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第9節 アビスパ福岡vsセレッソ大阪 レビュー
中2日、さらに早い時間帯での退場もあり死闘となったが、最終的にはアビスパ福岡の力を示すゲームとなった。
スタメン・ベンチメンバー
スタメンはGK村上、DFは右からサロモンソン、奈良、グローリ、志知。
MFには吉岡、田邉、前、北島、FWは金森とB・メンデス。
ベンチにはGK杉山、DF湯澤と宮、MFカウエと石津、FWの渡とフアンマ。
前節から中2日ということもあり、コンディションの良い選手を積極的に起用したことでスタメン8人を入れ替えて挑むこととなった。
前半戦
お互いに積極的に試合へ入り、最初にチャンスを作ったのはセレッソだった。
開始早々の4分、豊川のシュートがネットを揺らしたものの、その前の西川へのパスがはっきりとオフサイド。
オフサイドディレイがあるとはいえ、この場面のように明確なものは以前のように副審がすぐにフラッグを上げてもいいのではないだろうか。
6分にはアビスパもチャンスを創出。金森のパスを受けた吉岡が中に切れ込んでシュート。面白いタイミングで打ったが、GKキム・ジンヒョンのセーブにあってしまった。
序盤はほぼ互角に渡り合っていたが、突如均衡が崩れてしまう。11分、左サイドでの攻防で志知がスライディングタックル。ボールには触っていたものの、足裏が奥埜の膝に強く接触してしまいVARの結果レッドカードの判定。
そこからの80分近くを10人で戦わねばならなくなり、ここからはっきりと攻めるセレッソ、守るアビスパという構図となった。
アビスパはメンデスを1トップに置いた4-4-1とし、まずは守備を優先しブロックを敷いてカウンターを狙う。
長谷部監督は17分に北島に代えて湯澤を投入。全員が適正ポジションでプレーできるよう、すぐに手当てを行った。
ボールは完全にセレッソが支配したが、アビスパが中央を固めていたことに加え、セレッソは足元へのパスが多く横幅を使ってサイドからクロスを上げるという以外に有効な攻め手を欠いていたこと、そして飲水タイムでの長谷部監督の具体的な指示でより意思統一が図れたこともあり0-0のまま前半を終えた。
後半戦
後半に入っても構図は変わらず。
アビスパの組織的な守備は非常に良かったが、中でも奈良とグローリというCB2人とキャプテン・前の頑張りは目を見張るものがあった。
我慢を続け、ついにチャンスが訪れたのは66分。前のボール奪取からカウンターに入り、金森が吉岡に繋ぐ。裏に走ったメンデスがボールを受けて抜け出すと、右サイドからゴール前を横断するクロスを送る。
ファーサイドには金森が走り込んでいたが、懸命に戻った奥埜がクリアし得点ならず。
しかし直後の67分、上記のプレーで得たCKは1度はヘディングでクリアされてしまったが、ファーサイドで拾った吉岡がトラップから左足一閃。巻いたボールはポストをかすめてゴールネットを揺らし、数少ないチャンスをいかしたアビスパが先制。
吉岡はこれがJ1初ゴールとなった。
ただ皮肉なことに、このゴールによってようやくセレッソの選手に思い切りの良さが出始める。
それまでは積極的にシュートを放つシーンは見られなかったが69分、途中出場の中島がバイタルエリアから左足を振り抜く。
体重の乗ったシュートは巻いてGK村上の手の届かないコースを通り、ネットを揺らす。
中島もJ1初ゴールを記録し、あっという間に1-1に。
アビスパらは石津、フアンマを投入し再びギアを上げようとしたものの流れは勢いに乗ったセレッソ。サッカーにおいて勢いとは大事な要素で、アビスパの選手の疲労もあったとはいえ足元へのパスばかりだったものがスペースを使えるようになっていく。
すると76分、今度も途中出場の選手が結果を残す。
昨年、アビスパ福岡vsツエーゲン金沢のレビューを書いた際に敵ながら褒めちぎったFW加藤陸次樹だ。
左サイドから丸橋がクロスを上げる瞬間にGKとCBの間のスペースにスプリントすると、来たボールに右足を合わせる。決して簡単なシュートではなかったが巧みに枠内へ飛ばし、セレッソが逆転に成功した。
さらに78分にも、奥埜が強烈なミドルシュートシュートを放つとクロスバーを直撃。これが入っていれば、試合は決まっていた可能性が高かった。
アビスパ目線で言うと、1人少ない状況で先制しながら逆転された。
体力的にももちろん精神的にダメージが大きく、過去のアビスパならばこのまま力尽きてしまっていた公算が大きい。
