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新加入選手紹介:宮大樹 貴重な武器を持つ男
2020シーズン、昇格を果たしたアビスパ福岡のストロングポイントであったCB。
その中でも一番の軸だったのは上島拓巳だ。
その上島は期限付き移籍期間の満了のため所属元の柏レイソルへと復帰となってしまった。
J1を舞台に戦う2021シーズンに向け、カルロス・グディエレス、ドウグラス・グローリという外国人コンビとの契約更新には成功したものの、彼らの他には経験の少ない三國ケネディエブス(未だ契約更新の発表なし)とルーキーの森山公弥(U-18から昇格)のみであることを考えると補強が急務となっていた。
そこへ、サガン鳥栖から期待の新戦力が加入する。
貴重な、高身長で左利きのCBである。
宮大樹。
大きな期待を背負ってプロになったものの、そこからは決して順調とは言えずもがいている感は否めない。
しかし、もがくあがくは一皮剥けるために非常に大切な要素でもある。
左利きのCBがプロになるまで
大阪府豊中市で産まれた宮は、大阪セントラルFCジュニアでサッカーを始めた。
大阪セントラルFCは、アビスパでもプレーした松田力(もちろん松田陸も:どちらもセレッソ大阪)、ジュビロ磐田の大森晃太郎などを輩出している強豪チームである。
中学生になってもそのまま大阪セントラルFCジュニアユースでプレーを続け、私立の清明学院高校へ進学。
同校の「攻撃は前に速く、守備は前に行かせない」という哲学のもと成長を続けた。
その後は滋賀県にあるびわこ成蹊スポーツ大学へと進学。ここで、大きな飛躍を遂げることとなる。
ちなみに、先程挙げた松田兄弟もびわこ成蹊スポーツ大学の卒業生であり、他には山本義道(ジュビロ磐田)、船津徹也(ザスパクサツ群馬)なども同校からJリーグの舞台へと巣立っている。
そんな競争の激しい場で、宮は1年生の頃からトップチームで試合に出場。
チームはこの年のインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)への出場を果たすと、国士舘大学、福岡大学に勝利しベスト4進出を果たした。
宮は1年生にしてそのチームにおいてレギュラーのCBとして戦っている。
このうち福岡大学戦は大武峻(ジュビロ磐田)、木本恭生(名古屋グランパス)、川上竜(SC相模原)らを擁し格上と思われていた相手を向こうにまわし、延長戦を含めて1-1、PK戦では宮も決めて6-5で制すという激闘であった。
この試合は宮にとって大学時代で最も印象深いもので、試合後には涙が出たそうだ。
その後も着実に成長を続け評価を上げると、3年時の2016年にはヴィッセル神戸の特別指定選手に。(この当時は特別指定選手=内定ではない。)
翌、2017年にはついにヴィッセル神戸から正式なオファーが届き、5月23日に2018シーズンからのヴィッセル神戸への加入内定が発表された。
さらにこの年、宮はびわこ成蹊スポーツ大学を関西大学1部リーグ初優勝という快挙へと導くと共に、圧巻のパフォーマンスをみせて年間最優秀選手賞を受賞した。
勢いは留まることを知らず、ユニバーシアードサッカー日本代表や全日本大学選抜のメンバーにも選出される。ユニバーシアードでは背番号5を背負い、4試合に出場。チームの優勝へ大きく貢献している。
神戸、水戸、鳥栖、そして福岡
2018年、ヴィッセル神戸へ正式加入すると、4月4日、ルヴァンカップ第3節の湘南ベルマーレ戦でプロ初出場を果たす。
この年はJ1で5試合に出場するも、勝利は1試合のみとなかなか結果が伴わなかった。
翌シーズンは開幕前の怪我のために出遅れてしまうが、3月3日ルヴァンカップ第2節のセレッソ大阪戦でシーズン初出場。
リーグ戦でも第10節から11試合連続でスタメン出場し完全にレギュラーの座を射止めたかと思ったが、そこからベンチからも外れる試合が続いた。
そのまま8月6日、J2の水戸ホーリーホックへの期限付き移籍が発表。シーズン途中での加入となるもスタメンに定着し、12試合に出場し2得点と一定の結果を収めた。そしてここで、水戸を率いていた長谷部監督と出会ったのである。
2020シーズン、宮は再び完全移籍しサガン鳥栖でプレーすることとなった。
金明輝監督が宮を高く評価しており、契約交渉時には監督自ら電話を入れるほど。この熱意に動かされての移籍だった。
その期待通りに開幕戦のアウェー川崎戦ではスタメン出場し、後に優勝チームとなる相手にMOM級の活躍をみせ、0-0とチームも無失点。
また、昨年は私生活にも大きな変化が訪れた1年だった。
5月6日に入籍し、9月27日には第一子となる長男が誕生。
背負うものが増え、ついに花開くかと思われた。
しかし、チームの結果が伴わなかったこともあり、また怪我もあって14試合の出場とまずまずの数字に終わってしまう。
そんな宮が選んだ新天地こそ、昇格したばかりで自らを良く知る長谷部監督が率いるアビスパ福岡だった。
宮大樹の現状と期待
正直なことを言うと、大学生の頃に得た極めて高い評価を考えるとプロとしてのここまでは難しい状況にある。
とはいえ、年々少しずつ安定感は増しているし、守るものが出来たことで責任感も増すはず。
宮には是非、プロ入りが決まった際の会見で語ったことを思い出してほしい。「将来は日の丸を背負っていけるような選手になりたいし、できれば海外でプレーしたい。」という目標を諦めるにはあまりにも早すぎる。
CBには遅咲きの選手も多い。守備の構築に長けた長谷部監督のもとでシーズンを通してプレーすることで大きく成長してくれることを期待している。
アビスパは環境としても良いはずだ。水戸で共にプレーした村上、志知、前など良く知る仲も多い。
それに、似た状況から大きく育った選手を我々アビスパサポーターは目の当たりにしたばかりでもある。
安定感に欠け柏レイソルで出場機会を失っていた上島拓巳が、アビスパで完全にスタメンに定着し、絶対的な選手となったことを。
彼のようにアグレッシブにタフなシーズンを戦い抜くことで、宮大樹も大きな自信を身に着けられるはず。シーズン終盤、一皮も二皮も剥けアビスパの最終ラインの軸としてプレーする姿が観られることに期待したい。
空中戦に滅法強く、左足でのフィードも正確。
素質は間違いなく素晴らしい。
「共にJ1で暴れましょう」その言葉を信じている。