそもの原因は、クラブ側が監督の意見を無視して選手を獲得したことにある。

より詳しく書くと、今冬、マルセイユは中村俊輔や水野晃樹もプレーしたセルティック(スコットランド)からDFオリビエ・エンチャムを期限付き移籍で獲得。

しかし、ビラス・ボアス監督はこの選手の獲得についてクラブから問われた際に「私はノーと言った」
さらに「候補者リストにいたプレーヤーではない」と発言している。

つまり、クラブ側がオリビエ・エンチャムを獲得しようとし、ビラス・ボアス監督に提案。

それに対して監督は必要ないと回答。それでもクラブは監督の意見を無視して独断で獲得交渉を進め、獲得したということになる。

フロントと監督の、あるべき関係性

ビラス・ボアス監督は強行的にマルセイユと袂を分つという選択をしたため話題になったが、このようにクラブが独断で選手を獲得することは時折みられる。

クラブの会長の権限が強すぎる場合、逆に言えば監督の権限が小さい場合に起こりがちだ。

もっと言うと、監督には選手獲得の権限が全くなく、クラブが揃えた選手を監督がやりくりするという場合さえあるのだ。

けれど長い目で見ると結局、こういったパターンはほぼ上手くいかない。

なぜなら誰を起用するかを決める監督が、その選手を評価していないのだから。

選手も請われて来たはずがなかなか起用してもらえず、監督側としても起用法に苦慮することになってしまう。

チーム全体の編成をクラブ側のみが行った場合、監督はさらに難しい対応を迫られることになる。

今いる選手を上手く使う、というのは確かに監督の資質の1つではあるが、希望するタイプの選手が少ないほどに自分が志向しているサッカーをすることは難しくなり、だましだまし戦っていく必要に迫られてしまう。

本来、クラブと監督の関係は対等でなくてはいけない。
もちろん監督を決め、解任などを決めるのはクラブ側ではあるけれど、それぞれの仕事は不可侵の領域であるべきだ。

これは監督だけではなく、長年に渡って強いクラブというものはオーナーもしくは社長、スポンサー、コーチ、スタッフ、もちろん選手も含め、皆が自らの範囲の仕事に集中しそこでベストを尽くすことができる環境になっている。

マルセイユは突然辞任を表明したビラス・ボアス監督に激怒していたが、先にこの不可侵の領域を犯したのはクラブ側なのだ。

今回の出来事の数日前にはサポーターが練習場を襲撃するという事態も起こったが、これと合わせてマルセイユという名門クラブを取り巻く環境が現在どれほど健全でないかが分かる、残念な出来事となってしまった。

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