実際に、逆転を許した直後はややバランスが崩れていた。
しかし長谷部監督が率いる最高に諦めの悪いチームは、80分に渡、カウエを投入してブレずに同点ゴールを目指していく。
特にFWが本職の渡を右SHの位置に入れたことは明確なメッセージと言えた。
88分、長谷部監督の采配がズバリ的中する。
ボールを奪ったカウエが即座に石津に縦パスを通すと、石津は溜めて右サイドを攻め上がったサロモンソンにパス。
サロモンソンはすぐにクロスを上げ、その先にいたのはフアンマ。セレッソの3人の選手に挟まれ、ゴールまでもやや距離があったが身体を伸ばしてヘッド。これにはGKキム・ジンヒョンも届かず、2-2と同点に追い付いた。
その後8分ものアディショナルタイムがあり、セレッソが猛攻を仕掛ける。アディショナルタイム5分、松田陸のクロスに合わせたのはこの試合見事な活躍を見せていた奥埜。
フリーで合わせ、ボールはゴールへ一直線に向かう。しかし至近距離でもGK村上が反応。左手を伸ばし、ボールをゴールの上に掻き出してみせた。土壇場での神セーブで、チームを救った。
最後は丸橋のミドルシュートを村上ががっちりセーブし、試合終了。2-2のドローではあったが、直後にGK村上が挙げた咆哮とガッツポーズがこの試合がただ1ポイントずつを分け合ったものではないことを示している。
採点(5.5が及第点)、寸評
GK村上昌謙 6.5 失点の場面は相手のシュートを褒めるべき。5分のキックミスはいただけないが、後半アディショナルタイムの神セーブでチームを救った。
DFエミル・サロモンソン 7.0 点と点を繋ぐクロスで同点ゴールをアシスト。試合後には足を引き摺っていたほどに、上下動を繰り返した。
DF奈良竜樹 6.0 2失点目のシーンでは加藤に裏を取られたが、それ以外は見事。コンディションも上がってきたか。
DFドウグラス・グローリ 7.0 文句なしにCBの軸。空中戦はもちろんそれ以外でも、何度となくセレッソ攻撃陣の前に立ちはだかった。
DF志知孝明 4.0 試合への入り方は問題なかったが、14分にリスクを負う必要のない場面で危険なタックルをしてしまい1発退場に。今回の悔しさを次への糧にして欲しい。
MF吉岡雅和 6.5 6分に惜しいシュートを放ちキレの良さを示すと、67分には先制点となるJ1初ゴールを決めた。運動量が豊富で、守備面でもポジショニングが良くなってきている。
MF田邉草民 6.0 難しい展開となったが、経験豊富な選手らしく慌てることなく対応。中盤ならばどこでもこなす彼のユーティリティ性はチームの強み。
MF前寛之 7.0 MOM。連戦の中でもフル出場を続けており、疲労はあるだろうがこの試合でも的確なポジショニングでスペースを消し、ボール奪取を繰り返す。実に魂のこもったプレーだった。
MF北島祐二 5.5 コンディションの良さを感じさせたが、左SBに湯澤を投入するために17分に交代となってしまう。もちろん、本人に責任はない。
FW金森健志 5.5 試合開始時はFWとして、10人になってからは左SHとして懸命に走り回った。惜しい場面には絡んだが、難しい状況もあり攻撃面での違いは見せられず。
FWブルーノ・メンデス 6.0 10人になり1トップになってから、献身性がより一層発揮された。守備に奔走させられてもフラストレーションを溜めることなく、66分には決定機を演出した。
DF湯澤聖人 6.5 17分に、北島と交代で左SBに投入される。流血にも負けず、豊富な運動量とタイトな守備で左サイドに鍵をかけ続けた。
MF石津大介 6.0 73分から、金森に代わって途中出場。同点ゴールの場面で落ち着いたキープ、パスでサロモンソンのアシストをアシスト。しっかりと役割を果たした。
FWフアンマ・デルガド 7.0 73分から、メンデスに変わって途中出場。1対3の状況でも身体を伸ばして、ネットを揺らした。その他にもキープ力の高さを見せる。
MFカウエ 採点なし 81分から、吉岡に代わって途中出場。パスミスもあったが、コンタクトの強さでボールを奪取しすぐに縦パスを入れ、それが同点ゴールに繋がった。
FW渡大生 採点なし 81分から、田邉に代わって途中出場。守備時は右SHの位置を務めたが、基本的には中央に入ってプレー。1人少ない中でリスクは大きかったが、彼が高い位置でプレーすることでサロモンソンが上がるスペースが出来、その狙いは88分に結実した。